陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

原作とその解釈

2008-12-07 | 芸術・文化・科学・歴史



原作が好きか、ドラマが好きか、という興味深いお題があったので一考。
結論からいえば、原作を知らない段階で観たドラマは例外なくおもしろいのです。先の読めない筋書きへの期待、キャラの行動を探る楽しみがついて回るからでしょう。

原作のほうがいいというのは、たいがいにおいて、ドラマの出来にクレームがくる場合。
演技者のアクが強すぎて原作のイメージにあわなかったり、台詞回しや動作が鈍かったり。脚本がいかにも視聴率狙いの俗受けする内容だったり。ドラマの演出家がでしゃっばっていたり。要するに原作の読者のもつ解釈と、演じ手もしくは映像作家、脚本家の解釈とが一致しないのです。

とはいえ、原作から距離があるから嫌いかといえばそうでもない。
たとえば原作のドラマ化でよかったと思うものに、『金田一少年の事件簿』があげられます。漫画のほうも爆発的な人気を誇り、アニメにもなりました。このドラマがなぜよかったかといいますと、原作の絵柄が失礼ながらあまりお上手ではなく、しかもキャラが類型化されていたからです。しかも主人公はじめがいかにも少年誌のやぼったい男主人公といった感じで。脇役の明智警視のほうが目立っているぐらい(笑)しかしドラマになると、演じたのは堂本剛でなかなかかっこよかったです。さらにいえば、アニメや漫画での容赦のない猟奇的なシーンはTVドラマではある程度規制がかかるので、観やすかったというのもあります。ミステリーというのは、そもそも日本の名所を舞台にすることが多く、ドラマの領分でした。原作では描写が不十分でも、映像化されると見応えがありますね。ただし、ドラマは一時間ぶんにエピソードをつめこんだ感もあって、ドラマのほうがすべてにおいて上回ったというわけではありません。

さて、いっぽう。原作のほうがよかったと思うもの。その最たる例が『タッチ』です。長澤まさみと演じる浅倉南と、斉藤兄弟の扮する上杉達也、和也。原作のあの八〇年代タッチの作風と世界観をみごとに裏切っていますよね。あの時代の空気を愛して育った人間なら、げんなりしてしまいます。学ランとか、紺のジャンバースカートな女子制服とか、スクール水着とか、聖子ちゃんヘアーは消え、いかにも渋谷にたむろする現代ファッションな高校生と化しているのです。清純な南を男ふたりを手玉にとる小悪魔な美少女と解釈してみせた長澤嬢のお芝居もいやだったのですが、むしろ困ったのは斉藤兄弟。達也と和也は一卵性双生児ですが、顔つきは性格を表して別人。またアニメでは声もまったく違います。その印象があったせいか、斉藤兄弟のどっちが兄か弟か区別できないほど。偏見かもしれないですが、ほんとうの双子を双子役にするのは十代前半までがいいのではと思われました。たとえば、NHKの朝ドラにあった『ふたりっ子』というドラマは、大人になるとまったく顔だちも体格も異なるふたりの女優が双子を演じています(少女時代は、マナカナ)それは、ふたりの生き方、考え方がまったく違っていて、別人として扱っても差し支えないからです。『タッチ』においても、あからさまにふたりは精神的にはおなじではないのですから、いっそのこと達也役はもっと軟派な感じの人、和也役はいかにも優等生っぽい人を選べばよかったのに、と思いました。というよりも、漫画やアニメではあきらかに達也が主人公ですが、ドラマでは南役のアイドルを際立たせるべく、わざと男ふたりを同質化させた思惑が感じられますよね。

『タッチ』もそうですが、ドラマ化してがっかりしやすいジャンルといえば、スポーツ漫画でしょうね。とくに男女の恋愛をテーマにする場合では、十数年まえといまとでは恋愛感覚にズレがありますので、昔の名作漫画を実写にするのはハードルが大きいです。愛好者はその当時の雰囲気をひきずっているのですから。受けるとしたら、原作を知らない世代でしょう。

原作との差異がとくに気にならないドラマのジャンルといえば、大河ドラマ。そもそも原作からして歴史上の文献や逸話から捏造していますから、俳優によって脚色されたとしても、それがマッチしていれば大歓迎。私は大河ドラマの『北条時宗』が好きで、原作の高橋克彦氏の小説も読みましたが、ドラマのほうが役者の演技力、脚本家井上由美子による昼ドラのようなシナリオが大好きでした(笑)

なお明らかに原作のイメージを裏切っても許される実写といえば、ミュージカルや宝塚歌劇でしょうね。音楽やダンスといった見せ物としての効果、そしてスターの生々しい人気を第一としていますので、原作に囚われずにずみそうなのではないと。


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今年連載再開が発表された名作少女漫画。安達祐実の主演でドラマになりましたが、野際陽子の月影先生のハマリっぷりに笑ってしまいました。でも姫川亜弓さんはお金持ちオーラが少なかったですね。漫画家のご自宅が火災に遭われたらしいですが、連載だいじょうぶなのでしょうか?




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