青木ケ原樹海での自殺をモチーフにした映画である。
変わったテーマなので以前から気になっていたのだが、遅ればせながら観た。
内容は4つのエピソードが微妙に絡み合いながら、淡々と進んでいき、最後は心地よい余韻が残った。
『大停電の夜に』と似たような構成と雰囲気の映画である。
映画に感情移入するにはリアリティが大切だと思っているが、そういう意味ではいくつか首をかしげたくなる場面や会話もあるが、それを差し引いても良作の部類に入るだろう。
暴力団組織にそそのかされて5億円もの公金を横領、口封じの為に殺されて、樹海に遺棄された朝倉。
「ちゃんと殺してくれればよかったのに……」奇跡的にも一命は取り留めたものの、犯罪者と成り果てた今、彼は完全に行き場を失っていた。森の中を当てもなく彷徨うしか術はない。
森を歩くうちに、朝倉は一人の男に出会う。今まさに自殺しようとしている中年男・田中だった。
「止めないで下さい!」悲痛な田中の叫びに、朝倉は慌ててその場から逃げ出すのだった――。
悪辣な090金融を営むタツヤの携帯電話に、夜逃げした筈の顧客・北村今日子からの突然の着信。自殺をしようと樹海へ入ったはいいが、足を挫いて動けない、というSOSだった。
客を逃したくないという思いから、タツヤは今日子を助けるために樹海の内部へと足を踏み入れる。奥へと歩を進めるうち、忘れかけていたあらゆる感情がタツヤの中に芽生えていく。
タツヤは突然不安に襲われる。
本当にこの森の奥に、今日子はいるんだろうか……。
平凡な日常生活を送る山田は、探偵の三枝に突然呼び出される。誘われるままに入った新橋の居酒屋で見せられた写真には若い女と一緒に自分が写っていた。山田はその写真にも女にも全く憶えがない。三枝が言うには、その女性はこの写真を持って樹海で自殺したらしい。
「彼女が自殺した理由を知りたい……」
三枝の切なる願いを受けて、山田は必死に記憶を辿るのだった。
駅の売店で働く映子には“ストーカー”という過去があった。それまでのキャリアも何もかも全て捨てて、郊外でひっそりと暮らしていた映子だったが、思いもよらない形で、自分が捨てた“過去”と遭遇してしまう。映子がストーカー行為を働いた相手・渡辺との再会だった。しかし、渡辺は映子を覚えていない。気づかぬうちに2年という歳月が映子の心を癒し始めた頃の、あまりにも衝撃的な出来事だった。打ちひしがれた彼女は“樹海”へ向かうバスへと乗り込むのだったが…。