「集合は終電で」。
その一言を念仏のように繰り返しながら、僕は終電1本前の電車に揺られて関西国際空港に向かっていた。
大阪市内を走る頃は家路を急ぐ人も乗っていたが、うとうとしているうちに車両に人はほとんどいなくなっていた。
電車は鉄橋を渡り空港へと到着した。
閑散としたホーム。人の気配がほとんどない。
若干不安になり、メンバーにLINEを送る。
「ワレ カンクウ ニ トウチャク セリ」
すると、メッセージは一瞬で既読に。
その直後、やはぎ氏から「わしもじゃよ」と返信があった。
JRと南海の電車が違えど、ほぼ同タイミングで空港駅に着いていたようだ。
2016年10月某日。
今回、5年ぶりに再結集した我々モグモグ隊が向かう先は、台湾。
沖縄、名古屋、東京とモグモグを繰り返してきた我々は、2泊3日の初の海外遠征に挑む。
今回は旅費をギリギリまで節約するために、往路の移動はLCCのバニラエアを選択した。復路もタイガーエアというLCCだ。どちらもセール時期をあざとく見つけて購入。一人往復18,500円。
三連休でこの値段だ。安い。
今回のモグモグ旅。事の発端は、海外旅行大好きの僕が、酔いの勢いに任せてやはぎ氏に「海外行こーぜ! LCC使ったら安く行けるし」とつぶやいたことから始まる。
「なんで飛行機に乗らなあかんのじゃ」というミスター高所恐怖症のやはぎ氏は、リーダー・をきな氏に愚痴ったが、「台湾といえばおいしい食事。安くモグモグできるなら世界のどこだって行っちゃう!」というをきな氏の鶴の一声で開催が決定した。やはぎ氏の意見はまるで無視された形だが、いざ行くという段になると、LINEの返信の素早さからも感じられるように、あながち嫌ではないらしい。
JRの改札を出たところで、やはぎ氏が満面の笑みで右手を振っていた。
「久しぶり」でも「今回よろしく」でもなく、僕の第一声は「なんで短パンやねん!」
そう、やはぎ氏は何を考えたのは、10月の深夜、短パン姿で駅にいたのだ。
駅の改札でおちあう40歳手前のオッサン二人(うち一人は短パン姿)。
もうそれだけでホラーだ。今回の開催に暗雲がたちこめている気がする。
「台湾といったら南国だし、暑いやろがい」
10月の台北の平均気温は24℃。現地で短パンになるのはいいが、なぜ君は自宅から短パンでくるのかね? 海パンをはいて登校する小学生のようなテンションのやはぎ氏に、少しクラクラした。
しかし本音をいえば、格好なんてどうでもいい。
我々に必要なのは食欲のみだ。
結婚式ではないが、人生で大切にしたい3つの袋が我々にあるとすれば、それは「胃袋」「胃袋(その2)」「胃袋(その3)」である。
まさか、エネルギーの消費を高めるためにあえて肌を露出する短パン姿で来たのか、やはぎ氏?
空港のターミナルのベンチに腰掛け、短パン姿をディスっていたときに、ふと気付いた。
何かが足りない…。
そう、リーダーだ。
まだリーダーが来ていない!
しかし電車はすでに終わっている。まさかの不参加か。
冷や汗ならぬ脂汗がドロリと背中を流れた。
「おい、やはぎ。をきな氏は?」
「ああ、まだ来とらんな。何しとるんやろな」呑気である。
すぐにLINEを打つ。
しばらくするとをきな氏から返信があった。
「海」
意味不明である。
しかし、我々2人にできることは、リーダーを信じて待つことだけ。
気分はセリヌンティウス(by走れメロス)だ。
その後、再びをきな氏から着信。「島に到着!」とあった。
もしや、をきな氏は船で来たのか? 意外だった。盲点だった。神戸から関西国際空港へは船でアクセスすることができたのだった。
船のタラップを降りて登場! となれば格好よかったのだが、船着き場からバスに乗せられたらしく、をきな氏はエアポートバスの停留所からやってきた。
「悪い悪い」我々が心配していたことを知らないリーダーは、反省の色はまったくない。
しかし、ここでモグモグ隊が揃った。
無事に台湾へ行ける。こうして旅は始まったのだった。
ほぼ誰もいない空港。夜中の空港はさすがに寂しい。
ちなみに、我々が搭乗する飛行機はAM3:00過ぎのフライト。
出発2時間前のチェックインまでもまだまだ時間はあった。
僕は仕事を終えた足で空港に来たこともあり、夕食を食べていなかったが、をきな・やはぎの両名はちゃっかり夕食を食べていた。
台北着はAM5:00すぎの予定のため、空腹で夜を越したくなかった。
「何か食べますわ」とコンビニに入れば、ちゃっかり二人もついてきて、カゴにビールやつまみを入れるわ、入れるわ。
「さっ・か・も・り! さっ・か・も・り!」とテンションマックスの両名である。
もちろんそんな申し出を断る理由もなく、モグモグ台湾遠征の記念すべき第1食目は、空港でコンビニ飯となったのだった。
まずは買い出し1回目!
それで足りるわけもなく、買い出し2回目!
なぜ小指が勃っているのか不明…。
その後、やたらハイテンションの我々は、チェックイン時間ギリギリまで、空港のベンチでどんちゃん騒ぎ。
爆買いの中国人たちも真っ青のひどいありさまであった。
キッズコーナーで爆睡する両名。精神年齢だけがキッズである。
(続く)
その一言を念仏のように繰り返しながら、僕は終電1本前の電車に揺られて関西国際空港に向かっていた。
大阪市内を走る頃は家路を急ぐ人も乗っていたが、うとうとしているうちに車両に人はほとんどいなくなっていた。
電車は鉄橋を渡り空港へと到着した。
閑散としたホーム。人の気配がほとんどない。
若干不安になり、メンバーにLINEを送る。
「ワレ カンクウ ニ トウチャク セリ」
すると、メッセージは一瞬で既読に。
その直後、やはぎ氏から「わしもじゃよ」と返信があった。
JRと南海の電車が違えど、ほぼ同タイミングで空港駅に着いていたようだ。
2016年10月某日。
今回、5年ぶりに再結集した我々モグモグ隊が向かう先は、台湾。
沖縄、名古屋、東京とモグモグを繰り返してきた我々は、2泊3日の初の海外遠征に挑む。
今回は旅費をギリギリまで節約するために、往路の移動はLCCのバニラエアを選択した。復路もタイガーエアというLCCだ。どちらもセール時期をあざとく見つけて購入。一人往復18,500円。
三連休でこの値段だ。安い。
今回のモグモグ旅。事の発端は、海外旅行大好きの僕が、酔いの勢いに任せてやはぎ氏に「海外行こーぜ! LCC使ったら安く行けるし」とつぶやいたことから始まる。
「なんで飛行機に乗らなあかんのじゃ」というミスター高所恐怖症のやはぎ氏は、リーダー・をきな氏に愚痴ったが、「台湾といえばおいしい食事。安くモグモグできるなら世界のどこだって行っちゃう!」というをきな氏の鶴の一声で開催が決定した。やはぎ氏の意見はまるで無視された形だが、いざ行くという段になると、LINEの返信の素早さからも感じられるように、あながち嫌ではないらしい。
JRの改札を出たところで、やはぎ氏が満面の笑みで右手を振っていた。
「久しぶり」でも「今回よろしく」でもなく、僕の第一声は「なんで短パンやねん!」
そう、やはぎ氏は何を考えたのは、10月の深夜、短パン姿で駅にいたのだ。
駅の改札でおちあう40歳手前のオッサン二人(うち一人は短パン姿)。
もうそれだけでホラーだ。今回の開催に暗雲がたちこめている気がする。
「台湾といったら南国だし、暑いやろがい」
10月の台北の平均気温は24℃。現地で短パンになるのはいいが、なぜ君は自宅から短パンでくるのかね? 海パンをはいて登校する小学生のようなテンションのやはぎ氏に、少しクラクラした。
しかし本音をいえば、格好なんてどうでもいい。
我々に必要なのは食欲のみだ。
結婚式ではないが、人生で大切にしたい3つの袋が我々にあるとすれば、それは「胃袋」「胃袋(その2)」「胃袋(その3)」である。
まさか、エネルギーの消費を高めるためにあえて肌を露出する短パン姿で来たのか、やはぎ氏?
空港のターミナルのベンチに腰掛け、短パン姿をディスっていたときに、ふと気付いた。
何かが足りない…。
そう、リーダーだ。
まだリーダーが来ていない!
しかし電車はすでに終わっている。まさかの不参加か。
冷や汗ならぬ脂汗がドロリと背中を流れた。
「おい、やはぎ。をきな氏は?」
「ああ、まだ来とらんな。何しとるんやろな」呑気である。
すぐにLINEを打つ。
しばらくするとをきな氏から返信があった。
「海」
意味不明である。
しかし、我々2人にできることは、リーダーを信じて待つことだけ。
気分はセリヌンティウス(by走れメロス)だ。
その後、再びをきな氏から着信。「島に到着!」とあった。
もしや、をきな氏は船で来たのか? 意外だった。盲点だった。神戸から関西国際空港へは船でアクセスすることができたのだった。
船のタラップを降りて登場! となれば格好よかったのだが、船着き場からバスに乗せられたらしく、をきな氏はエアポートバスの停留所からやってきた。
「悪い悪い」我々が心配していたことを知らないリーダーは、反省の色はまったくない。
しかし、ここでモグモグ隊が揃った。
無事に台湾へ行ける。こうして旅は始まったのだった。
ほぼ誰もいない空港。夜中の空港はさすがに寂しい。
ちなみに、我々が搭乗する飛行機はAM3:00過ぎのフライト。
出発2時間前のチェックインまでもまだまだ時間はあった。
僕は仕事を終えた足で空港に来たこともあり、夕食を食べていなかったが、をきな・やはぎの両名はちゃっかり夕食を食べていた。
台北着はAM5:00すぎの予定のため、空腹で夜を越したくなかった。
「何か食べますわ」とコンビニに入れば、ちゃっかり二人もついてきて、カゴにビールやつまみを入れるわ、入れるわ。
「さっ・か・も・り! さっ・か・も・り!」とテンションマックスの両名である。
もちろんそんな申し出を断る理由もなく、モグモグ台湾遠征の記念すべき第1食目は、空港でコンビニ飯となったのだった。
まずは買い出し1回目!
それで足りるわけもなく、買い出し2回目!
なぜ小指が勃っているのか不明…。
その後、やたらハイテンションの我々は、チェックイン時間ギリギリまで、空港のベンチでどんちゃん騒ぎ。
爆買いの中国人たちも真っ青のひどいありさまであった。
キッズコーナーで爆睡する両名。精神年齢だけがキッズである。
(続く)