憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邪宗の双神・・1   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:22:31 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「することが無いの」ニコニコと笑いながら八代神は、白峰に声をかけた。が、白峰は応える気力も失せている。天空界に引き戻されるように上がって来ると、白峰は十日ほどどっと、深い眠りの狭間に落ちた。十一日目に薄目を開けると八代神が覗き込んでいた。「何時までも、拗ねていてもしょうがなかろう?」丸で赤子か何かを諭すような物言いである。「判らぬでもないがの。千年はもう、取り返せぬ」「煩いの」「ほ、元々黒龍が物へ . . . 本文を読む

邪宗の双神・・2   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:22:18 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
ゆっくり歩んでくる、八代神を黒龍は見ている。八代神は、その黒龍に「長きものは、人の姿の方が楽のようじゃの?」と、声を懸けた。八代神の瞳の中で精かんな男がにこりと笑っている。その男は「天空界とは名ばかりじゃ。丸で化け物屋敷の様じゃ」と、言う。祭神と成った者達がやがては天空界に上がってくる。狸狐の類はいうまでもなく、申神に鬼神、はてには百足の神まで居るのである。「まあ、言うな。白峰も居るではないか?」 . . . 本文を読む

邪宗の双神・・3   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:22:03 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
正月を迎え正眼の元に政勝夫婦と白銅がやってきていた。久し振りに顔を合わせた白銅が「えらく色が黒うなりましたな」思わず政勝に言った。それもその筈で、政勝の代わりのかのとが「ああ、この人。一穂様の養育係りを仰せ付かりましたのよ。闊達でよう動きますそうです。馬も弓も剣に槍まで、その上に毎日の様に外歩きをなさいますに付いて歩く内にあのように・・・」「黒うなった」かのとの後を政勝が一言継いだ。一穂は主膳のた . . . 本文を読む

邪宗の双神・・4   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:21:50 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
明くる日の朝。城の中の拝謁の間である。主膳に呼ばれて四方を護る四人の陰陽師が顔を揃えた。と、言っても何かあったわけではない。歳の初めに、必ず主膳は四人を招くのである。四人の前に座ると主膳は深々と頭を下げた。「今年も都の守り、何卒宜しく願い奉る」其れだけであるのだが、主膳はその折り目筋目を崩す事なく、必ず頭を下げるのである。それがすむと「おお、そうじゃ」と、相好を崩す。一穂の事なのである。四人も揃う . . . 本文を読む

邪宗の双神・・5   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:21:37 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
澄明は白銅と並んで城を出た。ここ何度か白銅が城に上がって来ていたのは、主膳の認めを得る為ではあったが何よりも主膳が澄明が女であると言う事に得心がいかなかったせいである。確かに男にしてはやけに線が細い。顔付きも女子顔だとは思っていたと言うのではあるが陰陽事が女でも出きると言う事に主膳はどうしても納得ができない。切り落とされた鬼の男根を褒賞紙を通してではあるがむずと掴むのも見ているのである。女の何処に . . . 本文を読む

邪宗の双神・・6   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:21:23 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
政勝はその神社の境内の中に入ってみた。そこには、今、思ってみても妙な物ばかりがあった。石に刻み込まれた道祖神に過ぎないと思って何気なく目をやっていた政勝もうっと息を飲んだ。描かれた道祖神は向かい合う男女であったり、男同士、あるいは女同士であったのであるがそれが一様に互いの性器に手を延ばしている。慌てて辺りを見渡せばあちこちにそれと判る物が並び立っている。民間信仰の産土神に子を授かりたい夫婦が性器を . . . 本文を読む

邪宗の双神・・7   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:21:10 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
それで、澄明は改めて政勝に尋ねた。「社があったのですね?」政勝は澄明の問いに訝りもせず「おお。東北のほうに深く進んで行くと。そうじゃな、大きな椎がある。それを右手にして曲がって行くとすぐ、開けた場所に出てゆく、そこにある社じゃ」はっきり場所まで断言するのである。「大きな椎というのは?腰の高さの辺りに大きなうろのある椎の木ですか?」澄明の問いに政勝も「そうじゃ。人が抱かえたら二抱えはあるかも知れぬ。 . . . 本文を読む

邪宗の双神・・8   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:20:56 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
新羅を訪ねたものの、今更になくしたものに気がつかされた波陀羅は止めど無い涙と深い焦燥にかられ、再び一樹と比佐乃の姿を垣間見にいった。屋敷の中の気配を窺う内に波陀羅が知らされた事実は更なる驚愕を波陀羅に与えただけであった。怪死を遂げた二親の四十九日もすんでいない。が、取りたてて、二人が塞ぎ込んでいる様子もなく、夕刻の闇の中に二人のマントラを唱える声が途切れ途切れに聞こえて来ていた。庭先の石灯篭に身を . . . 本文を読む

邪宗の双神・・9   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:20:43 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
その波陀羅の姿に気が付いたのは政勝のいう社のある辺りに近づいて来た澄明と白銅であった。気配を殺しながら先を歩いていた白銅が澄明を押し留めた。澄明も白銅に引かれ押し黙ったまま木の幹の裏に身を潜めて白銅が見つけた者を木陰より窺い見た。「見かけぬ女鬼じゃな」澄明が白銅の潜めた声に、頷くと二人はそのまま女鬼を見詰めていた。やがてその女鬼はとぼとぼと森の奥に向かって歩き出して行った。飛び退ろうとしなかったの . . . 本文を読む

邪宗の双神・10   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:20:30 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
森羅山の北側の麓の木々が跳び退る足に蹴た繰られては大きく揺れ動いている。その木々を動かせているのは森羅山に入った澄明を探している伽羅である。澄明の筋書き通り事が運び天守閣から飛び降りた勢姫を受け止めた悪童丸はすでに一昨年の冬にてて親になっていたのであるが、それから一年すでに年が改まったというのに相変わらずの幼名のままでいるのである。その悪童丸に伽羅は澄明の一字を貰い受けて大人名に改名してやりたく思 . . . 本文を読む

邪宗の双神・11   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:20:16 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「伽羅。我は、邪鬼丸が死んだ事なぞとうに知っておる」「そうか。邪鬼丸は阿呆じゃったからとうとう、あのような・・・」何おか話そうとしている伽羅の言葉を波陀羅は遮った。「どう死んだかも、いつ死んだかも、我は知っている」「え?そう・・・」「そうじゃ。何故なら、我が邪鬼丸を殺した本人じゃ」波陀羅が告げた事実に、伽羅が猛り狂うて挑みかかって来るかと思っていた波陀羅は伽羅の撃を払おうと身構えていた。一度は新羅 . . . 本文を読む

邪宗の双神・12   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:20:02 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「呼びよるぞ」白峰の社の中から齢をおうた巫女が奇声を発して白峰が降り下る事を必死に祷っているのである。その姿の横には、慎ましく正座して白峰を今か今かと待ち受けている不知火がいる。何かあったらしいのを気にも留めずに、凡そ知らぬ気でいる白峰に八代神の方がじれて声をかけてきたのだが「聞こえておるわ」白峰も素っ気無い返事なのである。「行ってやらぬのか?あれはひのえの仲間であろう?」「ひのえではないわ」「あ . . . 本文を読む

邪宗の双神・13   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:19:49 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「やれぬわ」悲しき涙を拭いながら白峰は天空界に昇って行く。と、「なかなかの役者じゃのう」雲つく中に顔を出した白峰を引き上げるために八代神が手を差し延べて来た。白峰を引き上げる八代神の手に体を預け、白峰は天空界にたつと八代神に縋りついていた。「な・・・なんじゃ?」「何もかも、何もかも、白銅に盗り上げらるるわ」とうとう男が泣くを見せられる事になった八代神は肩に落ちる白峰の涙にこの場を立ち去るわけにも行 . . . 本文を読む

邪宗の双神・14   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:19:34 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
「只事では無いでないか。これはいかん。黒龍が所に言ってこねば、小言どころですまぬ」歩み寄ってくる八代神に聞き及びたい事が有るという顔で黒龍は待っていた。「なんぞききたいようじゃな」八代神も目敏い者である。「あ、いや。白峰がの」「気になるか?」白峰が降り下ったのに気がついていた黒龍も流石に、白峰の行く宛てを探るのは差し控えていたがやはり・・・気になるようであった。「ひのえが所じゃ」「な、何?」瞬時に . . . 本文を読む

邪宗の双神・15   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:19:21 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話
三日の開けるのを待つ間白峰のため息が何度つかれたか、八代神は『また、いうておる』そのため息に飽きれている。ため息を傍で聞かされるのでは八代神も敵わぬが、かといってひのえが傍にて護りおれば、いやでもそのため息の数も増えようというものである。『はあーま、それを見ているわしもため息をついておるのも、どうだかのう』ひのえ達への心配ばかりでなく八代神にため息までうつしてくれた白峰が家を並びて出てくるひのえと . . . 本文を読む