『時が滲む朝』楊 逸
芥川賞が何を目指しているのか知らないが、
純文学の新人に与えられる賞だと思っていた私は、
どうやら思い違いをしていたらしい。
楊逸は、前回同賞候補になった「ワンちゃん」も読んだが、
純文学もなにも日本語の適正な用法
(無論そんなものは無いのだが、読者が出来るだけその情景や心境を疑似体験すべく読み取れるような表現という意味で)
においていかにも厳しい。
も . . . 本文を読む
『小さな悪魔の背中の窪み』―血液型・病気・恋愛の真実
竹内 久美子 (著)
朝のワイドショーに『情報プレゼンター とくダネ!』というのがあり、
この中で司会の小倉智昭が血液型占いに移る前、
『CMの後は、血液型選手権です。』と、
何だかムッとして怒ってるような顔で言う。
これを観ていて、
血液型に関する性格や恋愛、行動傾向論に対する私の感覚は
小倉智昭と似ているのではないかと . . . 本文を読む
『ボトムズ』
ジョー・R. ランズデール (著), 大槻 寿美枝 (翻訳)
2001年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞受賞
レディ・デイことビリー・ホリデイは1939年から『奇妙な果実』という歌を歌い始める。
その頃はまだアメリカ南部では黒人をリンチにかけて首を縛り、
木に吊るし火をつけて焼き殺すという蛮行がしばしば見られた。
「奇妙な果実」とは、木にぶら下がる黒人の死 . . . 本文を読む
『悪い噂』 玄月 (著)
小説の題材として、暴力とセックスと在日韓国人を描けば、
それだけで相当興味を引くものであるが、
著者が「蔭の棲みか」で芥川賞を獲った在日韓国人作家「玄月」で、
タイトルが「悪い噂」とくれば面白くないはずが無い。
舞台は大阪(たぶん生野)朝鮮人集落、
小学生くらいの背丈しかなく脚が蛙のように曲がった、
しかし、異常に発達した上半身を持つ、『骨 . . . 本文を読む
『パイの物語』
ヤン マーテル (著), 唐沢 則幸 (翻訳)
2002年度ブッカー賞受賞作。
非常に奇抜な着想と巧妙な構成の本だった。
第一部は、少年の生い立ちと宗教とのかかわり。
第二部は、カナダに移住する為にツシマ丸に乗り込んだ少年の一家が
遭難しある恐ろしい生き物と奇妙な同居を続ける記述。
第三部は、インタビュー。
ネタバレになるので内容にはこれ以上触れないが . . . 本文を読む