『となり町戦争』

2008-08-10 13:47:11 | 文学





『となり町戦争』三崎 亜記  



三崎亜記は郷土の作家であり、先日の直木賞でも候補に上がっていたので興味を持って読んだ。

物語は、何故か隣の町と戦争状態になったある町と、
そこの住民であり戦争に不信感を持ちながらもある女性と偽装結婚し、
隣町に移住して諜報活動をする事になった主人公の
戦争終結までの顛末とほろ苦い恋愛感情を描いている。


まず思ったのは、文章の軽さ、
、、これは三崎だけでなく近頃の日本文学の傾向でもあるような気がするが、、
であり、着眼点の面白さはあるものの、
何故戦争に至ったのか?死者が出ているがどのような状況だったのか?何故戦争は終わったのか?など、
隣町との戦争の背景や実情が全く説明されておらず、現実味を伴なわないことだ。


現実味を伴なわないのは、
新聞テレビで知らされる以上の現実味を伴なわないけれども、
実際には世界の各地で戦争(争い)が起こっており、人が死んでいるのだぞ。
という三崎流の警鐘の表現でもあるのだろうが、どうも安っぽい平和主義の感は拭えなかった。

人物の性格付けや生活感、生活状況、嗜好、癖などの描写もありきたりで浅く、
私の心臓にズッキリと来るようなものは何もなかった。


しかし、直木賞を獲った井上荒野(「ベーコン」しか読んでいないが)などの作風にもいえるのだが、
このような、良く言えば軽やかさというのか、生ぬるさが、
昨今の芥川や直木賞を獲るための必須になっているのかも知れない。

芥川を獲った楊逸の受賞作「時が滲む朝」は未読だが、
前回の候補作「ワンちゃん」を読んだ限りにおいても、そう思う。


だとすれば、、
芥川、直木賞は、私にとって、余り重要な賞ではなくなったのかも知れない。




★★★☆☆








最新の画像もっと見る