教育研究所レポートである。(6月12日分)
====================================
1 坪田先生の論文
全国学力調査B問題について、坪田先生は次のようにおっしゃっている。
「B問題は全体的に、根拠を説明することを要求している「活用力」を問うものが
多かった。・・・・・・(中略:奥野)・・・・・・・・・このような問題のどれも、
これまでにない論理的説明の力を求めていることがわかる。」
活用力を、「根拠を説明する力=論理的説明力」という見方をされている。
簡単に言えば、
「・・・・・だから、○○○になると考える。」
という理由をつけて考えを書くことである。
全ての教科で当てはまるかは分からないが、一つの視点になると考えた。
教育研究所としては、様々な教科で実践できるものを提案したい。
次に、前回提示された「活用力」についての記述<『算数授業研究』第56号(東洋館出版社)>から考えてみる。
2 社会科「奈良時代の文化」の授業から
○「活用」は、解決したい問題と関連のある既習の考え方を意識することから始まるのである。言い換えれば、「関連づけようとする見方」を育てていかなければ「活用力」は育たない。(山本良和氏)
先日の社会で、奈良時代の文化を授業した。
どの出版会社の教科書や資料集にも、正倉院の宝物がカラーで大きく載っている。
また、外国で発掘された出土品が載っている。ここは、関連させて扱うページである。
黒板に写真を写した。
先:「この写真をみて思ったことを書きなさい。」
子:「きれい」「ギターのようなものがある」
「コップがある」「おもしろい色をしている」・・・
先:正倉院には、このような宝物がおさめられています。
次に外国で発掘された出土品の写真を見せます。
この写真と比べて思ったことを書きなさい。」
と言って、写真を写した。
子:「似ています」「形が同じ」「模様が同じ」・・・
先:「奈良時代の正倉院におさめられているものと、外国で見つか
ったものがなぜ似ているのだと考えますか。
『・・・・だから似ている』とノートに書きなさい。」
と、自分の考えを理由と一緒に書かせた。
様々な視点の考えが出てきた。
子:「日本から外国に伝わったから似ている。」
「(日本から)外国に行った人たちが、まねをして日本で作っ
たから似ている。」
「外国から持ち帰ったから似ている。」
「(外国が)日本の文化をまねをしたから似ている。」
「ある国のものを、日本や他の国がまねをしたから似ている。」
「なるほどね。そういう風に考えたんだね。おもしろいね。」という感じで出てきた意見を全て認めた上で、西アジアから中国にのびる“シルクロード”の話をした。
大阪書籍の教科書には、大きな世界地図が載っていた。これが一番よいと思った。
奈良時代、日本が大陸の文化を吸収しようとする中で、西アジアや中国の文化や品物も一緒に伝わってきたことを押さえた。
「チェス」や「囲碁」「将棋」もシルクロードを伝わる中で変化していったのかもしれないね。という話に子どもたちは「なるほど」という表情で聞いていた。
論理的思考力を鍛える授業の一歩として以上のような実践を行った。
山本良和先生が言われている「関連づける」と少しニュアンスが違っていると思ったが、教師が、資料を“関連づける”ことも大切である。
そういう意味において、昨年度の研究で扱った「教科書の構成要素を関連づける」部分は、今年も生きてくるのではないだろうか。
3 「書く」ということ
前回、鈴木先生がおっしゃった。「書くということは、考えるということだ。」
考えながら書いていく。書いていく中で考える。このレポートと一緒だ。
「活用力」=「論理的説明力」という風に考えると、「書く(かせる)」作業は大きく影響してくるように思える。
国語においても、算数、社会、理科においても「どうしてそう思ったか。」を文字で書くことで思考が深まっていくのではないだろうか。
○単純に応用問題を与えて解かせることが「活用力」を育てることではない。(山本良和氏)
これは、同感である。
国語科と算数科で考えてみる。
① 数学科「三角形の合同」
中学校数学で、「三角形の合同を証明する」学習がある。教科書の問題であるから、応用問題というよりは基礎基本に近い。あの学習こそ書かせる中で考えを書く よい例だ。
辺AB=辺A’B’ 辺BC=辺B’C’ また、∠B=∠B’
2辺とその間の角がそれぞれ等しい。
だから三角形ABCと三角形A’B’C’は合同であるといえる。」
既習事項から、辺の長さが同じことを言い、
既習事項から、角の大きさが同じ事を言い、
既習事項の合同条件に当てはまるから合同である。と論理的に説明している。
② 国語科「ごんぎつね」
昨年度4年生の国語で授業をした。
ごんが兵十に打たれる場面である。
ごんを打ったとき、兵十はどこを見ましたか。
と発問した。
ノートチェックをしていくと、ほとんど間違いであった。
「ごんを見た。」のではない。教科書にはちゃんと書かれている。
チェックを受けた子どもたちは、教科書を真剣に読み取っていった。
「・・・・と書いているから、○○を見たと思います。」
という、型で書かせていった。
兵十は、見る場所を3回変えている。
はじめは「家の中(A)」、次に「くり(B)」,そして「ごん(C)」の順で見るの
である。
国語では、教科書の文章をしっかり読んで答えることが大切である。
“ヤマカン“ではなく、根拠を探して答えさせる。
そして、次の発問にはいる。
兵十の考えが今までと変わったのは,A,B,Cのどの時ですか。
兵十ははじめ、イタヅラぎつねよりも、家の中の様子が気がかりだったのだ。
かためて置いてあるくりを見て、兵十はごんがくりを持ってきていたことに気づく。
子どもたちに、自分の考えを書かせて発表させた。
これは討論になった。
結局、BとCの間で変わったのではないか。ということに落ち着いた。
山本良和先生が書かれている通り、応用力ではない。教科書教材でも論理的説明力は鍛えることができると考える。
====================================
====================================
1 坪田先生の論文
全国学力調査B問題について、坪田先生は次のようにおっしゃっている。
「B問題は全体的に、根拠を説明することを要求している「活用力」を問うものが
多かった。・・・・・・(中略:奥野)・・・・・・・・・このような問題のどれも、
これまでにない論理的説明の力を求めていることがわかる。」
活用力を、「根拠を説明する力=論理的説明力」という見方をされている。
簡単に言えば、
「・・・・・だから、○○○になると考える。」
という理由をつけて考えを書くことである。
全ての教科で当てはまるかは分からないが、一つの視点になると考えた。
教育研究所としては、様々な教科で実践できるものを提案したい。
次に、前回提示された「活用力」についての記述<『算数授業研究』第56号(東洋館出版社)>から考えてみる。
2 社会科「奈良時代の文化」の授業から
○「活用」は、解決したい問題と関連のある既習の考え方を意識することから始まるのである。言い換えれば、「関連づけようとする見方」を育てていかなければ「活用力」は育たない。(山本良和氏)
先日の社会で、奈良時代の文化を授業した。
どの出版会社の教科書や資料集にも、正倉院の宝物がカラーで大きく載っている。
また、外国で発掘された出土品が載っている。ここは、関連させて扱うページである。
黒板に写真を写した。
先:「この写真をみて思ったことを書きなさい。」
子:「きれい」「ギターのようなものがある」
「コップがある」「おもしろい色をしている」・・・
先:正倉院には、このような宝物がおさめられています。
次に外国で発掘された出土品の写真を見せます。
この写真と比べて思ったことを書きなさい。」
と言って、写真を写した。
子:「似ています」「形が同じ」「模様が同じ」・・・
先:「奈良時代の正倉院におさめられているものと、外国で見つか
ったものがなぜ似ているのだと考えますか。
『・・・・だから似ている』とノートに書きなさい。」
と、自分の考えを理由と一緒に書かせた。
様々な視点の考えが出てきた。
子:「日本から外国に伝わったから似ている。」
「(日本から)外国に行った人たちが、まねをして日本で作っ
たから似ている。」
「外国から持ち帰ったから似ている。」
「(外国が)日本の文化をまねをしたから似ている。」
「ある国のものを、日本や他の国がまねをしたから似ている。」
「なるほどね。そういう風に考えたんだね。おもしろいね。」という感じで出てきた意見を全て認めた上で、西アジアから中国にのびる“シルクロード”の話をした。
大阪書籍の教科書には、大きな世界地図が載っていた。これが一番よいと思った。
奈良時代、日本が大陸の文化を吸収しようとする中で、西アジアや中国の文化や品物も一緒に伝わってきたことを押さえた。
「チェス」や「囲碁」「将棋」もシルクロードを伝わる中で変化していったのかもしれないね。という話に子どもたちは「なるほど」という表情で聞いていた。
論理的思考力を鍛える授業の一歩として以上のような実践を行った。
山本良和先生が言われている「関連づける」と少しニュアンスが違っていると思ったが、教師が、資料を“関連づける”ことも大切である。
そういう意味において、昨年度の研究で扱った「教科書の構成要素を関連づける」部分は、今年も生きてくるのではないだろうか。
3 「書く」ということ
前回、鈴木先生がおっしゃった。「書くということは、考えるということだ。」
考えながら書いていく。書いていく中で考える。このレポートと一緒だ。
「活用力」=「論理的説明力」という風に考えると、「書く(かせる)」作業は大きく影響してくるように思える。
国語においても、算数、社会、理科においても「どうしてそう思ったか。」を文字で書くことで思考が深まっていくのではないだろうか。
○単純に応用問題を与えて解かせることが「活用力」を育てることではない。(山本良和氏)
これは、同感である。
国語科と算数科で考えてみる。
① 数学科「三角形の合同」
中学校数学で、「三角形の合同を証明する」学習がある。教科書の問題であるから、応用問題というよりは基礎基本に近い。あの学習こそ書かせる中で考えを書く よい例だ。
辺AB=辺A’B’ 辺BC=辺B’C’ また、∠B=∠B’
2辺とその間の角がそれぞれ等しい。
だから三角形ABCと三角形A’B’C’は合同であるといえる。」
既習事項から、辺の長さが同じことを言い、
既習事項から、角の大きさが同じ事を言い、
既習事項の合同条件に当てはまるから合同である。と論理的に説明している。
② 国語科「ごんぎつね」
昨年度4年生の国語で授業をした。
ごんが兵十に打たれる場面である。
ごんを打ったとき、兵十はどこを見ましたか。
と発問した。
ノートチェックをしていくと、ほとんど間違いであった。
「ごんを見た。」のではない。教科書にはちゃんと書かれている。
チェックを受けた子どもたちは、教科書を真剣に読み取っていった。
「・・・・と書いているから、○○を見たと思います。」
という、型で書かせていった。
兵十は、見る場所を3回変えている。
はじめは「家の中(A)」、次に「くり(B)」,そして「ごん(C)」の順で見るの
である。
国語では、教科書の文章をしっかり読んで答えることが大切である。
“ヤマカン“ではなく、根拠を探して答えさせる。
そして、次の発問にはいる。
兵十の考えが今までと変わったのは,A,B,Cのどの時ですか。
兵十ははじめ、イタヅラぎつねよりも、家の中の様子が気がかりだったのだ。
かためて置いてあるくりを見て、兵十はごんがくりを持ってきていたことに気づく。
子どもたちに、自分の考えを書かせて発表させた。
これは討論になった。
結局、BとCの間で変わったのではないか。ということに落ち着いた。
山本良和先生が書かれている通り、応用力ではない。教科書教材でも論理的説明力は鍛えることができると考える。
====================================