再審訴状
平成22年5月18日
最高裁判所 御中
〒000-0000 横浜市00区00町00番00号
再審原告 出羽やるか 印
Tel /Fax 045-000-0000
〒870-8502 大分市大手町3丁目1番1号
再審被告 大分県
同代表者知事 広瀬勝貞
上告受理事件の決定に対する再審
貼用印紙 1500円
上記当事者間の最高裁判所第二小法廷平成22年(受)第561号上告受
理事件につき,同裁判所が平成22年4月23日に決定し,同日確定した決
定に対し再審の訴えを提起する。
目 次
第1 調書(決定)の表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁
第2 不服の申立に係る決定の表示
第3 再審の趣旨
第4 再審の理由
第1点 終局判決の手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3頁
第2点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件・・・・・・・・・・8頁
第3点 実況見分調書(甲7)作成の放置・・・・・・・・・・・13頁
第4点 再審原告が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・16頁
第5点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・19頁
第5 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21頁
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第1 調書(決定)(以下「原決定」という。)の表示
事件の表示:平成22年(受)第561号
決定日:平成22年4月23日
裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官:竹内行夫,裁判官:須藤正彦,:裁判官 千葉勝美
当事者:申立人 出羽やるか,相手方 大分県 同代表者知事 広瀬勝貞
原判決の表示:東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号(平成21
年11月26日判決)
第2 不服の申立に係る決定の表示
1 本件を上告審として受理しない。
2 申立費用は申立人の負担とする。
第3 再審の趣旨
1 原決定を取消し,事件の再審理を行う。
2 本件を上告審として受理する。
3 申立費用は再審被告の負担とする。
第4 再審の理由
1 民事訴訟法338条1項9号
判断遺脱を理由として不服を申し立てることのできない判決の判断遺脱の場
合にのみ,再審の訴えが認められるのであるから,このような判断遺脱を,当
事者が上訴により主張したりすることは不可能である。つまり,判断遺脱の再
審事由については,他の再審事由とは異なり,そもそも民訴338条1項但書
の適用はないわけである。(三谷忠之「民事再審の法理」215頁以下・法律文
化社・昭和63年)
2 以下に述べるとおり,本件は,民事訴訟法318条1項により受理すべき「そ
の他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」である。
3 事案の概要
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再審原告は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警
察官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況見分調書の作成をしな
いまま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記
違法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その
支払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)25
57万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合
計3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する
訴状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。(原判決2頁3行目から12
行目まで)。
原判決は,再審原告の本件控訴を棄却した。再審原告は,原判決を不服とし
て,上告受理の申立てをした。最高裁は上告審として受理しないと決定した。
再審原告は原決定に対し再審の訴えを提起した。これが本件である。
4 前提事実
再審原告が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,大分県玖珠郡九
重町大字湯坪の県道別府一の宮線水分起点34.9km先付近道路(以下「本
件道路」という。)を普通自動二輪車(再審原告車)で走行中,再審原告車と小
野寺秀和(小野寺)が運転する国(陸上自衛隊)所有の大型貨物自動車(自衛
隊車)に牽引されたフルトレーラーが衝突ないし接触する事故(本件事故)が
生じ,再審原告は,右肘脱臼開放骨折,右第3・4指中節骨骨折等の傷害を負
った。
再審原告は,本件事故後,熊本市にある熊本赤十字病院に搬送され,同月3
0日まで同病院に入院した。(再審原告の傷害につき,甲23)(第1審判決2
頁6行目から14行目まで)。
第1点 終局判決の手続き
原判決は民事訴訟法243条及び244条の規定に違背してなされたもの
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であって,その言渡し手続きに違法があるため破棄を免れない。
同244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭
せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当事者
の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることがで
きる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定す
る。
出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁
論を終結した原審の手続きは違法である。
1 再審原告は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
事部ロろ係の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
審では人証申請をしないということでよいか。再審原告;再審被告の答弁書を
待っていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請した
い。裁判長;再審原告は9月4日までに証拠申出書を,再審被告はそれに対す
る意見があれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,と
の記載がある。
次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
(1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
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して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
(2) 再審被告は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日ま
でに堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が
不安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(再審被告);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
(3) 再審被告は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の
証人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残って
いないことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
書を提出する」と記載された。
(4) 再審原告は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間
ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12
日第4回口頭弁論期日に不採用とした。
(5) 再審被告が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は
提出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,
弁論を終結した。
(6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
性」が重要な争点となっている。
(7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
(8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
(9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
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されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
に役立つ。
(10)第1審判決は,「原告(再審原告)の請求は,その内容において,すでに提
起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
再審原告が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除
き,その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出された
ものと認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁2
0行目から24行目)」と判示した。
(11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
再審被告が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査
部長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
(12)再審原告が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
4 原審(第2審)において,再審原告は平成21年9月4日に3名の証人(堀
部警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,再審被告(被控
訴人)は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
再審被告の意見書には,「記;控訴人(再審原告)は,証明すべき事実として,
警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
あり,控訴人(再審原告)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると
考える。」と記載されている。
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再審原告は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称す
る書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関
係する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
訴人(再審原告)のみで再審被告(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,
出頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁
論終結,との記載がある。再審原告が申請した3名の証人は必要性なしとして
採用されなかった。
次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
と記載されている。再審原告は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
再審原告が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長
裁判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
終局判決をする,と規定する。
「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
本件の場合,再審原告が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の
証人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させた
とはいえず,再審原告の弁論権を奪ったことになり,許されない。
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再審原告はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判
所としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を
行使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
9 出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁論
を終結した原審の手続きは違法である。
10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。
平成22年5月18日
最高裁判所 御中
〒000-0000 横浜市00区00町00番00号
再審原告 出羽やるか 印
Tel /Fax 045-000-0000
〒870-8502 大分市大手町3丁目1番1号
再審被告 大分県
同代表者知事 広瀬勝貞
上告受理事件の決定に対する再審
貼用印紙 1500円
上記当事者間の最高裁判所第二小法廷平成22年(受)第561号上告受
理事件につき,同裁判所が平成22年4月23日に決定し,同日確定した決
定に対し再審の訴えを提起する。
目 次
第1 調書(決定)の表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁
第2 不服の申立に係る決定の表示
第3 再審の趣旨
第4 再審の理由
第1点 終局判決の手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3頁
第2点 小野寺の業務上過失傷害等の被疑事件・・・・・・・・・・8頁
第3点 実況見分調書(甲7)作成の放置・・・・・・・・・・・13頁
第4点 再審原告が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・16頁
第5点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・19頁
第5 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21頁
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第1 調書(決定)(以下「原決定」という。)の表示
事件の表示:平成22年(受)第561号
決定日:平成22年4月23日
裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官:竹内行夫,裁判官:須藤正彦,:裁判官 千葉勝美
当事者:申立人 出羽やるか,相手方 大分県 同代表者知事 広瀬勝貞
原判決の表示:東京高等裁判所平成21年(ネ)第3294号(平成21
年11月26日判決)
第2 不服の申立に係る決定の表示
1 本件を上告審として受理しない。
2 申立費用は申立人の負担とする。
第3 再審の趣旨
1 原決定を取消し,事件の再審理を行う。
2 本件を上告審として受理する。
3 申立費用は再審被告の負担とする。
第4 再審の理由
1 民事訴訟法338条1項9号
判断遺脱を理由として不服を申し立てることのできない判決の判断遺脱の場
合にのみ,再審の訴えが認められるのであるから,このような判断遺脱を,当
事者が上訴により主張したりすることは不可能である。つまり,判断遺脱の再
審事由については,他の再審事由とは異なり,そもそも民訴338条1項但書
の適用はないわけである。(三谷忠之「民事再審の法理」215頁以下・法律文
化社・昭和63年)
2 以下に述べるとおり,本件は,民事訴訟法318条1項により受理すべき「そ
の他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」である。
3 事案の概要
2/22
再審原告は,大分県玖珠郡内で交通事故に遭遇し,大分県警察玖珠警察署警
察官が当該交通事故に関する事件の捜査に当たり,実況見分調書の作成をしな
いまま放置するなどの違法行為をしたことにより損害を被ったと主張し,上記
違法行為が原因で交通事故の加害者に対する損害賠償請求訴訟で敗訴し,その
支払を受けることができなかったことによる損害(交通事故による損害)25
57万8457円及び上記違法行為自体による慰謝料442万1543円の合
計3000万円の損害金のうちの一部請求として,10万円及びこれに対する
訴状送達の日の翌日である平成20年9月6日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。(原判決2頁3行目から12
行目まで)。
原判決は,再審原告の本件控訴を棄却した。再審原告は,原判決を不服とし
て,上告受理の申立てをした。最高裁は上告審として受理しないと決定した。
再審原告は原決定に対し再審の訴えを提起した。これが本件である。
4 前提事実
再審原告が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,大分県玖珠郡九
重町大字湯坪の県道別府一の宮線水分起点34.9km先付近道路(以下「本
件道路」という。)を普通自動二輪車(再審原告車)で走行中,再審原告車と小
野寺秀和(小野寺)が運転する国(陸上自衛隊)所有の大型貨物自動車(自衛
隊車)に牽引されたフルトレーラーが衝突ないし接触する事故(本件事故)が
生じ,再審原告は,右肘脱臼開放骨折,右第3・4指中節骨骨折等の傷害を負
った。
再審原告は,本件事故後,熊本市にある熊本赤十字病院に搬送され,同月3
0日まで同病院に入院した。(再審原告の傷害につき,甲23)(第1審判決2
頁6行目から14行目まで)。
第1点 終局判決の手続き
原判決は民事訴訟法243条及び244条の規定に違背してなされたもの
3/22
であって,その言渡し手続きに違法があるため破棄を免れない。
同244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭
せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当事者
の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることがで
きる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定す
る。
出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁
論を終結した原審の手続きは違法である。
1 再審原告は平成21年6月26日付け期日呼出状を東京高等裁判所第21民
事部ロろ係の書記官から受領した。裁判所のウェブサイトの東京高裁の裁判所
担当裁判官一覧の民事21部の欄には,渡邉等,橋本昌純,西口元,山口信恭
の記載があった。平成21年8月27日第1回口頭弁論調書には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官西口元,裁判官山口信恭の氏名が記載されている。
2 第1回口頭弁論調書の弁論の要領等の欄に,裁判長;控訴理由書13頁「第
5点」で原審(第1審)における人証についての経過が述べられているが,当
審では人証申請をしないということでよいか。再審原告;再審被告の答弁書を
待っていたのだが,受領したのは昨日であった。当審においても人証申請した
い。裁判長;再審原告は9月4日までに証拠申出書を,再審被告はそれに対す
る意見があれば意見書を9月18日までに,それぞれ提出すること。続行,と
の記載がある。
次回期日は,平成21年10月8日(口頭弁論)と指定された。
3 上記控訴理由書第5点は下記のとおりである。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
(1) 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人と
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して過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
(2) 再審被告は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日ま
でに堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が
不安定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(再審被告);次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
(3) 再審被告は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の
証人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残って
いないことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方;次回期日までにすべての書証及び証拠申出
書を提出する」と記載された。
(4) 再審原告は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間
ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,第1審は平成21年3月12
日第4回口頭弁論期日に不採用とした。
(5) 再審被告が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は
提出されないまま,第1審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,
弁論を終結した。
(6) 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」
はさておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実
性」が重要な争点となっている。
(7) 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠であ
る実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
(8) 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく真実発見,適正な裁判とい
う点でも効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
(9) 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用
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されている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判
所は事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の
認識をもて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実
に役立つ。
(10)第1審判決は,「原告(再審原告)の請求は,その内容において,すでに提
起された3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,
再審原告が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳述書(甲74)を除
き,その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の訴訟に提出された
ものと認めることができることからもいうことができる(第1審判決9頁2
0行目から24行目)」と判示した。
(11)前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
再審被告が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査
部長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
(12)再審原告が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため
申し出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
4 原審(第2審)において,再審原告は平成21年9月4日に3名の証人(堀
部警部補,間ノ瀬巡査部長及び早水巡査長)の証拠申出書を,再審被告(被控
訴人)は平成21年9月16日付けで,証拠申請に対する意見書を提出した。
再審被告の意見書には,「記;控訴人(再審原告)は,証明すべき事実として,
警察官に1ないし4の違法行為があるとして,本件事故の実況見分に関わった
当時の玖珠警察署の署員3名につき,証拠申請をなしている。1の事実は,甲
59の判決により,2,3の事実については,甲50,甲55,甲58,甲5
9の各判決により,4の事実については,甲49,甲50,甲55,甲58の
各判決により,いずれも玖珠警察署の警察官に違法行為がないことが明らかで
あり,控訴人(再審原告)申請の3名の証人としての採用は,不必要であると
考える。」と記載されている。
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再審原告は,平成21年10月8日,開廷前に,尋問事項書関係メモと称す
る書面を提出した。内容は事故当日及び事故後の関係者の動静の時系列表と関
係する証拠説明書で,証人尋問時使用を予定したものである。
5 平成21年10月8日第2回口頭弁論調書には,裁判長裁判官渡邉等,裁判
官橋本昌純及び裁判官山口信恭の氏名が記載されている。出頭した当事者は控
訴人(再審原告)のみで再審被告(被控訴人)は欠席した。弁論の要領等欄に,
出頭当事者;従前の口頭弁論の結果陳述,証拠関係別紙のとおり,裁判長;弁
論終結,との記載がある。再審原告が申請した3名の証人は必要性なしとして
採用されなかった。
次回期日は,平成21年11月26日(判決言渡し)と指定された。
6 平成21年11月26日第3回口頭弁論調書(判決言渡)には,裁判長裁判
官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官西口元の氏名が記載され,出頭した当事者
等は(なし),弁論の要領等の欄には,裁判長;判決原本に基づき判決言渡し,
と記載されている。再審原告は同日判決言渡し直後判決正本を受領した。
再審原告が申請し受領した平成21年12月3日付け判決謄本には,裁判長
裁判官渡邉等,裁判官橋本昌純,裁判官山口信恭の署名押印がある。
7 民事訴訟法243条1項は,裁判所は,訴訟が裁判をするのに熟したときは,
終局判決をする,と規定する。
「裁判をするのに熟したとき」とは,当事者にその「訴訟」に関して十分な
攻撃防御を展開させたが,もはやこれ以上それを展開させても,今までに得ら
れた審理の結果が覆るおそれがなくなったという心証(判断)に裁判官が到達
したとき,を指すといわれている(太田勝造「『訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルト
キ』について」特別講義民事訴訟法429頁以下・有斐閣・1988年)。
本件の場合,再審原告が提出した唯一の証拠調べ(玖珠警察署の署員3名の
証人申請)を採用せず,弁論を終結したことは,十分な攻撃防御を展開させた
とはいえず,再審原告の弁論権を奪ったことになり,許されない。
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再審原告はなお主張・立証を提出する意思を有しているのであるから,裁判
所としては,さらに攻撃防御方法提出の機会を与え,また必要に応じ釈明権を
行使して,事案の完全な解明に努めるべきである。
8 民事訴訟法244条は,裁判所は,当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日
に出頭せず,又は弁論をしないで退廷をした場合において,審理の現状及び当
事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは,終局判決をすることが
できる。ただし,当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず,又は弁論をしな
いで退廷をした場合には,出頭した相手方の申出があるときに限ると規定する。
そもそもの立証趣旨が不熱心訴訟に対する対処ということであるので,出頭
当事者が望んでいないのに,相手方の当事者が出頭しないことによって,出頭
している当事者の主張立証の機会を奪うのは不当なので,一方が出頭している
ときは,その当事者の意向を聞いて終結するかどうかをきめる,ということに
した(研究会新民事訴訟法318頁柳田幸三の発言・有斐閣1999)という。
9 出頭当事者である再審原告の申出がないのに,再審原告の意向も聞かず弁論
を終結した原審の手続きは違法である。
10 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決は破棄を免れない。