
私がよく利用させていただいている図書館には、この秋の時期に、ポスターと標語の展示がよくあります。なにせ文化の秋ですから。
だいたいいつも入口近くのロビーに陣取っているので、すぐに目に入ります。
最近はどうも人口減少のせいか、飾られる数が少なくなったのは寂しいことです。なぜ、私が子どものポスターに感心あるかといいましたら、私は高校までこのポスター描きで入賞の常連だったからです。ただし、県入賞レベルまでいけたのは、高校文化祭のポスターぐらいしかありません。
さて、数日まえに鑑賞しましたるお題は青少年非行防止ポスター。
絵の良しあしはさておき、美術や図画工作の課題として描かせて、お子様にこんないけない遊びはしちゃいけないよとオトナ目線で教え諭すという教育上の戦略です。
…で、私が眺めて驚いたのはですね。
10点あったぐらいのうち、半数近くがほぼ、学生服を着た「女の子どうし」が笑顔でにこやかに笑いあっていたり、手をつなぎあってルンルンランランなほんわかイラストです。いったい、どこの百合部の皆さんのイラスト展示会なのか! しかも、そこそこうまい。あんた、ピクシブアカウントでフォロワーに神呼ばわりされてるやろというほどのレベルではないですが、あきらかにヲタク絵を描きなれてる感じの子がいました。
昔に多かった、リーゼントで学ランの不良が暴走してるか、未成年飲酒とかたばことか、万引きとか、破壊活動とか、カツアゲとか、族漫画みたいなのを描いていたのは、小学生の子のだけ。ちなみに、私がほぼ20数年前に入賞したときは、シンナーと麻薬注射、喫煙を題材にしたものだったのですが、それを描いている子もひとりだけ。
では、どんなテーマが多いのかと言えば――友だち(ただし同性の、女の子だけ!)と健やかに会話しようとか、スマホ中毒やめようとか、SNSいじめストップとか。SNSがらみなのは、座間市の陰惨な事件が頭にあるのかもしれませんが、とにかく若者たちの「いけない、許されない」姿の変貌に衝撃を受けました。
言われてみれば、いまは喫煙者も肩身が狭いし、若者にお酒がうけないらしいし、目に見える破壊活動よりも陰湿な精神を追い込むいじめのほうが問題視されるべきなのかもしれませんね。
しかし、私、子どものころからずっとずっと思っていたのですが。
ほんとうに青少年の非行防止で訴えなきゃいけないのって、不純異性交遊なんですよね。女子高生の売春とかパパ活とか。避妊をせずに、好きな子と肉体関係を結んでしまうとか。でも、そういういかがわしいのはポスターにはできないわけです。なぜってね、この教育的な絵を選ぶ側(だいたい教師とか品のいいPTA役員しがちな奥様だろうが)が、それを好まないから。
結果として、絶対に「素行不良にならなそうな」優等生的な子が描いた、中途半端な青少年非行像ができあがり、それが称賛されてしまっている。はたして、そこに健全な青少年育成の意図はあるのでしょうか。
(2020/11/13)
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