玉川上水の木漏れ日

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のブログ

《スクティ Sekti》への想い

2013年06月16日 | ワヤンよもやま話
 写真の子猫たちは6月の前半に庭の軒下から突如登場してきた子猫たちです。
 写真では3匹ですが、なんと、5匹も出てきました!!!
 その話はまた後日で、写真とは関係ない話をします。

 前回の練習から始めた、《スクティ Sekti》。
 この曲は、私がバリ島のタバナン県トゥンジュク村の人達と演奏した曲の中で一番弾いた曲だと思います。村で演奏していた当時は、ワヤン(影絵人形芝居)での演奏についていくことや、曲をに覚えることに夢中であり、あまり意識していませんでしたが、今振り返ると、この曲は結婚式やポトン・ギギ(歯を削る儀式)などの儀礼時はもちろん、ワヤンの前奏曲では必ず演奏していました。
影絵が始まる前に器楽曲を演奏するのですが、私がワヤンの演奏に参加していたときは、大曲を2曲演奏した後に、このスクティを必ず演奏していました。というのは、この曲、伸縮自在の曲なのです。大曲よりも演奏形式が少なく、長く演奏したければ伸ばせますし、早く終わらせたいときも短縮できる便利な曲です。
ちなみに、わが一座では、「大曲」のことは、演奏時間が長く、長いギノマン(曲の頭部分)があり、ギノマン以降からの曲の構成が3パターン以上から成り立っているような曲を言っています。
スクティは「中曲」の位置付け。長いギノマンがなく、2パターン以上から成り立っているような曲のことです。
大体ですが。。。

 日本の公演では、ダラン(人形遣い)は始めからスクリーン裏に演奏者と一緒にいてスタンバイしていますが、バリでは、最初、グンデル演奏者だけがいて器楽曲を弾いていました。私が演奏参加してた時は、ダランはスクティの曲の途中でスクリーン裏に登場していたことが多かったです。ダランが出そうなタイミングを見計らって、このスクティの曲を演奏していたように思いました。2曲目が終わった時点でダランがスクリーン裏に登場して来なかったら、スクティを弾き、ダランが現れるとスクティの曲が終わりに向かっていく、という感じでした。そして、この曲が終わると、ダランが人形の箱を3回叩き、人形達が箱から出てきて、ワヤンの世界の扉が開かれます。
人間の世界から人形の世界への境目、ダランと人形の存在を感じさせる曲です。
ワヤンの始まりではいろいろな曲を演奏しましたが、スクティはこんな感じで必ず演奏していたので、いつしか、「スクティ=ワヤンの曲」をいうイメージが強く着いてしまっていました。そして、ダランのテーマソングみないだなぁ~とも。

 ワヤンの始めにやる曲は彩りがある大曲が多いですが、それよりずっとシンプルで村の素朴な感じがし、私にとっては、なによりトゥンジュクのワヤンの雰囲気を思い出させてくれる特別な曲です。
今でもこの曲を弾くと、ダランが現れて、ワヤンの世界が始まる感じがしてワクワクします。
それもあり、この曲をいつか日本で演奏できるといいなぁ~、という想いを密かにずーっと思い続けて、苦節(?)××年。
やっと、みんなでこの曲に取り込むことができて、正直嬉しいです。(に)

最新の画像もっと見る