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『東京ダモイ』鏑木蓮 第52回江戸川乱歩賞受賞作
実は私は推理小説をこれまであまり読んではおらず、
江戸川乱歩賞作品も読んだのは『カタコンベ』や『天使のナイフ』『三年坂 火の夢』くらいで、
しかも『カタコンベ』『三年~』は途中挫折して完読していない。
本書は他の書評を見るとあまり芳しくない。
『カタコンベ』や『三年~』がおおむね好評なのを鑑みると、
私の推理小説の読み方が少しおかしいのかもしれないが、
私は本書がとても面白かった。
小説というのは波長が合わないとまったく気味ないものだが、
蓼食う虫も好き好きということか。
物語はシベリア抑留時に起きた殺人事件。
現代まで生き残ったかっての日本兵たちと雑誌記者、刑事たちが
忌まわしかったシベリア時代を回顧し、そこで起こった事件を紐解いていく。
★★★★☆
ダモイというのはロシア語で『帰還』のことらしい。
つまりこの作品は、シベリア抑留の日本人の望郷が主題なのである。
零下50度などという、
現代の日本でぬくぬくと暮らす我々には想像もつかぬ過酷な環境の中で、
かつての私たちの先人達は、如何なる気持ちでで日本を想ったのだろうか。
現代の日本人達は、幸せといって、これほどの幸せなことはあるまい。