山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座136

2019-08-05 11:48:38 | 観天望気

~霧ヶ峰で見られた雲partⅠ~

空とアルプスの大展望台、霧ヶ峰で空見ハイキングをおこないました。霧ヶ峰は、太平洋と日本海を分ける中央分水嶺にあたり、両方からの湿った空気がぶつかり合う場所にあるため、天気を勉強したり、雲を見るのには絶好の場所です。

このときは、台風接近が予想されており、気象庁や民間気象会社の天気予報では悪天予報でしたが、ヤマテンではそこまで悪くならないと予想、旅行会社とも相談してツアーを予定通り、催行しました。登山中の天候リスクを想定するためには、まず登山前に天気図をチェックすることです。ということで、登山前日に確認した、登山1日目の予想天気図を見てみましょう。

図1 登山前日に確認した登山1日目の予想天気図

図1を見ると、梅雨前線が新潟~福島付近にあり、霧ヶ峰は前線に向かって南から湿った空気が入りやすい形です。山の天気は、海側から風が吹くときに崩れるという特徴があります。そこで、

1.地図から目的の山と海との位置関係を調べる

2.天気図から風向を調べる

ことが大切になります。まずは、地図から霧ヶ峰と海との位置関係を確認しましょう。

図2 霧ヶ峰周辺の地形(作図:猪熊隆之)

ご存じの通り、霧ヶ峰は日本海からも太平洋からも離れており、それらの中間に位置します。したがって、湿った空気は海に近い山よりは入って来にくく、周辺の盆地は日照時間が多い土地として知られています。しかしながら、山では湿った空気が上昇すると雲ができやすく、「霧ヶ峰」の名前の通り、霧がかかりやすい山でもあります。それは、海から遠くても、湿った空気が大きな川や谷に沿って内陸に入ってくるからです。太平洋からは天竜川に沿って湿った空気が流れ込み、それがまともにぶつかるのが霧ヶ峰付近ということになります。また、逆に日本海からは千曲川に沿って湿った空気が入り、それが長野盆地で犀川と千曲川に分かれ、犀川の方は松本から塩尻を越えて、諏訪盆地と松本盆地の境界にある塩嶺峠で、南の天竜川方面から入った空気とぶつかります。一方、もうひとつは千曲川に沿って上田方面から南下し、和田峠付近で諏訪側からの空気とぶつかります。これらの場所は風と風がぶつかり合って上昇気流が起きるため、雲が発生しやすく、雷の名所としても知られています。

ということで、霧ヶ峰では

1.天竜川に沿って南南西の風が吹くときに湿った空気が入りやすい

2.千曲側に沿って北寄りの風が吹くときに湿った空気が入りやすい

上記の2つの風向が雲を発生させやすいということになります。

それでは、天気図から風向を調べましょう。風は、気圧が高い方から低い方へ吹くという性質があります。そこで、天気図上で高気圧と低気圧を探します。天気図1の場合、台風が九州の北西海上にあり、高気圧が日本の南東海上とカムチャッカの東海上にあります(この天気図上には書かれていません)。つまり、日本列島の東の方ほど気圧が高く、西の方ほど気圧が低くなっています。そのため、風は気圧が高い東の方から、気圧が低い西の方へと吹いていきます。しかしながら、この風は地球の自転の影響で、90度右に向きを変えて南から北へと吹きます。つまり、日本列島付近では南風が吹いているということです。

あるいは、高気圧や低気圧の周辺ではそれぞれ時計周り、反時計周りに、なおかつ等圧線にほぼ平行に風が吹いている、と考えていただいても結構です。もう少し詳しい風向の調べ方は、山岳気象大全第2章をご参照いただくか、ヤマテン主催の気象講座で説明します。

天気図1から南風が吹いていることが分かります。南南西の風向に近く、天竜川に沿って太平洋からの湿った空気が入りやすい形です。

写真1 八島ヶ原湿原付近で見られた雲

実際、写真1を見ると、天竜川からの湿った空気(写真の左側)が霧ヶ峰~美ヶ原の中央分水嶺の山で上昇し、雲を発生させています。それが写真2(下)のように、山を越えると、蒸発している様子が分かります。山を越えた空気は下降していき、空気が次第に乾燥していくことや、湿った空気が中央分水嶺の山並みに遮られて、反対側(北側)では比較的空気が乾いているため、乾いた空気に接して雲が蒸発するためです。

写真2 中央分水嶺を越えて消えていく雲

さて、この日は夕方になって湿った空気の入り込みが弱まる予想でした。したがって、運が良ければ夕方になって晴れ間が出るかなー、と思っていましたが、そうはなりませんでした。写真1や2で見られた低い雲は消えていきましたが、中層(上空3~7km)の雲が厚みを増し、別の要因で雨がポツリポツリと降り出しました。このように、天気図から予想できない現象が起きることもあります。その場合は、雲を観察して事前の予想を修正していきましょう。

写真3 雨が降り出す直前の雲

写真3を見てください。空一面を一様に覆う雲があります。高層雲(こうそううん)です。高層雲が薄いときは、太陽が透けて見えるため、おぼろ雲と呼ばれますが、雲が濃くなると太陽が見えません。そのようなときは、雨が近い証拠です。さらに、写真3の破線部分のように、空が白くかすんだように見えるとき、その場所では雨が降っています。見えている山並みは中央アルプスで霧ヶ峰の南西方向です。南西から風が吹いているときは、この雨がやってきます。このときは、地上では先ほど天気図で調べた通り、南寄りの風でしたが、この雲がある高度では南西風でした。そのため、まもなくこの辺りでも雨が降り出しました。

ただし、このときの雨は弱いものでした。雲が一様で、ムラのない場合は雨が降ってもシトシトとした雨で、非常に激しく降ったり、雷を伴うリスクはほとんどありません。そう考えると慌てずに行動できますね。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 


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