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猪熊隆之の観天望気講座149

2020-03-30 22:15:56 | 観天望気

北八ヶ岳空見ハイキングで見られた雲partⅠ

ご無沙汰しています。久しぶりの更新です。さて、記憶も薄れつつありますが(笑)、1月下旬に行われた毎日新聞旅行の北八ヶ岳空見ハイキングで見られた雲について解説していきます。

新宿駅西口を出発したときは、どんよりとした曇り空でした。中央道を西に進み、山間部に入ると、さらに雲が厚くなっていきます。

写真1 低い雲が垂れ込める中央道沿線の山(神奈川・山梨県境付近)

この日の天気図を見てみましょう。

図1 1月25日の地上天気図(気象庁提供のものに猪熊が作図)

この日は高気圧が沿海州にあり、関東地方では等圧線が東西に走って北東からの湿った空気が入りやすい形でした。関東地方から見て高気圧が北側にあるとき、太平洋からの湿った北東風が吹いて、関東平野ではどんよりとした曇り空になることが多くなります。この湿った空気が関東山地で上昇すると、雲がやや発達して山間部では弱い雨が降ることがあります。一方、山を越えると風は吹き降ろしていきます。空気は下に降りていくと温まって乾燥していくため、雲は消えていきます(図2参照)。また、上空の風が弱いときには吹き降ろしの風が発生しませんが、その場合でも関東山地が湿った空気の侵入を防いでくれるので、甲府盆地では晴れることが多くなります。

図2 湿った北東風が吹くときの関東平野から甲府盆地にかけての天気(山岳気象大全より)

この原理で行くと、この日は関東山地の下をくぐる笹子トンネルを抜ければ、青空が広がるはずでした。ところが実際には空は明るくなって、青空も一部見えだしましたが、層積雲(そうせきうん、別名うね雲)が広がっていました。

写真2 トンネルを抜けても曇り空

この理由は天気図からだと読み取れませんが、雲を見ると、太平洋(駿河湾)から富士川に沿って湿った空気が入ってきたことが分かります。

一方、湿った空気は高い山を越えることはできませんので、山の風下側では天気が良くなります。北杜市に入ると、鳳凰三山が富士川からの湿った空気を遮るため、晴れてきました(写真3)。

写真3 北杜市から富士川下流方面を見た空

また、諏訪方面に向かうと、今度は別の雲が現れてきました。写真4を見ると、前方に低い(灰色の)帯状の雲が広がっています。これは天竜川に沿って入ってきた湿った空気が作り出した雲です。また、その上方にはカモメのような雲がいくつか並んでいることが分かります。ここは、山の間を抜けてきた湿った空気が作った雲で、山の間を通る間に湿った空気が弱められるため、雲は途切れ途切れになっています。また、山を越えて空気が波を打っているので、カモメのような形状になっているのです。

写真4 天竜川に沿って入る湿った空気によってできた雲

この状況は、地図を見ると良く分かりますね。地図とにらめっこしながら、空を見ると答えが出てくることがあります。

図3 関東平野~諏訪盆地周辺の地図

登山口に到着する前に既にお腹いっぱいになりましたか(笑)?次回は登山中に見られた雲についての解説です。

文、図(気象庁提供、山岳気象大全から引用のものを除く)、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 


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