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諏訪大社下社春宮 社殿(幣拝殿 東宝殿 西宝殿)🙂😐😐祭神が「春宮」「秋宮」を半年毎に遷座する神社

2020-08-29 16:00:00 | 神社仏閣


「諏訪大社下社秋宮(すわたいしゃ しもしゃ あきみや)」から徒歩約20分、西に「砥川(とがわ)」が流れる「下諏訪町大門」で、「下社」最初の遷座地とされる地に鎮まるのが「諏訪大社下社春宮(すわたいしゃ しもしゃ はるみや)」だ。
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国道20号線信号交差点「春宮大門」から「大鳥居」に至る道路は、かつて「下社春宮」の専用道路であり「流鏑馬(やぶさめ)」の馬場で、「御手洗川」に架かる鎌倉時代の様式による「下馬橋(げばばし)」は、「諏訪大社下社」で最も古い室町時代の建物だという。
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社殿は、地元宮大工の大隅流「柴宮/伊藤長左衛門矩重(のりしげ)」(1747/延享4年~1800/寛政12年)が「春宮」を、立川流初代「立川和四郎(たてかわわしろう)富棟(とみむね)」(1744/延享元年~1807/文化4年)が「秋宮」を、同じ図面で請け負って、技を競ったといわれる。「上社前宮」以外の「諏訪大社」に本殿はなく、原始信仰の姿を伝えるとも言われるが、「春宮」「秋宮」に大きさの違いはあっても、同格の両者は基本的に同じ構造だ。
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「杉の木」を御神木とする「春宮」の主祭神は、神話「国譲り」で「建御雷神(たけみかづちのかみ)/建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)」に敗れて、「州羽の海」に逃げたとされる「大国主神(おおくにぬしのかみ)」次子で、「八重事代主神(やえことしろぬしのかみ)」弟「建御名方神(たけみなかたのかみ)」の妃神「八坂刀賣神(やさかとめのかみ)」だが、「大国主神」長子で出雲系の神でありながら、娘が「神武天皇」皇后となっている大和朝廷との縁が深い神「八重事代主神」が合祀されている。
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その「下社」の祭神は、2月から7月までは「春宮」に鎮まり、8月1日の「御舟祭(おふねまつり)」で「秋宮」に遷座して、翌年2月1日「遷座祭」で再び「春宮」に帰座するという半年ごとに遷座する神だ。
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「諏訪明神」の「吾に体無し、汝を以て体と為す」なる宣布が、「神体は大祝(おおほうり)」としたというが、「上社」の「諏訪(すわ)氏」は室町期に祭政分離があり、惣領家は「上原城」で政治を、大祝家は「前宮神殿(ごうどの)」で祭祀を掌握したが、後に両者間で起きた争いに乗じて、「下社」大祝「金刺(かなさし)氏」が惣領家に攻め入るも、逆襲されて滅亡したという。以来「金刺氏」に代わって「武居(たけい)氏」から大祝が出ていたが、明治以降は氏族の世襲が廃止され祭祀には関わることがなくなって現在に至っているという。
 ❖ 幣拝殿  祭祀・拝礼を行うための中央の二重楼門づくりの社殿を「幣拝殿」、左右を「片拝殿」という。1578(天正6)年に「下馬橋」とともに造営された記録があるというが、1780(安永9)年に造られた現在の建物は、1983(昭和58)年に国の重要文化財に指定されている
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完成への顛末については、諏訪郡桑原村(現在の諏訪市)生まれの立川流(たてかわりゅう)初代「立川和四郎富棟」が、「下社秋宮」社殿を請け負うことを知り、諏訪郡普門寺村(現在の諏訪市)生まれの大隅(おおすみ)流「柴宮/伊藤長左衛門矩重」は、不足分は自分で建立のための寄付を募る「勧化(かんげ)」するとして、「下社秋宮」と同じ図面により、採算を度外視して請け負ったという。地元を代表する大工の面目をかけた競い合いのなかで、華麗な彫刻の施された社殿が完成したと、今に語り継がれる。
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「幣拝殿(へいはいでん)」と「左右片拝殿」の形式は、「諏訪大社上社本宮」の配置と類似するが、参詣者が神前に奉献する「幣帛(へいはく)」を捧げる社殿「幣殿」と、拝礼を行うための社殿「拝殿」が、一棟の楼門形式になっているのは「下社」独自の形式という。「左右片拝殿」は「片流招屋造(かたながれまねきやづくり)」で、屋根が正面側に長く裏面側は短くなっていて三面は吹き放ちだ。「幣拝殿」正面下から上層に向かって水と空と地の構成で、牡丹・獅子・麒麟・龍・鶴と様々な彫刻が配置される。内側の桁には守護龍、両脇羽目に雌雄鶏、欄干には獅子の彫刻があって、これもまた必見といえる
 ❖ 東宝殿 西宝殿  「諏訪大社下社春宮」「幣拝殿」奥に、並列して「東宝殿」「西宝殿」の2棟がある。「御宝殿」は申寅年6年毎の式年造営で交互に建て替えられるので、それぞれ12年毎に建て替えられていることになるが、御造営は前年11月頃から解体作業を始め、「御柱」里曳き前夜に神霊を移す「還座(せんざ)」の儀を行っているという。ただ、現在は新築ではなく、一部の改築にとどまることが多いという。
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新「御宝殿」に還る神事「宝殿遷座祭」は、かつては深夜に行われたという闇の中の神事だが、現在は20時頃から明かりを消して行われるという。なお、「本殿」をもたない「諏訪大社下社春宮」で、御神木の杉を近接して戴いている「御宝殿」に、参詣者が直接接する機会を得ることはできない。