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『カリフォルニア・ガール』
T・ジェファーソン・パーカー (著), 七搦 理美子 (翻訳)
MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞2005年度最優秀長編賞受賞作
なんつーか、、物凄く濃くてミッチリした濃縮果汁100%って感じだった。
登場人物の一人ひとりに生い立ちがあり性格があり、思想、性癖、職業、感情、生活がある。
そのそれぞれ人々とある殺人事件との複雑な係わりを、丹念にしかし饒舌過ぎずに、
50年にも亘る彼らの歴史と言ってよいと思う物語を、まるで実話であるかのように緻密に描く。
しかし、この物語はT・ジェファーソン・パーカーという
たった一人の作家の頭の中だけで想像し構成された完全な小説なのである。
パーカーの頭の中はどのようになっているのだろうか。
この本を読むと、近頃の日本の小説がスカスカの安普請の建物のように思えて
その行間が軽く空虚で弱くてぬるい。
『カリフォルニア・ガール』を読む時は、ペンと紙を携えなければならない。
そしてその40名ほどの登場人物とそれぞれの関係、時系列を細かくメモしながら、
パーカーの水先案内に随って物語の道のりを
それぞれの人々の心情に感情移入しながらまるで彼らと歴史を歩むように少しずつ進んで行く。
パーカーに手抜きはない。
登場人物たちの50年の歴史は全く彼らがその時代に在ったように
その時代の音楽があり戦争があり宗教があり風景がある。
MWAは2002年に『サイレント・ジョー』でパーカーに最優秀賞を出している。
であるにもかかわらず本作が再び受賞しているという事は、
MWAはこの本に最優秀賞を出さざるを得なかったのだ。
世界にはすごい作家が居るものである。
★★★★★