ここにふたりの医者がいる。
ひとりは優秀な若い医者だが、不治の病の患者に、一縷の望みを託して安全性の保障されていない投薬をし、死なせてしまった。そしてその投薬の事故でみずからも傷を負い、助手もまきこんでしまった。
もうひとりは、腕の悪い医者で一度だけ成功した手術で、医師の免許を得たが、その後、さっぱり客が来ないことを焦っていた。やっと来た患者をむちゃな手術で一時的にすくう。だが、彼女はその手術のために人間らしい肉体をうしなってしまった。
はたして、あなたはどちらの罪が重いと思うだろうか?
前者はエドワード・エルリック、そして後者は今回のゲスト錬金術師ショー・タッカー。
この番組は、はっきりいって主人公に甘くない。
愛らしい少年だから、子どもだからまちがっても許されるから、天才の若気の至りだから。そんな甘えがまったくない。
ショー・タッカーは妻とひきかえに国家錬金術師の銀時計を手にしたが、エドワードは(直接目的ではないが結果論としては)弟を犠牲にして、天才的な錬金術の技能を得た。つまり、彼の主人公らしいすがすがしいまでの強さは、弟のからっぽの肉体と等価交換にある。
ショー・タッカーがエドにお前と自分が同族とつめよったのも、ひとの命をもてあそんだ云々の大義名分の下に、こうした天才呼ばわりされた少年への凡庸からの嫉妬があったといえなくもない。
もちろん、エドワードは資質があったのだろうが、大のオトナ顔負けの戦闘術と錬金術は、あの門を通過したゆえではないだろうか。
サブタイの錬金術師とは、タッカーでもあるし、エドの苦悩でもあるのでしょうね。
タッカーは今回のほうが善人っぽかったですね。旧作だととちゅうでキメラになって登場しましたけど。もし、むりやりニーナを実験台にせずに国家錬金術師資格を剥奪されていたら、彼はスカーに狙われることもなかったわけで。
今回の構成はおもしろかった。冒頭で、前回ロゼに言い放った言葉に、自分がうちのめされてしまいます。
彼はたちどまって、歩けなくなってしまう。
旧作でしたら、このタッカー編までにたしか、鉱山での奮闘があったはずですが、ヨキなんとか氏はカメオ出演で片づけられていましたね(苦笑)
たぶん、一話の最初と最後で天国から地獄へ、と主人公をつきおとします。
ニーナの最期は旧作のような残虐さがなくて、あえて父親とともに葬られたのは、スタッフの配慮なんでしょう。
次回は、なんだかアルフォンスがお悩みのようですが?
にしても、このアニメは悪役にしても、あまり憎めないキャラが多いですね。
旧作でも敵方のホムンクルスにオリジナルのドラマがあって、同情を誘いたくなるようなキャラにしたてていました。