ファントムを演じたのは、春野寿美礼さん。
歌唱力と演技力に定評のある実力派の人だ。
どこか寂しげな印象が漂うのも、孤高のファントムに
ぴったりだった。ただ、鬘とかがちょっと似合ってなくて、
そのへんをもっと工夫してほしい。宝塚は、他の舞台と
違い、夢を売るところ。ビジュアルの美しさもとても
大事なのだ。
ヒロインのクリスティーヌには、今回、初めて、主演
娘役として春野さんとコンビを組む、桜乃彩音ちゃん。
(注:宝塚では、主演男役・主演娘役が同時に辞めるとは
限らない)。彼女はまだ研4くらい(入団して4年目)で、
実力は未知数だ。歌は弱いような気がした。
でも、田舎から出てきた、何もしらない、あどけない
少女という感じはよく出ていた。可憐な容姿はヒロインにぴったり。
これから、どんな娘役に成長するのか楽しみだ。
キャリエールを演じた、彩吹真央さんは、確かな演技力に
定評のある実力派。春野さんより学年は下だが、押さえた
演技で、父親の役を的確に演じていた。歌も巧いし、
だからこそ、父子の2人の歌の掛け合いが迫力もあり、
せつなさも感じられた。海外ミュージカルは、ごまかしが
きかないから、実力のあるなしが、はっきり出てしまう。
そう思うと、今回の作品は派手さはないが、うまくまとまって
いたと思う。出来れば、宙組と見比べたかった。
お客さんも、立ち見まで出ていた。それは良いことなのだが、
最近宝塚は、オリジナルの作品でなかなか客が入らない。
「ベルバラ」などの大作か、「エリザベート」など海外ミュージカルの
再演ばかりだ。オリジナルで良質な作品を作れる若手の
演出家(脚本も同じ人が担当)に期待したい。