玉川上水の木漏れ日

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のブログ

■NYのレス・ポール

2015年06月19日 | その他


音楽つながりだけど、先日、これ、レスポールのシグニチャーモデルがオークションに出ていた。某大学教授でもないととても僕らの買えるようなものではないが、ま、ときどきこういうのも出る。


スタジオのレス・ポール


そういえば、2004年にたまたまニューヨークにいて、たまたま午後がオフになった日があって、たまたまその日が月曜だったので、これは神の思し召しとばかり、マンハッタンのイリジウム・ジャズ・クラブを予約したことがあった。ジュリアードのあるリンカーンセンターとタイムズ・スクエアの間くらいのブロードウエイである。
なぜ行きたかったかというと、なんとそこでは毎週月曜の夜に、伝説的ギタリスト、レス・ポールが現役でプレイしていたからである。すでに90近かったとおもう。
もう、誰がみても晩年だったということもあり、噂では、これが最後とばかりに、ジョージ・ベンソンやラリー・カールトンといった有名ミュージシャンもNYに来ればよく飛び入りしていたという。さすがレジェンドである。

ところが・・・それもつかの間、現場が不測の事態に落ち入り、結局、その夜はパーになってしまった。とある公務員と一緒だったが、別に僕のせいではなかったけれど、なにかときちんとしないといけないタイプ、付き合わないといけないはめになったのでした。




レス・ポールといえば、もちろんギタリストであるが、実はある種の発明実験家でもあった。
たとえば、いまでは当り前になっているエフェクターのディレイマシンの初期バージョンや、オーバーダビング方式の録音の装置をつくって、いろいろ実験したりと若い頃は随分勢力的だった。
勝手に試作ギターをつくって何度もギブソンに持ち込んだらしいが、その最終形態が、ギブソン初のソリッドギター「レスポール」である。オリジナルは1952年発売。その復刻のシグニチャーモデルなのだ。
50年代生産のこのレスポールモデルは、いまでは「オールド」と呼ばれ、1本500~800万くらいのかなりの高値で取引されている。オールドはピックアップだけでも、数十万円になっている。

ソリッドギターというのは、正確にはソリッドボディギターといって、それまでのギターはすべてアコースティックギターをモデルにしていたため、どうしても外枠をつくって中央かまたはバイオリンのようにサイドにサウンドホールを空けるというものだったが、エレキギターならそれが不用にできるとして開発されたものである。
要するに、音を拾う電気的なピックアップがあれば、ギターは板でいい、という発想だ。
それに対し、共鳴胴をもつエレキは、ホローギターといわれている。


で、その後、このレスポールというギターは、いろんなギタリストたちに愛用され、とくに60年代半ばにエリック・クラプトンが、マーシャルアンプとの組み合わせで、ゲインさえ上げれば簡単に歪み(ディストーション)音を出すことに効果をあげてからは、クラプトン、ジェフベック、ジミー・ペイジのいわゆる三大ギタリストだけでなく、多くのハードロック系ギタリストたちに愛用される楽器となった。

 
60年代のクリーム時代のエリック・クラプトン。右はレスポールとマーシャルのアンプの黄金コンビ。


とくにジミー・ペイジは、60年代はテレキャスターを使っていたが、70年以降はこのレスポールに変え、スタジオ録音のときはあまり使わなかったらしいが、ライヴでは多用した。
彼の代名詞ともなった通称No.と呼ばれるレスポールは、多くのロックファンのアイコンになった。58年製のオールドである。一説には、69年に、どうも、ジョー・ウォルシュから300ドルで譲り受けたものらという伝説的逸話が伝えられている。
そういえば、北京オリンピックの閉会式に出てきたときも、これを弾いていた。
ダランもこの世代なので、きっと懐かしいはず。
ジミーは、それに手を加え、ピックアップをクローバーに変え、ネックを薄く削り、ボリュームスイッチも改良して、21種類の音質を出せるギターにカスタマイズした。
このギター、もし売りに出されたら3千万はくだらないだろうといわれている。まあ、お金に換えられるものでもないですが。


ジミー・ペイジ。やっぱり衣装が派手過ぎ、ストラップ長過ぎ。


ま、そんなこんなですが、レスポールの生演奏を逃したのは実に悔やまれる。まあ、そんなこともあったのです。(は/114)


晩年のレス・ポール。なんか優しそうで幸せそう。