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矢嶋武弘・Takehiroの部屋

全ては 必然である 神すなわち自然 自然すなわち神

参議院の廃止は当然である

2025年05月05日 13時39分06秒 | 政治・外交・防衛

〈2012年に書いた以下の記事を一部修正して復刻します。〉

戦前、日本には衆議院と貴族院があったが、敗戦後、GHQ(連合軍総司令部)が日本国憲法の草案を作った時には、新しい日本は一院制が好ましいという方針が打ち出された。マッカーサー元帥もそういう意向だったという。 これは「史録 日本国憲法」(児島襄著 文春文庫)に出ている話だ。ところが、GHQが日本側と折衝すると、日本側は二院制が良いと主張した。折衝の詳しいことは分からないが、結局、GHQの方が妥協して、新憲法の案文では二院制が採用されることになった。それで衆議院と参議院が誕生したのだ。
歴史的な経緯をもう少し述べると、私らが子供の頃は「衆議院は政党で、参議院は人物で選ぼう」と、学校で教わったものである。 私はそれが正しいと永い間信じていた。だから、参議院は“良識の府”と呼ばれ、政党に拘束されない「緑風会」というものまで出来たのである。
ところが、政治はそんな生易しいものではない。参議院もいつしか“政党化”され、やがて緑風会も消滅したのである。つまり、皮肉な言い方をすれば良識の府でなくなったのだ。 そうなると、参議院はすっかり面目を失い、いつしか衆議院の“カーボンコピー”と呼ばれるようになった。それでは良くないと、参議院側もいろいろ改革に取り組んだのだが、大した成果をあげられず今日に至っている。
したがって、参議院は国費を物凄く使うから無駄であり、時間がかかるだけだから廃止しろという声が出てきて当然である。 私も昔、テレビ局の政治部記者を永い間やったことがあるが、法案が衆議院を通過して参議院に回ると、とたんにやる気がなくなった。なぜなら、衆議院と同じような審議を1カ月ぐらい延々とやるのだ。“二番煎じ”もいいところである。 ニュースにはほとんどならない。他にニュースがない時に、せいぜい「穴埋め」になった程度だ。あとは法案が成立したり、与党側が強行採決をする時にニュースになったぐらいだ。もちろん、参議院先議の法案もあるが、数はとても少ない。だから、ある政党関係者に「参議院なんて要らないだろう」と言ったことがあるが、その人は「う~む」と唸ったまま何も答えなかった。
 
参議院の廃止と言うが、要は「一院制」のことである。本当に「二院制」が必要であればそれも構わないが、日本の場合は戦前の貴族院を引きずった形で残っている。いわば旧制度の亡霊、残滓(ざんし)みたいなものだ。
日本の国会は二院制だが、地方議会は全て“一院制”である。都道府県議会も市町村議会ももちろん一つしかない。それは当たり前と思うかもしれないが、本当に必要であれば都道府県議会もそれぞれ二つあっても良いのだ! 例えば上院と下院のように。しかし、そんなことを望む人はまずいないだろう。
国会だけが特別視されているからか、貴族院の残影なのか日本は二院制をとっているが、世界の大勢は一院制が圧倒的に多い。列国議会同盟に所属する178カ国のうち、64%が一院制である(残り36%が二院制。)。ただし「連邦制国家」の場合はほとんどが二院制だ。もちろん、日本は連邦制国家ではない。
話が少し逸れたが、仮に参議院が廃止されて一院制になったとしたら、衆議院(私はこれを「国民議会」と呼びたい)は、もっと議員定数を増やしても良いではないか。ただし、今より人数が増えるから議員の報酬はもっと低く抑えるべきだ。
一院制の場合は衆参両院の統合など、いろいろな形が想定されるだろう。しかし、まだ決まったわけではないから予測、推測は止めておこう。 この問題については話したいことが色々あるので、続編を書くことにしたい。

参議院本会議場

参議院が国政に混乱をもたらすとはよく言われるが、別にこれは「衆参ねじれ」状態を指すとは思わない。二院制であれば「ねじれ状態」が起きても当然であり、むしろ衆議院での政権与党の暴走に歯止めをかける効果もあるのだ。二院制論者はよくそう言うが、私も同感である。
そんな「ねじれ」のことではなく、もっと大きな問題がある。参議院には「解散」がないということだ。つまり、議員が6年間 身分を保証されている。それは一見良いかもしれないが、衆議院に比べると余りにも“特権階級化”していると言えよう。
その好例が実際に起きた。2005年の夏、時の小泉純一郎内閣は「郵政民営化法案」を成立させるため全力を挙げていた。いわゆる「郵政法案」は衆議院で可決され、参議院に送られた。ところが、郵政民営化に反対する自民党議員が造反し、参議院では郵政法案が否決され廃案になったのである。
その時、小泉総理は何をしたか。覚えている人も多いだろう。「国民に信を問う」と言って衆議院を解散したのだ。おかしいとは思わないか。 法案を否決したのは参議院なのに、法案を可決した衆議院を解散したのだ!
こんな道理に合わない話はない。本来なら法案を否決した参議院を解散すべきだが、日本国憲法には参議院の解散はない。したがって、衆議院を解散したというのだ。つまり、衆議院は参議院の“とばっちり”を受けたのである。国政混乱の象徴的な出来事だった。

この「郵政解散」については、ごく一部の新聞が道理に合わないと批判した。当然である。小泉内閣でも島村農水相が解散の署名を拒否し、罷免されたほどだ。 小泉総理は自ら農水相を兼務し解散へ突っ走ったが、これは前代未聞の事である。ところが、ほとんどのマスコミはこれを問題視せず、郵政解散の報道に夢中になったのだ。
この解散を「7条解散」と言って、内閣の決定でいつでも衆議院を解散できるという憲法7条に基づくものだ。これを正しくないと言う学者もいるが、別に違法ではない。過去にもしょっちゅうあった事だ。
余談になるが、この郵政解散・総選挙は異常だった。小泉総理が繰り出す“刺客”と呼ばれる候補者にマスコミは目を奪われた。小池百合子氏に始まり最後は“ホリエモン”と呼ばれる有名人まで登場し、テレビなどは夢中で取材したのである。正に「小泉劇場」が花開いたのだ。総選挙の結果は“小泉自民党”が圧勝し、民主党は惨敗したのである。
あの時のことを覚えている人は多いだろう。あんな解散・総選挙はそれまでになかった。法案が参議院で否決されたから、それを可決した衆議院を解散するなど前代未聞の事である。 ところが、マスコミはこれをほとんど問題視せず、選挙報道に熱中したのだ。おかしいとは思わないか。

なんだかマスコミ批判になってしまったが、本題に戻ろう。問題は参議院である。郵政法案を否決するのは良いが、自分らは解散になることがないから勝手に行動できるのだ。いわば「象牙の塔」に籠って好き勝手にやっているようなものだ。 どうなろうとも、とばっちりを受けるのは衆議院だからだ。もし、参議院に解散があるなら、自民党議員も怖くなって造反しなかったかもしれない。
これほど国政を混乱させた事例はない。もちろん、小泉総理は万々歳だったかもしれないが(自民党も大勝して嬉しかっただろう)、参議院に解散がなく「特権階級化」しているのが最大の元凶である。
これには後日談がある。圧勝した小泉政権はもう一度、郵政改革法案を衆議院に提出した。もちろん賛成多数で可決され、参議院に送られた。再び参議院自民党の対応が注目されたが、今度は衆院選の「民意を尊重する」とか言って、法案を可決・成立させたのである。ところが、真意は違う。もう一度参議院で法案を否決したら、「参議院無用論」が起きると心配したからだ。つまり、二院制を維持するために、自らの信念を曲げて法案に賛成したのだろう。
参議院とはそんなものだ。衆議院の“二番煎じ”をやるだけでなく、“二度手間”をかけるためにあるようなものだ。 こんな参議院なんか要らない!(終わり)


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6 コメント

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同意です (なかやん)
2012-03-08 14:40:24
こんにちは
>真意は違う.もう1度参議院で法案を否決したら「参議院無用論」が起きると心配したからだ.つまり,2院制を維持するために自らの信念を曲げて法案に賛成したのだろう.

こう考える人も多かったですよね
同感です
返信する
参議院は無用の長物 (矢嶋武弘)
2012-03-08 16:02:09
なかやんさん、総選挙で民意が分かったから今度は法案に賛成しようというのは、何のために存在するのかはなはだ疑問ですね。
それなら、始めから存在しない方がすっきりします。つまり「無用の長物」ということでしょう。参議院は昔の貴族院ではありません。
返信する
ご無沙汰しております。 (琵琶)
2012-03-12 07:44:54
矢嶋さん、お早うございます。【2012-3-12】
遅くなりましたが、あさこハウス、支援ニュースNo10をお届けします。
矢嶋さんの取り組みを載せられなくてすみません。
ボストンのトンビ母さんとは、一日に何度も行き来しているくせに、所沢の矢嶋さんのところは10日間も失礼してしまいました。
サーバーが違うと、こうも不便でしょうか!よほど“エイッツ!”と思いきらないとまた後でと言うことになってしまいます。
結局、各サーバーの囲い込み作戦に乗じられていることになりますね!

この調子ですと、愚かな人間は、将来地球に陣取るYahoo軍と、月に陣取るAmeba軍が熾烈なサイバー攻撃をかけあうと言ううようなことになりかねませんね!

別件ですが、北海道は素敵ですさんからの転載記事を巡って、刀牙君が孤軍奮闘、昨夜だけで実に80コマのやり取りになりました。
一部には、DNAの違う刀牙君排除の動きもありますが、私は、むしろバージョンアップのチャンスととらえています。

今日からは新たに、瓦礫の現地一括処理か、全国分散処理かの公開討論を開始したところ、すでに、数人が参加していただいています。

この後、明日あたりからハシズムに対する賛否両論の公開討論を開始する予定です。彼の独裁的手法に対する評価はともかくも、首相公選制、参院廃止、道州制導入賛成のご意見をお持ちの矢嶋さんの、忌憚のないご意見を期待しております。

私のブログも、琵琶論調一色のガラパゴス化から、グローバリズムの世界に足を踏み出します。ただし、大企業優先のグローバリズムではなく、人類の普遍の知恵に基づくグローバリズムへ・・・。
ご支援よろしくお願いいたします。

●脱原発、あさこハウス支援通信No.10【2012-3-11】
転載元 ようこそ! 泰のブログ「あさこはうす」激励はがき № 10
http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/30299809.html
返信する
ご無沙汰しています。 (矢嶋武弘)
2012-03-12 09:49:03
琵琶さん、おはようございます。相変わらずのご活躍、なによりです。
小生の「あさこハウス」への取り組みは微々たるものなので、気にしないでください。
刃牙さんには、ブログ全面削除の時に貴重な助言をいただき、ずいぶん助かりました。

この「全面削除」は大変な被害だったので、明日から弁護士さんと相談していくことになりました。ブロガーの人権や著作権などを追求していこうと思います。これは、ブログ利用者にとって最も大切なことではないでしょうか。

ということで、ブロガーの人権問題などが小生の大きなテーマになりましたが、また機会を見て貴ブログにお邪魔したいと思います。
首相公選制などの改革は良いのですが、橋下氏のやり方は強権的で危険ですね。その点は大いに問題にすべきだと思います。
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そうかな? (ひろろ)
2012-05-20 01:11:16
みなさんは参院のいいところを考えた事がありますか?
参院には危険法案などを止める役割もあるのですよ?それを一概に無駄と言うのはおかしいです。
すこし見方を変えてみたらいかがですか?
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参議院の廃止を! (矢嶋武弘)
2012-05-20 06:27:13
ひろろさん、参議院にも一つぐらい良い所はあるかもしれません。
しかし、無駄な所が多過ぎます。また、参議院は戦前の「貴族院」の延長といった側面があるので、現代日本では有害なだけです。
国政を混乱させる要素が多過ぎるし、議員が完全に特権階級化しています。直ちに廃止すべきです。
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