明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

安保法制論議について

2015-07-18 21:26:32 | 今日の話題
人と人とが議論しようとする場合、日本人は学校で議論の仕方を勉強してこなかったので、自分の考えをお互い言い合って、同じ意見なら盛り上がり違う意見なら平行線のままとなり噛み合わない。要は「議論」が出来ないのである。
本当の議論とは、与えられた命題を2人が力を合わせて解いていく共同作業の事を言う。だからどちらが勝ったの負けたのという事は無い。議論が終わり正しく結論が導かれれば、お互いが勝者である。これがわからずに最初から互いの結論の優劣を競うから、勝ち負けにこだわり議論を楽しめないのである。
そこで今回安保法制を例にとり、「議論」を楽しんでみよう。

まずは命題 = 自衛隊に集団的自衛権の武力行使を許可する。
それの論拠 = 中国や北朝鮮の脅威が増していて、今のままでは抑止力が不足である。

では一つずつ問題点を解いていこう。
(1)中国の増大する脅威に対し、今の安保では抑止力が足りないという。この場合、抑止力とは戦争するのを思い留まらせる力とする。では日本が武力行使できるようになると中国は尖閣を諦めるのか?つまり、余りふざけた真似をすると怪我するぜ、という脅しである。
現在のところ米国が一緒になって守っているから中国は怖くて手が出せないという状況ではない。中国は平気でどんどん入ってくる。では米国に一発ミサイルを撃ち込んでもらうというのはアリだろうか?いくら米国が戦争好きでも、さすがにそれは無いだろう。日本人は、安保があるから日本の安全は保障されていると思っているが、尖閣に中国軍が侵入してきた場合、まず日本が中国軍と戦い、それから米国が参加する。間違っても米国が先に中国軍を追い払ってくれる、ということはありえないのである。また現代の戦争では大国同士が直接戦うということはなく、どちらか片方は小国であるかまたは内戦を支援するという形をとる。そうなると尖閣では台湾との戦いが考えられるが、台湾の親日感情と嫌中意識を見る限り、それはしばらくありえない。あるとすれば、それは中国が台湾を併合した後である。だから米国は日本と中国が戦争になれば、集団的自衛権上日本を守って参戦できる。しかし中国は戦争をして米国を参加させたりするような無意味なことはしないと思う。挑発し続けて日本が先に手を出すのを待つだろう。
ところで、今の日本は武力行使出来ないから中国の船舶が尖閣に入ってきても出て行けと放送するだけで何も出来ないが、今回の安保法制改変で砲撃できるようにするというなら、ふざけた中国船に一泡吹かせる効果は期待できる。しかしこれは果たして集団的自衛権の武力行使にあたるだろうか?まだなにも戦闘行為はおきていないのである。まさに憲法の戦争放棄と真正面から抵触する。さらに、国際法上どちらの国の領土か確定していない島での威嚇砲撃など、安倍首相がロシアを非難したクリミア問題を持ち出すまでも無く、日本の正義を国際世論に主張することは難しい。尖閣を日本の国有とし実効支配する現状は、米国すらも日本国領土と認めていないのである。正に中国の思うツボではないか。
では中国側が侵入してきたということでは無く、現場レベルでの小競り合いを発端とする公海上の小規模な紛争はどうであろう。現在では釣船がウロチョロする程度だが、もっと大きな艦船がやってくるかもしれないし、もしかするとどちらからとも無く砲撃が始まり、幸運にも一隻くらい護衛艦が沈没するかもしれない。(どちらが先に撃ったかは、水掛け論である)。だが中国軍は日本を小国だという立場で考えているから、日本の方の被害が格段に大きくならないと戦いをとめられない。双方の被害が同程度のまま戦っているとあっという間に全面戦争の様相になりかねない。相手が日本である事がさらに中国を強硬にするだろう。しかも米国が参加すると小競り合いが小競り合いではなくなるので、むしろ参加せず戦闘の中止を求めて世論操作しようとするが、これは最終的に中国と仲直りする方向で調整するはずである。結局日本有利の形では中国を納得させられ無いのではないだろうか。
つまり、中国と米国が本格的な戦闘になるときは決定的な戦争で、ロシアも参加することになる。インド・パキスタン・イラン・もしかするとサウジアラビアも中国側に参加するかもしれない。こうなると中国は核爆弾も辞さないのでは無いか。というより米国には、この時点で何のメリットも無い。 相手は世界GNP第2位の国ではあるが、失うものは何もないし共倒れでもやるだろう。何しろ相手は憎っくき小日本である。いかにアメリカでも13億人を全員殺すことは経済上できやしない。それなら1億人の日本に負けてもらった方がよっぽどマシである。これでは抑止力もへったくれも無い。中国と日本が戦争になりミサイルを打ち合った場合、米国も安保があるから参戦するが、初期の段階で日本は潰滅的なダメージを受け、特に全国に52基ある原発を狙われて戦闘能力を失うことになるのではないだろうか。逆に日本には北京に撃ち込むミサイルは無い。だから米国にかわりに撃ってもらうことになるが、そもそも冷戦が終わり共産主義国家が壊滅した現代でGDP2位と3位の国が戦争する意味など、アメリカ人にはわからないであろう。結局戦いを止めるという抑止力には、国際世論や国連のような武力以外の力にたよらざるを得ない。つまり戦いが始まったらもう抑止力云々は意味がないのである。
そもそも抑止力とは、反撃されたら困るから効果がある。ミサイルを撃たない戦闘が続くぶんには、中国は困らないと思われる。お金も人的資源も、国会などという面倒なものが無いだけに如何ようにもなる。さらに、戦争になって困るのは中国と貿易を拡大している国々である。中国と取引しているアジアの国は日本を非難するであろう。現状、安倍内閣での外交は、中国の硬軟取り混ぜた作戦に一歩も二歩も負けている。アジア諸国の色々な問題ーー政治的・経済的ーーに対し有効なパートナーシップを発揮できないでいる。つまり顔がG7なのである。
周囲の国の後押しが得られ無い場合、下手をすると味方になるのは米国だけの可能性も十分あり得る。解決すべき最後の頼みの国連は中国が拒否権をもつ以上日本の味方にはならず、喧嘩両成敗という決議が出るには1ヶ月はかかるだろう。その間、双方に被害がでる。もちろん、中国は人的被害に痛みを感じる度合いは少ないと思われるが果たして日本はどうであろうか。また、米国にしても参戦すればロケットの1・2発くらいは飛んでこよう。米国が直接戦場になる歴史上初めての戦争になる。そうなるまえに、格下の日本に付き合って何のメリットも無い戦争を始めるのは議会が許さないと思われる。
中国は日本と戦争になってもいいが、米国までもが加わるのは御免だ、と思っている。だから手を出さない、これが今回の安保法制で抑止力をアップするという説明である。しかし、アメリカも考えることは同じであろう。両国の考えが一致すれば、中国と日本との戦争はあってもそれが米国を巻き込むことはあり得ない。自衛隊の護衛艦が中国軍に攻撃されたとして、即座に米国の軍隊が反撃するようになるだろうか。勿論日本が先に反撃して、それから米国である。即ち本来の意図がどうであれ、形の上では日本は受身である。理論上ではその通りだが、果たしてそうなるのか?私は、そうなる前に米国の外交力で回避する確率が非常に高い、と思う。その際、日本に有利というより米国に都合が良いかどうかで決着するに違いない。これは今回の安保法制改変とは関係なく、今の現実である。何も今更安保法制どうこうスッタモンダする人間の気が知れないのである。

ここで結論をだすなら、集団的自衛権による自衛隊の武力行使は中国の挑発を抑止する効果に変化を与えるものではない。むしろ日本は、中国に手を出してはいけないのである。

(2)北朝鮮の脅威に対し、今の自衛隊の個別的自衛権のみでは対処出来ないという。日本は北朝鮮との間に韓国を挟んで対峙している。しかし、今韓国との関係は最悪である。韓国との関係が不即不離の友好関係の場合、韓国より先に北朝鮮からミサイル攻撃を受けるとは考えにくい。北朝鮮の最大の脅威は韓国=米国である。何よりも、北朝鮮は米国との対決を外交交渉の軸にしている。
よって日本は北朝鮮とは(今のところ)拉致問題以外の接点は無い。日本は北朝鮮と国交を回復する差し迫った必要性は感じられないのが現実である。言葉を選ばなくて良ければ、サッサと拉致問題を放棄し北朝鮮との関係を絶つべきである。拉致問題はある意味、いまや北朝鮮と日本との唯一の接点ともいえる。では北朝鮮が自衛艦にミサイルを撃ってきたらどうするか。韓国や米国を差し置いて真っ先に日本に撃ってくるとは思えないが、日本の自衛艦を狙ったのであれば、反撃するのは個別的自衛権の範囲である。逆に米艦なら、現状は反撃出来ないという。この場合、どれだけ米艦と離れていても集団的自衛権は発生する。つまり、米艦が北海道沖にいて自衛艦が対馬沖を航行中であっても、自衛艦が反撃してミサイルを撃つことは、今回の集団的自衛権の解釈によって許される。
さて自衛艦が狙われてミサイルを撃たれた場合、アメリカが反撃してミサイルを北朝鮮に撃ち込むのは今でも可能であって、今回の集団的自衛権云々で日本の武力行使がどうたらこうたらという議論とは関係ない。もちろん安保によってよりスムーズに迅速に行われるであろうが、この場合、スピードはさほど重要では無い。なぜなら米艦が攻撃されたわけでは無いからである。
今回の安保法制論議は、米艦が狙われた場合自衛艦の反撃が可能となるが、この抑止力が有効なのは米艦が狙われた場合であり、アメリカにとって有利ではあるが日本にとって格別得になるなにかがあるというわけでは無い。また、北朝鮮は北朝鮮なりの理由で米艦を攻撃するのだが、必ずしもそれが日本と関係あるとは限らない。つまり日本の戦闘参加行為は、日本側の「持ち出し」である。要約すれば、今回の安保法制論議で集団的自衛権が必要な場合は、米国の肩代わりで北朝鮮にミサイルを撃ち込む場合である。北朝鮮とすれば、米国と戦争する場合は常に日本とも戦争することになる。では、日本が加わることによって北朝鮮への抑止力はアップするか?つまり、今までは韓国とアメリカだったが今度は日本も加わった、だから戦争はやめよう、となるかどうか。
北朝鮮にとってアメリカだけで十二分な抑止力があり、日本が加わったとしても変化はないであろう。今回の安保法制改変によって集団的自衛権の武力行使は拡大したが、結局実戦部隊は韓国で、アメリカがこれを支援し、さらにアメリカを日本が後方支援するという。これでは余り戦闘力のアップにはならない。北朝鮮は韓国を戦場にして日本にもミサイルを撃ってくるだろうが、このミサイルを全部撃ち落とさない限り日本に被害が相当出る。韓国や日本にとってアメリカは抑止力になるが、朝鮮半島有事に関しては、日本はアメリカにとって抑止力にはならないと思われる。

結論。今現在北朝鮮は日本に対して戦争準備をしているとは言ってない。半島有事に正しく対処するというなら、韓国と北朝鮮が南北融和を実現するよう最大限の支援をし、同時にミサイルに対する防御を徹底すべきである。勿論ミサイルの発射基地を叩くことも重要だが、これらの準備には集団的自衛権は余り役立たない。今むやみに波風を立てるのは得策とはいいがたい。

(3)地域を極東アジアから離れた場合、集団的自衛権は俄然意味を持ってくる。アメリカと日本との関係が一連托生だと考えると(安倍首相はそう考えているようだ)、日本がどこまでもアメリカについて行くというのもうなづける。世界はまだまだ紛争が絶えないが、ただひたすらアメリカに従っていくという姿勢こそが、日本の進む道である、そう思っていると思う。しかしアメリカはそれ程日本の事を大切には思って無いのじゃないか、あくまで想像に過ぎ無いが、少なくともつい70年前には戦争した相手である。勿論あくまでアメリカ政府の中枢、ユダヤ金融資本と富裕層の極く少数派の考えだが、アメリカも一枚岩ではない。いまだに人種差別が激しい国である、日本人が黄色人種だというのも、あるいは関係があるかも。

結論。地域を限定せず集団的自衛権による武力行使容認にこだわった立法は、アメリカへの忠誠心と考えるとき、実に分かりやすい。つまり、いつもいつも守ってもらうばかりで申し訳ない。今度は少しはお手伝いもします、というわけだ。だから場所も特定出来無いし、事例も説明しようがないのである。これから何があるか、安倍首相にもわからないのだ。戦争法案と呼ばれるのも案外あたっている。やはり、安倍首相は国民を騙してアメリカに差し出した張本人という、最悪のレッテルを貼られた最初の首相になる可能性が高い。

日本人が自分の頭で自分達の行く道を選ぶ日が来るのはいつになるのか、まだまだ遠いように思う。(完)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿