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『ルソンの谷間』 江崎誠致 第37回直木賞受賞
1957年の受賞であるから、終戦から10年ほどの、
まだ戦争の生々しさが人々の脳裏にこびり付き、復興の槌音があちこちから聞こえ始め、
ようやく日本にも光の柱が真新しい建物の間から見え始めた頃の作品であろう。
物語はあの大戦の終戦間際、
400名もの大部隊がフィリピンの灼熱とスコール、飢餓、マラリア、銃傷などの最悪の戦場の中で次々と斃れ、
最後には68名の生存者までになっていく過程を、
それはもう凄まじい戦争の現実をこれでもかというほど生々しく、
しかし美しい日本語で書き綴っていく。
最終章において8月15日を過ぎ、さらに1週間ほど経過した日、
彼らは敵軍の正式な軍使により終戦を知る。
このあたりの描写には、軍に批判的であった著者をしても、
極限にまで痩せに痩せた指揮官の毅然とした対応に、
その敗者の美を感じさせずにはいられなかった様子が窺い知られる。
戦争の現実、、、、不朽の名作といって過言ではあるまい。
★★★★★