パブロ・ピカソの1951年の作品に「朝鮮の殺戮」と題する油彩画がある。
迂闊にもワタシはこの作品を知らなかった。
ピカソ「朝鮮の殺戮」
この作品はフランシスコ・デ・ゴヤの『マドリード、1808年5月3日』(1814年)と同じ構図である。
同様の構図はエドゥアール・マネ『皇帝マキシミリアンの処刑』(1869年)にも見られる。
ゴヤ「マドリード、1808年5月3日」
マネ「皇帝マキシミリアンの処刑」
信川虐殺事件は、朝鮮戦争さなかの1950年、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)黄海南道信川郡において、
国連軍 (朝鮮半島)占領下で住民の4分の1にあたる3万5383人が虐殺されたとされる事件である。
加害者が誰なのかについて、異なる見解がある。
ピカソにはスペイン内戦中に、ドイツ空軍によってゲルニカが受けた
都市無差別爆撃(ゲルニカ爆撃)を主題とした「ゲルニカ」(1937年)がある。
「ゲルニカ」には人間と牛や馬が登場するが、
「朝鮮の殺戮」に登場するのは銃を向けられた裸の母親、子どもそして妊婦である。
銃を向ける6人の兵士は奇妙なヘルメットを被っているが、下半身は裸である。
彼らが手にする不思議な形をした銃は、男性性器を思わせる。
この「朝鮮の虐殺」と「ゲルニカ」の違いはなんだろうか。
このことを少しずつ考えていきたい。