放浪日記

刮目せよ、我等が愚行を。

2023年私的映画ランキング

2024年08月23日 | 大阪編集精進道
もうこのブログも、自分の映画備忘録的なものになってしまった。
気付いたら、もう8月後半。どんだけ更新していないんだって。

題名の後ろに★が付いているのは、映画館で観賞したもの。▲が付いているのは、主にBS松竹で放映された短編映画。

哭声
THE CROSSING▲
Cockkoo▲
Cut Cut▲
The Stick▲
Yes-people▲
ピエロがお前を嘲笑う
ビルマの竪琴
居眠り磐音
ドリーム
Rise of a star▲
収容病棟
SKIN▲
妻への旅路
Hunger▲
Il Moudiale in piazza▲
I Never Lie▲
Magic Alps▲
Long Branch▲
鬼平犯科帳
ロシアンルーレット
ナイト・オン・ザ・プラネット
千年女優
Only A Child▲
Say Yes▲
マッキー
Millions of tears▲
Tennis Elbow▲
夜明けの祈り
万引き家族
プラトーン
初恋のきた道
君たちはどう生きるか★
ハンガーゲーム
ミステリと言う勿れ★
ヨーロッパ新世紀★
サタデーフィクション★
クライマッチョ
魔界転生
ゴジラ-1.0★
忠臣蔵外伝四谷怪談
イップマン序章
イップマン葉問
イップマン継承
イップマン完結
Benjamin's Last day at Katon Swimming Complex▲
Get up Kinshasa!▲
Odd is an Egg▲


以上、全48本でした。

2017年は36本、2018年は34本、2019年は34本、2020年が40本、2021年が35本、2022年が39本だったので、あいかわらず短編映画で数を稼いでいるはいえ、新記録更新でした。

ということで、以上の映画から、2023年の私的ベスト3を発表。

まずは3位
「収容病棟」



昨年の私的映画ランキング2位「無言歌」に続き、今年も王兵の作品がランクイン。中国・雲南省の精神病院を映した一本。237分の長丁場で、観ている自分もいつの間にか「そっち側」に行ってしまったのではないかと思えてくる。終始にやつき奇声を発する男から、反政府的活動をしたことで精神病という扱いを受けて収容された男まで、今の中国社会から「精神を病んでいる」とされた人々のリアルな生活が切り取られている。昨年のコメントと同じ言葉をあえて使いたい。
これを絶望と呼ばず、なんと言うべきか。


続いて2位
「ヨーロッパ新世紀」



ルーマニアのトランシルバニア地方の寒村で起こった小さな事件が、やがて人々を巻き込みながら人種差別と紛争へ……。これはルーマニアだけで起こっているのではない。ヨーロッパだけではなく、アジアでもアフリカでも、我々が生きる世界が、よりわかりやすい形に二極化していく……そんな現実へと繋がっていくことを示唆する一本だった。



そして、1位の前に、特別賞
「ゴジラ-1.0」



昭和の頃からのゴジラファンとしては、この映画の会心の一撃具合にまさに卒倒しそうになった。あの第一作「ゴジラ」よりも前の時代を舞台に、空想化学兵器を武器にするとか、伝説の神獣とか、未来人が造ったメカと戦うとか、そんな小細工を一切排除して、人間対ゴジラの一点勝負。もちろんエンタメ映画なので、トンデモ要素が少しだけスパイスになっているのもよし。映画館に何回も見に行っちゃった。



そして、2023年の1位は
「万引き家族」


もういまさらながらって感じでしょうが。初見のため。
堂々1位になるくらいに引き込まれた。そりゃカンヌも獲れるわって感じ。犯罪に手を染める家族を描きながら、本当の家族とは、愛とはと深く考えさせられる。
非常におもしろかった。役者の演技力に脱帽。


来年は、もう少し早くに更新しよう。
ちなみに8月後半で、22本観賞済み。

2022年私的映画ランキング

2023年08月15日 | 電影
忘れていたわけではないけれど…、ずるずると後回しになっていた2022年の映画について。
もう2023年も半ばを過ぎてしまっていて、映画を観たときの感動も少し薄れてきつつあるけれど、なんとかまとめてみる。いまさらながら。
題名の後ろに★が付いているのは、映画館で観賞したもの。▲が付いているのは、主にBS松竹で放映された短編映画。


「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」
「運び屋」
「鬼平犯科帳 劇場版」
「ドラゴン」
「無言歌」
「キッド」
「ミザリー」
「姉姉妹妹」
「聲の形」
「ハッチング -孵化-」★
「国葬」★
「チョコレートドーナツ」
「長江哀歌」
「学校」
「学校Ⅱ」
「SNOMANN」▲
「学校Ⅲ」
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
「宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海」
「女神の継承」★
「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」
「ファンタスティック・プラネット」
「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」
「存在のない子供たち」
「ムンナ兄貴とガンディー」★
「CALL WAITING」▲
「CHICAS DAY」▲
「The Goal」▲
「5m80cm」▲
「笛吹川」
「十五才 学校Ⅳ」
「HOME AWAY From HOME」▲
「ザ・フライ」
「ドラゴン・ブレイド」
「天使にラブソングを2」
「White Eye」▲
「Billy the Baker」▲
「結婚しようよ」
「Your Call Is Important To Us」▲

以上、全39本でした。

2017年は36本、2018年は34本、2019年は34本、2020年が40本、2021年が35本だったので、短編映画は多いとはいえ、それなりに観てたんですね。

以上の映画から、2022年の私的ベスト3を発表。




まずは第3位
「十五才 学校Ⅳ」


山田洋次監督、どちらかというと好きです。
大きな物語というよりも、市井の中にある小さな物語を、その時代の光景を背景にして撮っているのがいい。時を経て見返したときにこそ価値が出てくるような。
田中邦衛の競馬中継が印象的な「学校」は、もう大好きな一本なのだが、この作品は続編の体をとっているものの、まったく別物。不登校の少年がヒッチハイクの旅を通して成長していく物語。社会こそが学校だ、的な内容にもとれるのだが、そんなことはあんまり気にしていなくて、15歳の少年が初めて旅に出て、各地でいろいろな人に出会い、経験を積んでいくという、僕もふた昔くらい前に経験したようなしていないようなピュアな思い出を思い起こさせてくれたということで、ランクイン。



続いて、第2位
「無言歌」


中国のドキュメンタリー監督・王兵の作品。
60年代の反右派闘争で、甘粛省の砂漠にある政治犯収容所に送られ、強制労働させられている人間にスポットを当てた物語。目や口、耳の中にまで黄砂が入り込んでくるような、中国西部のあの乾燥地帯の質感が、生々しくフィルムに刻み込まれている。ひび割れた感想の大地に這いつくばって、虫けらのように生きることだけに執着する終焉の見えない日々。これを絶望と呼ばず、なんと言うべきか。




そして、第1位
「女神の継承」


「哭声」のナ・ホンジンが製作したタイと韓国の合作モキュメンタリー。
2位の「無言歌」と一転して、東南アジアの片田舎で感じるねっとりとした湿度が首筋に巻き付いてくるような(いい意味で)嫌な感じの作品。話の結論も何も、最後は観た者に投げっぱなしだし、謎は回収されないし、すっきりしないのは事実なんだけど、そういう映画ではないと割り切れば、非常におもしろい。
のんびりしているようで、実は狂気と紙一重の笑顔の裏に隠された国民性に触れたことがあれば、この作品に漂う独特の気持ち悪さに、背筋を寒くすることだろう。



2023年も、なんとかこのペースで映画をみていきたい。



ちーちゃん

2023年08月14日 | 大阪編集精進道
旅で知り合った友人が亡くなっていた。
彼女とは、帰国後も、互いに大阪にいるということもあって、たまにではあるが会って、飲んで、話したりする仲だった。
コロナ禍が始まったあたりで、大阪から東京に居を移し、新しい環境でいろいろなことにチャレンジしているようにみえた。

最近、共通の知人が神戸で飲んでいるときに、同じ店の中で彼女っぽい人がいるとメッセージを送ってきたことがあったのだが、友人が聞き耳をたてていたその人の話の中で、結婚をしていたり、38歳だったということから、それはまったくの他人の空似ということがあった。
確かに、最近彼女と連絡とっていないなぁとなんとなく思っていたり、それまでfacebookやTwitter、tumblr、noteなどで情報の発信があったが、ここんところ止まっていたのも何となく気付いていた。まあ、いろいろと忙しいのだろうと思い込み、こちらからコンタクトをとるわけでもなく、日が過ぎていた。

長い旅にはあまり出ない人だったけれど、常に個性的な旅をしていた。
最初は東南アジアやインドに興味があったようだったが、近年は東欧や中東などを旅していることが多かった。日本人があまり行かないようなエリアでも、海外のサイトなどから情報を得て、短期間でよくぞと思えるような旅をする人だった。
そして、旅先で撮った彼女の写真が、とても魅力的だった。そして、写真だけでなく、書く文章も彼女の性格がにじみ出ているような、やさしさに包まれた温かなものだった。
彼女は2冊の本を上梓し、そして旅立っていった。

彼女は、2022年8月に亡くなっていた。
直接に連絡を受けたわけではないけれど、最後となった本に携わったデザイナーやその関係者のブログやツイートなどからしか、彼女の訃報はわからないけれど、幾人もの人が同じ情報を同日に発信していたり、彼女からの情報発信がなかったことや、僕が送ったメッセージも既読がつかないことから、やはりこれは事実なのだと思う。彼女は、もう、いない。

亡くなる半年ほど前に、メッセージのやり取りをしたのが最後だった。完成した本に、次に会うときはサインをしてほしいとねだっていた。ねえ、まだサインもらってないんだけど。

生前、彼女は闘病を続ける中で、容姿も変わっていっていただろうし、人とはあまり会いたくなくなっていたのかもしれない。小さな体でちょこまか動き回り、甲高い声で笑顔を振りまいていた彼女。旅先で撮ってくれた写真は僕のベストポートレートだし、プリーの床屋のオヤジに断って、散髪をしてくれたのもいい思い出だ。

そういえば、彼女の死を知った昨日は、彼女の初盆だった。
いろんなところを旅しているのだろうけれど、彼女が好きだった高校野球が開催しているこの期間だけは、甲子園の特等席で観戦するために、戻ってきているのかもしれない。




どんだけぶりなの

2023年06月17日 | 大阪編集精進道
忙しいとかなんか言い訳してしまって。
結局自分から発信することの熱量が下がってきているということではないのか。

桜切られた

2023年03月01日 | 大阪編集精進道
目の前の公園から桜の枝が徐々に我が家のベランダに向けて伸びてきて、ここ数年はベランダの中に入ってきて、自宅にいながら花見ができるようになっていた。

ところが昨日、外が騒がしいと思っていたら、公園に造園業者がいて、草刈りするついでのように、我が家が愛でていた桜の枝がスッパリ切られていた。

家のベランダに枝が入り込むのは、行政的にも良くないことかもしれないが、本当に悲しくなった。
もうすぐ春なのに、今年はいつものように楽しめないなんて…。

この桜の枝がなくなったら、この家にいる意味ないなぁなんて言ってたけど、そろそろ転居を考える時期に来ているのだろうか…。



飲み過ぎた

2023年02月27日 | 大阪編集精進道
この年齢にもなって、まだ飲み過ぎてる。
みんなと呑むのが楽しくて、翌日に支障が出るまで飲んでしまう。
半分だけ反省。

年に一度の

2023年02月18日 | 大阪編集精進道
今日は年に一度の引きこもりデー。

家からまったく出ず、人にも会わず、メールを開くこともせず、買い物にも行かず。
淡々と時間が過ぎゆくのを待つのみ。



コロナの名前

2023年02月16日 | 大阪編集精進道
2類から5類に変更されるタイミングで、コロナも名前代わるんだ。
2019なんて数字がつくと、今後また流行ることもふまえての名付けに見えてくる。
世界中すべての人が何らかの影響を受けたパンデミック。存在することが当たり前の世界になっていくんだと、少しずつ変わっていくんだなと。

マスクは

2023年02月15日 | 大阪編集精進道
来月からマスクしなくてよくなるらしいけど、どうなるんだろうね。

コロナ禍の中で転職して今の会社で働き始めたので、社員の人の素顔をほぼ誰も見たことないわ。

再発か?

2023年02月14日 | 大阪編集精進道
もうかれこれ十年以上前。
「良発性頭位めまい症」を発症して、脳がクラッシュしたと勘違いして焦ったり、グルグルを楽しんでいたのだが、いつの間にか収まっていた。

ところが、先週くらいから、寝起きにグラッとめまいの欠片のような感じを覚えるように。

「良発性頭位めまい症」再発したかもしれん…。



放置しすぎた

2023年02月13日 | 大阪編集精進道
ブログ、7月以降まったく書いてなかった。

ウクライナの戦争はいまだ続いているし、各地で自然災害も多い。変な気球が飛ぶ世界は、相変わらず混沌としていて。

そんな中でも、ようやくコロナ収束の目処がたったのは、数少ない良いニュース。
年末には三年ぶりの海外旅行にも行けた。

一度はアンインストールしていたブログアプリを入れたので、つぶやき的に投稿していければと皮算用している。

こんな世界に

2022年07月20日 | 大阪編集精進道
大災害、テロリズム、異常気象、パンデミック、戦争、ジェノサイド、暗殺…。
子どものときに想像していた21世紀って、明るい未来だったのに。
まさか、こんな世の中になるなんて。
とはいっても、毎日お腹がすくし、眠たくもなる。
僕たちは、生きていかなければいけない。
それが、どんな世界であっても。

2021年私的映画ランキング

2022年04月14日 | 電影
毎年年始恒例の記事です。
昨年観た映画をまとめてみました。
題名の後ろに★が付いているのは、映画館で観賞したもの。

「テラフォーマーズ」
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 」
「RED SHADOW 赤影」
「セデック・バレ 太陽旗」
「セデック・バレ 虹の橋」
「男たちの挽歌」
「犬鳴村」
「ゾンビ ディレクターズカット版」
「男たちの挽歌Ⅱ」
「リベリオン」
「アンタッチャブル」★
「ララランド」
「スラムドッグ・ミリオネア」
「人生の特等席」
「ヒトラーの忘れもの」
「ジオストーム」
「ゴジラ キングオブモンスターズ」
「狂猿」★
「マトリックス」
「マトリックス リローデッド」
「バーフバリ 伝説誕生」
「ゴジラ VS コング」★
「KANO」
「ブレードランナー」
「アガースワーディ村」
「メトロポリス」
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」★
「300」
「アタック・オブ・ザ・キラートマト」
「スターリンの葬送狂騒曲」
「機動戦士ガンダム」
「モスル」★
「ONODA」★
「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編 」
「マトリックス リザレクションズ」★

以上、全35本でした。


2017年は36本、2018年は34本、2019年は34本、2020年が40本でした。
コロナとか関係なく、まあだいたいこれくらいの数になるんだね。


以上の映画から、2021年の私的ベスト3を発表。



まずは第3位。
「セデック・バレ 太陽旗」「セデック・バレ 虹の橋」



ずっと観たかった映画がGyaoになったので観賞。広告を見ることになるとはいえ、無料で映画が観られるなんて、すごい時代になったものだね。

1930年に台湾で先住民が日本軍に対抗して起こった霧社事件を描いたもの。
某国人がつくれば日本人が完全悪として描かれるのだろうが、ここでは悪ではありながら、人間としての葛藤なども描かれていた。
詳しくは知らないが、先住民たちは後の大東亜戦争で日本軍の軍属となり、活躍したらしい。台湾の先住民は勇猛果敢ということがよくわかった。
そんな前知識なくても、単純にかっこよく、そして悲しい。2本立てだが、その長さはまったく気にならなかった。




続いて2位は、

「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」



休日に何となく映画が観たくなって、何の下調べもせず映画館に行き、最短で上映開始する映画がこれだった。
黒人の、黒人による、黒人のための西部劇。
主要登場人物は全員黒人で、黒人同士がジョン・ウーも真っ青のガンアクションでドンパチ撃ち合いまくるので、頭の中空っぽにして、銃声に身を包まれろ。
そして、西部劇とは縁のないゴリゴリのブラックミュージックが大音量で画面を占領する。劇中で新しい街に着けばタイトルのように画面いっぱいに街の名前が記されるなど、映画というよりも長編のMVを観ているような快感。
そして何より一番驚いたのは、これがNetflixの新作映画だったということだ。大手の映画会社ではなく、Netflixでもこんなにおもしろい映画、いやNetflixだからこそのこのクオリティか。時代が確実に進んでいて、僕は少し取り残されていることを実感した。ネトフリ契約者はぜひ観てみて。


さあ、そして2021年の1位は

「スラムドッグ・ミリオネア」




いまさら何だよという感じですが、なぜか見逃していて、今頃になってようやく観賞。
映画のストーリーとかそういうことで1位なのではなく、これを観ているうちに、インドでの出来事が走馬灯のように頭の中をよぎり、何とも言えない気持ちになった。
映画が現実世界からどこかへ連れて行ってくれるものという定義なら、この映画は僕にとってはまさしく極上の一本だ。

主人公はスラムで育ち、波乱万丈の人生を送る。その人生の集大成がクイズ番組の4択クイズとして(偶然に)出題される。

インドを旅したとき、大勢の子どもに接する機会があった。僕が子どもが好きなほうではないので、自ら子どもに寄っていきはしない。インドという国は、異邦人を放っておいてくれる国ではない。その悠々たる濁流の中に身を浸せば、聖俗入り混じった事象がまとわりついてくる……。

ある町に行こうと鉄道に乗った際、誰にも頼まれないのに勝手に通路を掃除して、乗客からバクシーシ(喜捨)をねだる少年がいた。僕を見て外国人と見るや、執拗に手を差し出してきた。お腹がすいているんだというジェスチャーをしながら。
けれども僕はお金をあげなかった。それは当時の僕の旅のポリシーだった。
しばらくして、少年はあきらめ、違う客へとねだりながら、次の車両に移っていった。
インドの鉄道の乗車時間は長い。今はもうできないだろうが、当時は連結部であれば喫煙が黙認されていた。僕は時折連結部に移動して、目の前を通り過ぎていく景色を眺めながらタバコを吸っていた。
すると、あの少年が連結部にやってきた。僕を見るなり、また手を差し出してきたが、何もないよというジェスチャーをすると、今度はいともあっさりあきらめて、僕の隣に座った。どうやら、彼の仕事は終わったらしい。
外国人が珍しいのが、ちらちら見てくる。タバコ吸うかと吸いかけのタバコを渡そうとしたら、はにかみながら手を横に振った。
言葉がまったく通じないので、無言の時間が過ぎていく。
そういえば、さっき食べていたビスケットのあまりがあったはずだ。サブバッグのポケットからビスケットを取り出し、一枚を食べ、もう一枚を差し出したら、少年は受け取った。そして、ゆっくりと食べた。無言だった。
「パルレ ジー」とビスケットの名前を言ってみたら、少年は笑った。
普通の子どもの笑顔だった。
そこから十数分間、連結部の轟音にかき消されながら、お互い単語を言い交わすだけだったが、そんな小さな国際交流が楽しかった。
そんなとき、車両を巡回する警官が連結部にやってきた。ほうきとゴミ箱代わりのバケツを手にした少年を見るや、何か注意している。少年も負けじと言い返す。何を言っているのか理解はできなかったが、おそらく無賃乗車を注意しているのだろう。すると突然警官は手にしていた警棒で少年を殴った。肩、胴、そして頭。少年の悲鳴が上がる。警官はそれでも続けて殴り続ける。あまりの出来事に一瞬動けなかった。
なにやってんだと警官を止めたら、隣にいたインド人野次馬に止められた。
彼は無賃乗車なんだ。
知ってるよ、それくらい。それくらいでなんで殴られなきゃいけないんだ。
野次馬は動物を見るような目で、少年を指し、もう一度「無賃乗車」と言った。
あまりにも殴り続ける警官は、さすがに周りの人に止められ、少年に向かって何か怒鳴って去っていった。
彼は次の駅で降りなければいけない。
野次馬は、そう英語で訳し、自らの座席に戻っていった。
列車はあいかわらず平野の中を走っている。連結部には僕と、何発も殴られ頭と鼻から出血した少年が残された。
僕が彼を見ると、彼も僕を見た。目が合った。
少年は、はにかんだ。血を流しながら、へへっと笑った。悲しい笑顔だった。
いつものことさ、と言っているかのように、何事もなかったかのように、僕の隣に座りなおした。けれども、それ以降少年は無言だった。
そして、次の駅に列車が停まり、少年は列車から降りた。ホームに立つと軽く僕を振り返って、そしてどこかへと逃げるかのように駆けていった。

映画を観ながら、主人公の悲しい笑顔を見ながら、僕はそんなことを思い出していた。
僕は旅行者という名の傍観者だった。


時に映画は、僕を強引に過去へと引き戻す。
そんな時間が、たまらなく愛おしい。





11年

2022年03月11日 | 大阪編集精進道
東日本大震災から今日で11年。
幸い全く被害はなかったが、あの日のことを忘れることはないだろう。


刮目せよ

2022年03月09日 | 大阪編集精進道

刮目せよ、我等が愚行を。