玉川上水の木漏れ日

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のブログ

■冬のランドアート

2016年02月16日 | アート
サイモン・ベックが成し遂げた驚くべきローテクアートをかみさんが教えてくれた。
どうもTVで紹介していたらしいが、教えてもらった写真を観る限りでは、ただひたすら雪の上を歩いてつくるランドアートらしい。
ま、美しいといえば美しいし、スケールアウトした驚異というものもあるが、それにしてもすべて人力というから忍耐強いとしかいいようがない。
「スノーアート」というくらいだから、バリではできないランドアートだね。














ナスカの地上絵というもの世界史上の謎とされているが、おそらくそれは古代信仰がらみではあろうが、案外、こういう地道なアーティスト(職人)?によるものなのかもしれない、とふとおもう。
ヘルムート・トリブッチの「蜃気楼文明」という本では、エジプトのピラミッドもナスカの地上絵もストーンサークルも、なぜつくられたかを探っていくとひとつの蜃気楼文明にたどり着くという。普段は俯瞰できないから、ある季節のある特別な一瞬だけの蜃気楼が立ち上げる幻影を信仰した人たちがいた、ということだ。
そういう意味では、この「スノーアート」も山沿いだからなんとか見られるが、いまなら全景はドローンの独壇場だ。誰にも内緒でやったら、雪上の謎の幾何学模様、とかなんとかいって、ミステリーになっていたかもしれないのにね。






そういえば、80年代のイギリスでは、「ミステリーサークル」という謎の現象が多発したことがあったね。
穀倉地域の穀物が幾何学形状に倒れる現象のことであるが、これ、誰がどう考えても人為的な造作だろう、とおもうけれど、当時は、宇宙人説や超常現象説などが信じられ(というか信じたかった?)、多くの謎が含まれていた。



どうもイギリス人というのは、こういうのが好きらしい。どこかミステリアスか、ブラックじゃないとウケないのだ。
タモリいわく、冗談というのは、90%の大まじめと10%のジョークのバランスがいいそうだが、これも、本気で懸命に汗水垂らし、ほぼ真剣なジョークを含んでいるとすれば、かなり質が高いアートだともいえる。


で、この「スノーアート」、最初におもいたって、アルプスでやったときは、せっかく夜通しかけて踏み固めたのに、翌朝は雪になってほとんど消えてしまったそうだが、ひとつだけいいのは、もしかしたらそういう「儚さ」、ではないだろうか・・・。その点、西洋人としてはなかなか潔い。
そう、これが将来的に物質的な財産になるというわけでもなく、雪が降ったり、風が吹いたりすれば、消えていくもの、そういう自然や摂理に逆らわないところがいいのだ。ま、「諸行無常」ということだろうか。
チベットの砂マンダラもそうだけれど、作ってしまって、祈りが終われば、すべて破壊され、川にながされてしまう。そこに固執はしない。無から生まれ無に帰る。闇から生まれ闇に消える。
物質はすべからく生成と消滅の裡にあり、自然はすべて移り変わっていく、「無常」のなかにあるのだ。




イギリスは、また、20世紀後半になって、次第にそういう境地に至るアーティストたちも増えていったといえるかもしれない。
オーガニックやベジタリアン、グリーン思想(エコ思想)に根付くアートは、ヨーロッパではなんといってもイギリスが先進国だった。80年代後半以降は、多くのアーティストたちがそれを体現した表現を生み出していったこともある。
もともとユートピア思想の発祥国ということもあり、ウイリアム・モリスを生んだ国でもある。ガーデニングの国でもあり、ハーブや薔薇の国でもある。
自然と美とライフスタイルはもともと近い国だったのだ。その代表的アートもあるけれど・・・、それはまた明日。(は/205)


最新の画像もっと見る