個性的な風貌と演技で戦後の日本映画を支え、14日死去した俳優の三國連太郎さんは、役作りのためには自分の歯さえ抜いてみせる求道的な姿勢で知られた。
“演技の鬼”に徹した90歳の生涯だった。
中国で敗戦を迎え、復員後、松竹のプロデューサーによるスカウトを機に、1951年公開の木下恵介監督「善魔」の主役に。このデビュー作で演じた新聞記者の役名がそのまま芸名の「三國連太郎」となった。
52年の渋谷実監督「本日休診」で、軍隊時代の悪夢に悩まされる青年を演じ、二枚目俳優から演技派へと脱皮。57年の家城巳代治監督「異母兄弟」では、30代半ばで老け役を演じるため、麻酔もかけず自ら多くの歯を抜いた。
「飢餓海峡」や「復讐するは我にあり」「利休」などでは人間の厳しさ、卑小さなど深い“業”を見事に表現した。「役者には、うまい、へたは関係ない。しいていえば、そこには“人間学”しかない」と本紙のインタビューに語り、ぎりぎりまで自分を追い詰め、人間としての経験を演技にこめた。
(2013年4月15日14時32分
読売新聞)
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