まりぶろぐ

舞台や映画、本の感想などを綴ります。

宝塚花組『ファントム』②

2006-07-31 13:32:40 | 舞台芸術

ファントムを演じたのは、春野寿美礼さん。

歌唱力と演技力に定評のある実力派の人だ。

どこか寂しげな印象が漂うのも、孤高のファントムに

ぴったりだった。ただ、鬘とかがちょっと似合ってなくて、

そのへんをもっと工夫してほしい。宝塚は、他の舞台と

違い、夢を売るところ。ビジュアルの美しさもとても

大事なのだ。

ヒロインのクリスティーヌには、今回、初めて、主演

娘役として春野さんとコンビを組む、桜乃彩音ちゃん。

(注:宝塚では、主演男役・主演娘役が同時に辞めるとは

限らない)。彼女はまだ研4くらい(入団して4年目)で、

実力は未知数だ。歌は弱いような気がした。

でも、田舎から出てきた、何もしらない、あどけない

少女という感じはよく出ていた。可憐な容姿はヒロインにぴったり。

これから、どんな娘役に成長するのか楽しみだ。

キャリエールを演じた、彩吹真央さんは、確かな演技力に

定評のある実力派。春野さんより学年は下だが、押さえた

演技で、父親の役を的確に演じていた。歌も巧いし、

だからこそ、父子の2人の歌の掛け合いが迫力もあり、

せつなさも感じられた。海外ミュージカルは、ごまかしが

きかないから、実力のあるなしが、はっきり出てしまう。

そう思うと、今回の作品は派手さはないが、うまくまとまって

いたと思う。出来れば、宙組と見比べたかった。

お客さんも、立ち見まで出ていた。それは良いことなのだが、

最近宝塚は、オリジナルの作品でなかなか客が入らない。

「ベルバラ」などの大作か、「エリザベート」など海外ミュージカルの

再演ばかりだ。オリジナルで良質な作品を作れる若手の

演出家(脚本も同じ人が担当)に期待したい。


宝塚花組『ファントム』①

2006-07-30 18:43:56 | 舞台芸術

昨日、妹と宝塚花組の公演『ファントム』を

観にいってきた。ファントムと言うと、

アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲で、日本では

劇団四季で上映されている『オペラ座の怪人』が

有名だが、この『ファントム』は、ガストン・ルルーの

原作を元にした作品というのは同じだが、全く異なる

作品である。91年の初演後、アメリカの全国ツアーで

高い評価を得てきた作品の宝塚版である。

04年に一度、宙組で上演されているが、私はそのとき

体調が悪く、見逃している。

『オペラ座~』は、ファントムとヒロイン・クリスティーヌ、

ヒロインに恋する伯爵との三角関係に重点が置かれているが、

この『ファントム』は、仮面を被り、ずっと地下で暮らしていか

なければならない、苦渋に満ちた一人の青年の心の葛藤に

よりスポットが当たっている。ファントムの過去も、あきらかに

される。そして、重要なのが、ファントムと父親との関係。

元オペラ座の総支配人であるキャリエールが、ファントムの

実の父親であり、陰ながら彼をずっと見守っていたのだ。

そのキャリエールが、「私はお前の父親だ」「わかっていたさ」と

告白し、2人で歌うシーンが一番感動する。


音楽座『泣かないで』③

2006-07-29 21:12:02 | 舞台芸術

『泣かないで』というタイトルがついているが、

最後は本当に泣けます・・・。

遠藤周作氏も、他の自分の作品の映像化には

批判的だったらしいのですが、この作品は

いたくお気に入りだったようです。

闘病生活の最後の数年間、病床で何度も

ミュージカルのビデオを見直し、スール山形が

歌う主題歌を、繰り返し聞いて歌っておられたとか。

森田ミツの生き方は、イエス・キリストの教えに

重なります。

テーマも重く、悲しい話なんですが、ミツの行動や

笑顔を見ていると、なんだか心が洗われるような

気がします。

私はこのミュージカルを見るのは97年の初演以来、

2回目だったのですが、今回の方が、ぐっと胸に

くるものがありました。脚本や演出等(特にダンス)も

前よりよくなっていたように思います。

そして、前回に引き続き、ミツを演じた今津朋子さん。

より役を深く掘り下げ、ミツならこの人しかいない!と

思わせてくれます。ハートフルな演技と、純粋なキラキラ

ひかる瞳が印象に残る女優さんです。

客席もこの日は熱かったです。何回ものカーテンコール。

そして、スタンディング・オベーション。よほど良いと

思わないと私は立ち上がらないのですが、今回は

自然と立ち上がっていました。

ミュージカルは、劇団四季しか見たことがない、と

いう人に、音楽座はオススメです。

生き方を迷っている人にも・・・。

今後も『リトル・プリンス』(星の王子様)、『アイ・ラブ・坊ちゃん』

と名作が続くので、とても楽しみです。


音楽座『泣かないで』②

2006-07-28 17:43:43 | 舞台芸術

(ストーリーの続き。)復活病院へたどり着いたミツは、

死への恐怖以上に、同室のたえ子から聞いた、

「誰からも愛されないことがつらい」という言葉に

身震いする。皆、良い人達なのに、どうしてこんなに

苦しまなくてはいけないのだろう・・・?いつしかミツは

自分の苦しみよりも、皆の心の痛みに涙していた。

ところが、数週間後、検査の結果が出て、ミツは

誤診であったことを知る。「病気じゃない、また吉岡さんに

会える」晴れて自由の身となったミツは、病院を出ようと

するが、どうしても駅の改札をくぐれなかった。

別れ際にたえ子がくれた指輪、ひとことも話せなかったのに

ミツには「さよなら」と言ってくれた女の子、脳裏によみがえって

くる患者の顔・・・極限の心の苦しみを味わったミツは

病院に残って、皆の世話をしながら一緒に生きることを

選択する。

その頃、吉岡は、マリ子と結婚していた。ミツが復活病院へ

行く前に一瞬だけミツとすれ違ったのを、ふと思い出し、

年賀状を出す。

それに対し、病院で患者達のお世話をするスール・山形

から、ミツのそこでの生活・そして最期を知らされるので

あった・・・。


音楽座『泣かないで』①

2006-07-27 20:22:06 | 舞台芸術

最近、暑いですねー。雨も多いし。

私はすっかり夏バテです。食欲減退&体のだるさ。

皆さんは大丈夫ですか?

日曜日に、兵庫県立芸術センターへ、妹と

音楽座のミュージカル『泣かないで』を観に行って来ました。

(始め、ちかちゃんと行く予定でしたが、急な用事で駄目に

なりました、残念。)

『泣かないで』は、故・遠藤周作氏の小説「わたしが・捨てた・

女」が原作となっています。そのせいか、客席にも普段よりも

年配の男性の姿が多く見られました。

ストーリーを簡単に説明しますと・・・。

1920年代、戦後間もない東京。苦学生の吉岡努は、

雑誌の文通欄でふと見つけた、クリーニングの女子工員の

森田ミツとデートすることに。しかし、吉岡は強引に一晩を

共にしただけで、彼女の前から姿を消してしまう。

そんなことも知らないミツは、吉岡とのデートの日を

夢見て、必死に残業し、新しいセーターを買おうと店へ

行くが・・・酒と博打に溺れた工員が女房にきつくあたる

シーンを見てしまい、その貯めたお金を全て与えてしまう。

その頃、吉岡は、小さな会社に就職し、社長の姪である

三浦マリ子と急速に親しくなっていく。

ミツは、手にできた青いアザを大学病院で検査して

もらうと、医師からハンセン病だと宣言される。

富士山の麓の復活病院へ行き、再度検査をし、

入院するように勧められる・・・。