第3点 申立人が従前提起した3件の訴訟
民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り
1 原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
申立人の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返
しにすぎないといわざるを得ない。このことは,申立人が提出する甲号証は,
今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁
から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができることから
もいうことができる。(第1審判決9頁20行目から24行目まで)。
2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
(1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決2頁7行目から14行目まで)
センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
道において,下り車線を走行してきた申立人運転の自動二輪車(被害車両)
と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,申立人が受傷した。本
件は,申立人が,相手方(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損害賠償
保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457円及び
これに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済みに至る
まで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
(2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2頁15行目から3頁2行目まで)
本件は,相手方(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道路
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交通法101条の規定に基づき申立人の運転免許証の有効期間の更新をする
に当たり,申立人に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行為が
あり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定して
その免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対し
に申立人は,申立人には安全運転義務違反の事実がないと主張して,本件更
新処分のうち,申立人か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一の2,
道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一般運
転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法であ
ると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
(3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1頁24行目から2頁12行目まで)
本件は,申立人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,申立人
所有の普通自動二輪車(以下「申立人車」という。)を運転中,大分県玖珠
郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付近路
上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こし,
これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁判所
平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗訴
し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香幹
子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
した違法があると主張して,相手方(国)に対し,国家賠償法第1条に基づ
き,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
れに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 本件(以下「第4訴訟」という。)は,申立人は,大分県玖珠郡内で交通事
故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察官が当該交通事故に関する事件の捜査
に当たり,実況見分調書の作成をしないまま放置するなどの違法行為をしたこ
12/21
とにより損害を被ったと主張し,上記違法行為が原因で交通事故の加害者に対
する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支払いを受けることができなかったこと
による損害(交通事故による損害)2557万8457円及び上記違法行為自
体による慰謝料442万1543円の合計3000万円の損害金のうちの一
部請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20
年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求めている(原判決2頁4行目から12行目まで)事案である。
4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法115条)。
5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),
神奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は
大分県(玖珠警察署)である。
6 申立人の請求は,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返しにすぎないとはい
えないといわざるを得ない。
7 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。
第4点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
民事訴訟法114条についての原判決の解釈の誤り
1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・イ,ウ)
(イ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにも
かわらず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
(ウ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
い写真を添付した。荷台から外されたはずの申立人の荷物が荷台にあること,
申立人車でない自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示が
あること,道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,
13/21
当時なかった里程標かあること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると
記載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付さ
れた写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。(第1審判決3頁
22行目から4頁6行目まで)。
2 申立人の請求原因(イ・ウ)について原判決の判断
原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所は,
実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自動車
が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いったん,
本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始された実
況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調書の内
容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施された実
況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,証拠により
本件事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ
瀬巡査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年1
0月7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実
施されたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではない
かと疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,
同一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理
解するのが自然であるとし,「申立人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
認めたこと,とりわけ,「申立人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,間ノ瀬巡査部長らが上記日時に実況
見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真についても,本件全証
14/21
拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めることはできないと判
断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,申立人が実況見
分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改ざ
んされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出したのに対し,申立人が
挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの問題や個人の主
観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざんがあったことを
疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示していること。)が認め
られる。
これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(第1
審判決7頁17行目から~8頁22行目まで)。
3 民事訴訟法114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過程
である判決理由中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明らか
にしている。
4 原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別件訴訟の判決
書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴
訟の判決理由中の事実判断および法適用であり,既判力が生じないことは明ら
かである。
5 申立人は,これらの別件訴訟の判決理由中の認定,判断を疑い,本件訴訟に
おいて,平成20年10月27日付け準備書面(2),平成20年10月27日付
け準備書面(3),平成21年1月7日付け準備書面(5)を提出し,実況見分調書
(甲7)の見分者,見分時間,調書添付の写真等の不真正につき弁論した。
6 申立人は,実況見分調書添付の写真(甲8)はすべて,平成11年10月7
日午後0時34から午後1時20分までの間には撮影されていないと主張し,
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争点として下記の10点をあげた。(上記準備書面(5)8頁)
第1点 申立人車の荷台に固縛された荷物(甲8①,②,③,④)
実況見分時には,申立人車の荷台に固縛された荷物はない。
第2点 自動二輪車のスポーク(甲8⑩,甲25,甲26,甲27)
写真(甲8⑩)に写っている自動二輪車(バイク)は,申立人車ではない。
第3点 間ノ瀬巡査部長に同行している自衛官(甲8①,⑦,⑩,⑪,⑫)
自衛隊が本件事故処理に関与している。
第4点 「徐行」の道路標示(甲8⑦,甲28)
この「徐行」の道路標示は事故当日には存在しない。
第5点 炊事車の衝突痕(甲8④,⑨,甲33⑩,⑪)
申立人車の前輪右側ホークと炊事車の右輪のホイールナットが接触した。
第6点 草地の上の自衛隊車(甲8⑤,⑥,⑦,⑧,⑨)
事故当日,本件自衛隊車が道路外に移動された事実はない。
第7点 KP34.9の里程標(甲8⑪,甲29)
この里程標は事故当日には存在しない。
第8点 KP34.9の警戒標識(甲8⑪,甲29・甲8⑩,甲27)」
この標識は北行きの車から真正面に見え,南行きの車からは見えない。
第9点 申立人車のタイヤ痕及び擦過痕(甲8⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)
道路面だけが写され,タイヤ痕,擦過痕及び測定基準が写っていない。
第10点 路面にかかれた「バイク」の文字及び記号(甲8⑮,⑯)
堀部警部補はこれらのマークについて言及していない。
7 第1審は争点整理手続きをとらず,人証を採用せず,実質審理を行わないま
ま,予告なしに弁論を終結した。
8 原審も人証申請を採用せず,相手方が欠席した第回2口頭弁論期日に,審理
不尽のまま,唐突に弁論を終結した。
9 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
16/21
決は破棄を免れない。
第5点 終局判決の手続き
民事訴訟法243条及び244条についての原判決の解釈の誤り
1 申立人は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
部ロろ係の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
審では人証申請をしないということでよいか。申立人;相手方の答弁書を待っ
ていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請したい。
裁判長;申立人は9月4日までに証拠申出書を,相手方はそれに対する意見が
あれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,との記載が
ある。
次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
(1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
(2) 相手方は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日まで
に堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が不
安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(相手方);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
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(3) 相手方は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の証
人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残ってい
ないことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
を提出する」と記載された。
(4) 申立人は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間ノ
瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12日
第4回口頭弁論期日に不採用とした。
(5) 相手方が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は提
出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,唐
突に弁論を終結した。
(6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
性」が重要な争点となっている。
(7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
(8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
(9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
に役立つ。
(10)第1審判決は,「原告(申立人)の請求は,その内容において,すでに提
起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
18/21
申立人が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,
その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出されたもの
と認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁20行
目から24行目)」と判示した。
(11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
相手方が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査部
長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
(12 )申立人が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
4 原審(第2審)において,申立人は平成21年9月4日に3名の証人(堀部
警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,相手方(被控訴人)
は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
相手方の意見書には,「記;控訴人(申立人)は,証明すべき事実として,
警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
あり,控訴人(申立人)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると考
える。」と記載されている。
申立人は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称する
書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関係
する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
訴人(申立人)のみで相手方(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,出
19/21
頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁論
終結,との記載がある。申立人が申請した3名の証人は必要性なしとして採用
されなかった。
次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
と記載されている。申立人は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
申立人が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長裁
判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
終局判決をする,と規定する。
「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
本件の場合,申立人が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の証
人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させたと
はいえず,申立人の弁論権を奪ったことになり,許されない。
申立人はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判所
としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を行
使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
20/21
できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
9 出頭当事者である申立人の申出がないのに,申立人の意向も聞かず弁論を
終結した原審の手続きは違法である。
10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。
以上
21/21
民事訴訟法115条についての原判決の解釈の誤り
1 原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
申立人の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返
しにすぎないといわざるを得ない。このことは,申立人が提出する甲号証は,
今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁
から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができることから
もいうことができる。(第1審判決9頁20行目から24行目まで)。
2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
(1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決2頁7行目から14行目まで)
センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
道において,下り車線を走行してきた申立人運転の自動二輪車(被害車両)
と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,申立人が受傷した。本
件は,申立人が,相手方(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損害賠償
保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457円及び
これに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済みに至る
まで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
(2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2頁15行目から3頁2行目まで)
本件は,相手方(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道路
11/21
交通法101条の規定に基づき申立人の運転免許証の有効期間の更新をする
に当たり,申立人に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行為が
あり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定して
その免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対し
に申立人は,申立人には安全運転義務違反の事実がないと主張して,本件更
新処分のうち,申立人か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一の2,
道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一般運
転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法であ
ると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
(3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1頁24行目から2頁12行目まで)
本件は,申立人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,申立人
所有の普通自動二輪車(以下「申立人車」という。)を運転中,大分県玖珠
郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付近路
上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こし,
これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁判所
平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗訴
し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香幹
子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
した違法があると主張して,相手方(国)に対し,国家賠償法第1条に基づ
き,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及びこ
れに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 本件(以下「第4訴訟」という。)は,申立人は,大分県玖珠郡内で交通事
故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警察官が当該交通事故に関する事件の捜査
に当たり,実況見分調書の作成をしないまま放置するなどの違法行為をしたこ
12/21
とにより損害を被ったと主張し,上記違法行為が原因で交通事故の加害者に対
する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その支払いを受けることができなかったこと
による損害(交通事故による損害)2557万8457円及び上記違法行為自
体による慰謝料442万1543円の合計3000万円の損害金のうちの一
部請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20
年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求めている(原判決2頁4行目から12行目まで)事案である。
4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法115条)。
5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),
神奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は
大分県(玖珠警察署)である。
6 申立人の請求は,すでに提起された3件の訴訟の蒸し返しにすぎないとはい
えないといわざるを得ない。
7 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。
第4点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
民事訴訟法114条についての原判決の解釈の誤り
1 請求原因(玖珠警察署警察官の違法行為・イ,ウ)
(イ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにも
かわらず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
(ウ)玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
い写真を添付した。荷台から外されたはずの申立人の荷物が荷台にあること,
申立人車でない自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示が
あること,道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,
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当時なかった里程標かあること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると
記載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付さ
れた写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。(第1審判決3頁
22行目から4頁6行目まで)。
2 申立人の請求原因(イ・ウ)について原判決の判断
原判決及び原判決の引用する第1審判決の判断は下記のとおりである。
証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所は,
実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自動車
が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いったん,
本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始された実
況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調書の内
容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施された実
況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,証拠により
本件事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ
瀬巡査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年1
0月7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実
施されたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではない
かと疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,
同一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理
解するのが自然であるとし,「申立人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
認めたこと,とりわけ,「申立人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,間ノ瀬巡査部長らが上記日時に実況
見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真についても,本件全証
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拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めることはできないと判
断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,申立人が実況見
分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでなくねつ造・改ざ
んされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出したのに対し,申立人が
挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの問題や個人の主
観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざんがあったことを
疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示していること。)が認め
られる。
これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(第1
審判決7頁17行目から~8頁22行目まで)。
3 民事訴訟法114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過程
である判決理由中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明らか
にしている。
4 原判決が証拠とする(甲50,55,58,59)はすべて別件訴訟の判決
書であり,原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴
訟の判決理由中の事実判断および法適用であり,既判力が生じないことは明ら
かである。
5 申立人は,これらの別件訴訟の判決理由中の認定,判断を疑い,本件訴訟に
おいて,平成20年10月27日付け準備書面(2),平成20年10月27日付
け準備書面(3),平成21年1月7日付け準備書面(5)を提出し,実況見分調書
(甲7)の見分者,見分時間,調書添付の写真等の不真正につき弁論した。
6 申立人は,実況見分調書添付の写真(甲8)はすべて,平成11年10月7
日午後0時34から午後1時20分までの間には撮影されていないと主張し,
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争点として下記の10点をあげた。(上記準備書面(5)8頁)
第1点 申立人車の荷台に固縛された荷物(甲8①,②,③,④)
実況見分時には,申立人車の荷台に固縛された荷物はない。
第2点 自動二輪車のスポーク(甲8⑩,甲25,甲26,甲27)
写真(甲8⑩)に写っている自動二輪車(バイク)は,申立人車ではない。
第3点 間ノ瀬巡査部長に同行している自衛官(甲8①,⑦,⑩,⑪,⑫)
自衛隊が本件事故処理に関与している。
第4点 「徐行」の道路標示(甲8⑦,甲28)
この「徐行」の道路標示は事故当日には存在しない。
第5点 炊事車の衝突痕(甲8④,⑨,甲33⑩,⑪)
申立人車の前輪右側ホークと炊事車の右輪のホイールナットが接触した。
第6点 草地の上の自衛隊車(甲8⑤,⑥,⑦,⑧,⑨)
事故当日,本件自衛隊車が道路外に移動された事実はない。
第7点 KP34.9の里程標(甲8⑪,甲29)
この里程標は事故当日には存在しない。
第8点 KP34.9の警戒標識(甲8⑪,甲29・甲8⑩,甲27)」
この標識は北行きの車から真正面に見え,南行きの車からは見えない。
第9点 申立人車のタイヤ痕及び擦過痕(甲8⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)
道路面だけが写され,タイヤ痕,擦過痕及び測定基準が写っていない。
第10点 路面にかかれた「バイク」の文字及び記号(甲8⑮,⑯)
堀部警部補はこれらのマークについて言及していない。
7 第1審は争点整理手続きをとらず,人証を採用せず,実質審理を行わないま
ま,予告なしに弁論を終結した。
8 原審も人証申請を採用せず,相手方が欠席した第回2口頭弁論期日に,審理
不尽のまま,唐突に弁論を終結した。
9 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
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決は破棄を免れない。
第5点 終局判決の手続き
民事訴訟法243条及び244条についての原判決の解釈の誤り
1 申立人は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
部ロろ係の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
審では人証申請をしないということでよいか。申立人;相手方の答弁書を待っ
ていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請したい。
裁判長;申立人は9月4日までに証拠申出書を,相手方はそれに対する意見が
あれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,との記載が
ある。
次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
(1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
(2) 相手方は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日まで
に堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が不
安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(相手方);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
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(3) 相手方は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の証
人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残ってい
ないことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
を提出する」と記載された。
(4) 申立人は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間ノ
瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12日
第4回口頭弁論期日に不採用とした。
(5) 相手方が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は提
出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,唐
突に弁論を終結した。
(6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
性」が重要な争点となっている。
(7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
(8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
(9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
に役立つ。
(10)第1審判決は,「原告(申立人)の請求は,その内容において,すでに提
起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
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申立人が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,
その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出されたもの
と認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁20行
目から24行目)」と判示した。
(11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
相手方が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査部
長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
(12 )申立人が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
4 原審(第2審)において,申立人は平成21年9月4日に3名の証人(堀部
警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,相手方(被控訴人)
は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
相手方の意見書には,「記;控訴人(申立人)は,証明すべき事実として,
警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
あり,控訴人(申立人)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると考
える。」と記載されている。
申立人は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称する
書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関係
する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
訴人(申立人)のみで相手方(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,出
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頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁論
終結,との記載がある。申立人が申請した3名の証人は必要性なしとして採用
されなかった。
次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
と記載されている。申立人は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
申立人が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長裁
判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
終局判決をする,と規定する。
「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
本件の場合,申立人が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の証
人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させたと
はいえず,申立人の弁論権を奪ったことになり,許されない。
申立人はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判所
としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を行
使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
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できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
9 出頭当事者である申立人の申出がないのに,申立人の意向も聞かず弁論を
終結した原審の手続きは違法である。
10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。
以上
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