放浪日記

刮目せよ、我等が愚行を。

一个都不能少

2016年10月03日 | 電影



映画「あの子を探して」を観た。

昔は映画を見る度にブログに感想らしきものを書いていたのだが、いつの間にか書かなくなってしまっていた。
ただ、この映画だけは激しく感情を揺さぶられたので、自分自身への備忘録として書いておこうと思う。



1999年制作の中国映画。監督は、巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)。
ヴェネツィア国際映画祭グランプリを受賞しているという、おもしろさお墨付きの映画である。

あらすじは以下の通り。
Wikipediaより抜粋。

舞台は中国の農村。水泉小学校のカオ先生が母親の看病のため、一ヶ月間、小学校を離れることになった。放っておけば、多くの生徒が家庭の事情で学校をやめてしまう。代理として村長に連れてこられたのは、13歳の少女、ウェイ・ミンジ。
中学校も出ていないミンジに、面接したカオ先生は心許なさを感じるが、子供たちに黒板を書き写させるだけの簡単なことならできるだろうと代理を任せる。報酬は50元。子供を一人も脱落させなければさらに10元。
ミンジは、生徒に自習させて教室の外で座っているだけの「授業」を始めるが、うまくいくはずもなく、次々と騒ぎが起こる。特に生徒のホエクーは、隙を見て抜け出そうとしたり、女の子の日記を盗んで騒いだりといつもミンジを困らせていた。
そんなある日、そのホエクーが突然学校にこなくなった。病気になった親の代わりに、町に出稼ぎに行ったという。脱落者を出すと報酬が減ってしまうと考えたミンジは、何とか連れ戻そうと策を巡らせるが、町を出るバス代がない。皆で話し合い、レンガを運んで金を稼ぐことになり、生徒たちも一生懸命働いてようやくミンジを送り出す。大きな町へ着くとホエクーは行方知れずだと聞く。彼女はなけなしの金をはたいて紙と筆と墨汁を買い、尋ね人のチラシを貼り出すがらちがあかない。町のテレビ局に行き、涙ながらに訴える。苦難の末、ミンジはホエクーと再会を果たす。


という作品なのだが、出てくる中国人どもが、生徒を除いて全員自分勝手でクズ! 土!
一人一人のクズポイントを書き連ねていくと、とんでもない文量になるので割愛するが、本当に自分の面子と金のことしか考えていない。
しかし、これこそまさに中国人の本当の姿でもあるので、それを描ききった監督は素晴しいと思う。

舞台となった河北省の農村は、もう逃れようもなく貧しい。
撮影当時から15年以上経ち、バブルの恩恵は多少受けて豊かになっているかもしれないが、当時は1元のお金すら捻出できないほど貧しい。

僕が初めて中国を旅したのが、ちょうどこの頃。
そして映像のなかにか、当時僕が中国で出合った光景がそのまま残されていた。
直接映像にはなっていないけれど、カメラの隣では、人の隣でカーッ!って痰を吐くオッサン、道端でガキに小便させてる母親、よく分からない汚い水を道にドバーッって捨てる店員、車道と歩道の分離帯にうんこ座りして煙草ふかすジジイ、スーツの袖にタグをつけたまま歩く兄ちゃん、脇毛未処理でナイロンのテロテロ服を来て下着スケスケな姉ちゃんなどなど、あの頃の中国の町なかにいた、普通の中国人たちがいっぱいいることが確信できる。

もうね、これですよ。
僕の大好きで、大嫌いな中国は。
トイレなんて絶対ニーハオトイレだし、列車でもバスでもところまかまわず煙草吸っていいし、何か買おうとしても、どこかに泊まろうとしても「没有」って言われる。
人を人とみなさず、虫けらのように見下す視線。歩行者を無視して突っ込んで来る車と膨大な自転車。側溝には残飯が捨ててあって蠅がたかっている。山盛りのパサパサご飯におかずをぶっかけた丼を持ち、排気ガス満載の路上で立ちながらクッチャクッチャと飯を食う人民。
けたたましいクラクションの音とそれに負けないくらいの人民の怒号。スピーカーからは音割れしている宣伝の声が街の喧噪に拍車をかけている。

もう一度、書きますよ。

もうね、これですよ。
僕の大好きで、大嫌いな中国は。

クズで土で、風呂入っていないから垢臭い人民。
くっちゃくちゃの人民元をポケットから出して、店員に投げつける。
21世紀の今、こんな中国は残されているのだろうか。

僕はこの映画を観て、嘔吐しそうになった。
郷愁と憎悪と愛情がごっちゃ混ぜになって、一気に脳内を巡った。
映画の中に、僕はいた。
僕は、人民の群れの中で、人民と戦っていた。


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2 コメント

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観てみたい! (餃子)
2016-10-07 21:20:27
紹介の映画、まだ見たことがないので是非観てみたい!
あの、ムカつきながら旅をして、日本に帰国してからまた行きたくなった、あの国を思い出したい。
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Unknown (にいや)
2016-10-11 19:26:13
餃子さん>
この映画には、埃っぽくて雑多で面倒くさいけれど、完全には憎めない、あの時僕たちが旅をしていた中国が映されていると感じました。
ぜひご覧いただき、感想を教えてください!
特に、主人公が町に出た際の、町の様子は、あのときの中国だと思います。
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