明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

EU離脱問題と移民難民問題の行方

2019-01-18 22:28:22 | ニュース
EU離脱が差し迫ってきているなか、メイ首相の離脱案が議会多数の反対で否決された。キャメロン首相時代の国民投票で「離脱」と決めたわけだが、今になると離脱52%残留48%の僅差でどっちに転んでもおかしくない状況で、先が見えなくなって来ている。あと2ヶ月、イギリスはどうするのか?

そもそもEUからの離脱問題は「離脱か残留かという二者択一」以前に、国民の間で色々議論するべき問題がたくさんある筈だ、と今になって「最初に戻るような議論の蒸し返し」も出てきて、メイ首相への信頼も揺らいでいるらしい。ではもう一度国民投票をするのかというと、そういう問題でもない。民主主義の原則で言えば国民投票は最後の意思確認作業である筈だが、一度決めた投票結果を気に入らないからと言ってやり直すのでは「又もう一度、再々投票」だってありえる訳で、「いつになったら確定するのか」という新たな難問が出てくる。

今のイギリス国民の考えは概ね「経済が失速」することを懸念して残留に賛成するというのが大半だが、元々は移民流入に国民の多数が嫌悪感を持っていて、移民反対の立場からEU離脱派が勝利したというのが本質。つまり「EU離脱」ではなくて、「移民反対」である。何故イギリスに移民・難民が殺到するかと言うと、「社会保障がしっかりしている」こととか、「給料が高い」とか、イギリス経済の好調さから来る国の安定が魅力のようだ。同じEUでもスペインやイタリア南部のように経済がそれほど良くなくてギリギリの国もあるし、ギリシャのような破綻寸前の国もあって、EUと言っても一枚岩ではない。ここ3、4年はシリア難民問題が大きく影響して、難民をどうするかがEU最大の問題にもなって来て、それでイギリスが離脱を決めたわけである。イギリスが離脱問題をどうするかはさておいて、国民投票という民主主義の意思決定方法について考えてみたい。

これは、投票によって国民の意思が「決まる」というわけだが、今回のイギリスの失敗例から学ばねばならない課題が見えてきたと思う。それは、感情で投票するのではなく、議論を尽くして冷静に答えを出すことである。だが、それでも見込み違いというのはあり得る。その見込み違いを自らの過ちとしてしっかり心に刻み込み、二度と同じ過ちをするまいという姿勢で生きていく、というのが民主主義の責任のとり方ではないだろうか。「自己責任」、それが民主主義の良い点である(そういう意味では、日本は国民が負うべき責任を軍部や一部の人間に転嫁して、国民こそが被害者だという誤った認識で済ましてしまったところに、ドイツやイタリアとの違いがある、と私は考えている)。ちょっと脱線した。

イギリスの例に見るまでもなく、国民投票をして憲法改定するのが悲願だと自民党は息巻いているが、今の日本には憲法9条を直す直さないということよりもっとずっと大きな問題がいくつもある。それらが一つも解決してないのに第9条だけを取り出して賛否を問うのは、「離脱か残留か」と問うたキャメロン首相の轍を踏むことになりはしないか。そう思うと、憲法改正を国民に問うのは時期尚早である。先ずは少子化高齢社会での社会保障費の増加を解決し、返す刀で労働力減少に歯止めをかけて経済を活性化する、というのが先であろう。アベノミクスのような「株の上昇と円安に騙された見せかけの好調」ではなく、国民にとっての真の繁栄を築く秘策が必要である。

そのためには、現状認識が絶対条件である。一足飛びに解決を目指すのではなく、現在の日本の状況を過不足なく拾い出して、一つ一つテーブルの上に乗せることが肝心の筈。この現状把握なくしては、解決策もありえないのではないだろうか。その一番明確な例が「イギリスEU離脱交渉の頓挫」である。だが他人事と笑ってはいられないのが最近ニュースで取り上げられた「厚労省の統計情報不正問題」である。一体日本人のモラルはどうなっているのか。現状認識の第一歩である統計情報が「公務員の杜撰な仕事」で崩壊している。これでは正しい議論をするどころではないではないか。安倍首相の率いる自民党官邸は、数を頼んで議論放置・反対意見黙殺・国会軽視で突き進んでいる。今やるべきは、経済の現場で「何が起こっているかの検証」ではないか!

と、一気に不満をぶちまけてしまったが、そもそも自民党は大企業・資本家優遇と富裕層べったりの政策集団であるから、何を言っても馬の耳に念仏ということ。やっぱり目先の金で動くのが庶民であり、一般大衆である。余程のことが起きなければ国を動かすというのは難しい。

ということで、「民主主義の限界」を感じた、という話になってしまった。こうなって来ると、習近平やプーチンといった英邁な独裁者が国を率いている体制も、「それなりに正しい」と思えてくる。もちろん誰がトップに座るかで変わることではあるが今の処、世界のパワーバランスは彼らに有利な方向へと動いているようだ(唐の玄宗皇帝が最初素晴らしい政治を行っていたのに、後で楊貴妃に溺れて悲惨な末路を辿ったた例は珍しくはない)。日本も若き英傑の登場を待つ雰囲気があるみたいだが(小泉進次郎?)、これもポピュリズムの悪い例となるのだろうか。

元に戻ってイギリス(EUの問題でもあるが)の離脱の根本原因である難民問題について考えると、難民を出している国の「根本原因を断つ」しか方法はない。難民はそもそも自国で安全に暮らしていけないから他国に流れて行くのである。国同士の貧富の差が大きければ大きいほど、そのベクトルも強くなる道理だ。究極は、国の経済が「個性の違い」程度に縮まってくれば問題は解決する。それで少し暴論に近くなるが、難民を大量に出すような貧困で悪徳政府が利を貪っている国は「国連軍による管理」という方法もあるかと思う。国連は、世界の人々の意思を代弁している筈であるから許されるのだ。そして年数を限って仮政府を運営し、経済を立て直し、現地の国民を育成することでいずれ自前の政府を作り、仮政府を引き渡すことで撤退するという仕組みである。難民も自国で生活できれば、命をかけて海を渡る必要もない。それが出来るのが「国連軍」だと思うのだが。

それでも人間は罪深い動物である。人々の平和な暮らしより国の繁栄や、個人の富の蓄積を優先する少数の人間が、権力と癒着して甘い汁を吸っている。何とかならないものかなぁ・・・

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