私の大工仕事の師匠である数奇屋大工の寺平さんがお亡くなりになりました。
初めてお会いしたのは修行中、安諸親方と編笠門の作り方を伺いに行った時。
修行1年目で、ノミ3本くらいしか持っていなかった小僧に対して口も聞いてもらえなかったことを覚えている。
初めて任された現場で、初めての庭門。
25歳の時。
とにかくがむしゃらに手元をやりました。
製材から仕込み、手斧の振るい方、墨の付け方から刃物の研ぎ、ノコの挽き方、正確な墨がつけられるよう鉛筆の削り方まで。
「なんだ、お前のノコは曲がって切れんのか?貸してみろ…切れんじゃねーか!姿勢が曲がってんだよ。」
「おい、ノミ研いでみろ。…そんなんで刃がつくわけねーだろ!貸してみろ。こーやんだよ。」
「削りすぎんなよ、墨残せよ。…墨残せって言ってんだろ!削りすぎだよ!」
よく怒られたっけな。
とにかく仕事が正確で早い。
腕のいい数奇屋大工。
頭の回転がめちゃくちゃ早い。
口数も少なく、あまり笑わない。黙っていると怖い。笑
難しい方だが、めちゃくちゃ優しい。
絵描きで、うちの油絵も寺平さんが描いたものを頂いた。個展も開くほど。
フランス画家のマティスが好きで、お洒落。
「 茶室を建てても、親方の作品になっちまうが絵は自分の作品だ。」
印象深い言葉だったな。
そして、最期に一緒に作ったのが湯島天神の雁行の土橋。
橋脚、橋桁を作ったところで来て頂き、早々に指導を受ける。
「橋桁ここまで刻まなくていい。あとで調整できる。」
「ホゾもここまでつけなくていい。大変だったろ?こうしておけば大丈夫。」
「ここは大事だぞ、力が掛かるから少し太めの丸太を使おう。ほぞはこの向きでな。」
…もう会えないんだな。
この間、頂いたノミとカンナを綺麗に研ぎました。
一緒に作ったカンナ…
生涯大事に使います!
ここに、心よりご冥福をお祈りいたします。
寺平さん、ありがとうございました。
ゆっくりお休みください。拝


