明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

英国ミステリーの系譜、あるいはテレビを見なくなる生活

2018-10-19 20:28:57 | 芸術・読書・外国語
英国ミステリーの新しい番組を見つけた、NHKBS103chで土曜日4時半から90分やっている「新米刑事モース・オックスフィード事件簿」である。原作はコリン・デクスターで、イギリスのCWA会員投票において「好きな探偵」第一位に選ばれるなど、シャーロック・ホームズと並んで国民的人気探偵であるそうだ。私はCSでずっと見ていたが、主役のモース警部(ジョン・ソウ)が心臓発作で亡くなるという最終回で残念ながら終わってしまった。その後、「主任警部モース」のスピンオフで「オックスフォード事件簿」が放送され、必ず録画して見ている。主役はモースの部下だったルイス(ケヴィン・ウェイトリー)が警部に昇進して、新人部長刑事ハサウェイ(ローレンス・フォックス)とのコンビが新鮮だ。それがテレビ番組をダラダラ見ていたらBSで「オックスフォード」という文字を見つけ、また古い番組の再放送でお茶を濁しているんだろうと思ったが取り敢えず録画しておいたら「モースの若い頃」を描いた作品だという。主役はショーン・エバンス、人の本心を見透かすような青い目を持ったイギリスの若手有望株俳優である。モースやルイスも個性的な俳優が演じていてその演技力に感心していたが、エバンスもまた「イギリス伝統のミステリー」という名に恥じない暖かみと哀愁を感じさせる名演で、すっかり好きになってしまった。

どうもアメリカの番組は基本が「ドギツイ」のが殆どであり、暴力描写や残虐シーンやSEX犯罪が「これでもか」というくらい過剰に描かれていて、推理物というよりは「よっぽどアメリカ人は暴力が好きなのか?」と思わせる番組ばっかりなのである(それも当たっているが)。それに比べると英国は流石に紳士の国、暴力は筋の上で必要な場合に限り「サラッ」と描くのみで、軸足は主人公の人間性にある、というのが安心して見ていられるところである。いつも気がつくのが遅くて見逃してしまうので、今度は「自動録画」の機能を使って未来永劫番組が続く限り録画する設定にした。これで撮りッパグレが無いわけだ、便利である。私は千葉テレビの「ええじゃないか(御蔭旅行社の観光地紹介番組)」とTVKの「鉄道ひとり旅」それに「ブラタモリ」を自動で設定している。以前は人気芸人が出演して面白い話をするトーク番組や居酒屋探訪番組などを好んで見ていたが、最近はNBAが始まってテレビを見る時間が足りなくなり(毎日2時間はNBAに取られる)、次第につまらない番組を見る機会が減ってきたのだ。秋になって「読書願望」もいっそう強くなり、現在「九条兼実」を読んでいるが結構面白くて、次は「平家物語」を読もうと予定を立てるほどになってきた。いいことである。

ところで日本のミステリーといえば「本格推理物は殆ど無い」のが現状である。あるのはせいぜい「相棒」くらいが僅かに楽しめるかな?というレベルだが、最近は脇を固める俳優陣の個性で楽しませる方向に変わってきているように思う回も多くなってきて「淋しい」限りである。番組表を見てみると、寺島進の「駐在刑事」がポツンとあるだけで、夜の9時からのゴールデンタイムには2時間ドラマとして一世を風靡した「〇〇殺人事件〜京都の清水寺に封印された女の悲しい叫び」とかいったミステリー物がすっかり消えているのだ。ミステリーの主役を張る役者もそれぞれ年を取り、懐かしんで見る視聴者も少なくなって視聴率が取れなくなって来ているのだろう。そもそも時代劇が減ってきて、私の親の世代には絶大な人気を誇っていた水戸黄門や銭形平次の流れをくむ「人情ドラマ」が飽きられてきて、昨今は「半沢直樹」「下町ロケット」「大門未知子」と社会派ドラマが人気を博している。が、私が見るところ「いずれも人情ドラマの焼き直し」である。巨大な悪に立ち向かう正義の人が最後には勝つという「お決まりのドラマ」が、趣向を変え筋立てや背景を現代風にしたもので新味があるわけではない。まあ大衆はこの手の「安心してみてられる」ドラマが見たいのであって、本格ミステリーなどは「お呼びじゃない」のであろう。それともミステリーを書ける作家が日本にはいないのだろうか。

何も日本人に本格ミステリーを書いて欲しいと思っているわけじゃない、私は英国ミステリーで充分である。ただ、暴力一辺倒のアメリカドラマばかりが目立つことに、いささか辟易しているだけなのだ。海外物は「モンタルバーノ」「バーナビー警部」「エレメンタリーホームズ&ワトソン」などなど、結構面白くて録画している。「O・J・シンプソン事件」をドキュメンタリー風に仕立て上げた「アメリカン・クライム・ストーリー」は純粋なミステリーではないが、事件に興味があって見始めた。CSのAXNミステリーとAXNHD、それにFOXHDとスーパードラマチャンネルが私のお気に入りだ。CSは高いので入っていない人も多いかと思うが、NHKに払う料金から比べたら、全然内容が濃いので「お得感」がたっぷりである。それに、ゴルフは「とことん一番ホール」シリーズをばっちり放映してくれるのでゴルフ好きにはたまらない。もちろんプレミアサッカーもカバーしていて、マンU・マンC・リヴァプール・チェルシー・アーセナルと何でもありである。これだけだって充分元は取れると私は考えるがどうだろう。年を取ってくると外に出る機会も少なくなるから、夜は家でテレビを見るのが当たり前になる。その時、何を見て時間を過ごすかは個人の自由だが、私は英国ミステリーをお勧めしたい。何しろ見終わって「いい映画を見てから映画館を出た時の、何となく身体を包んでいる寂しさ」みたいな感情が愛おしいのだ。「人生について色々と考えさせられる」のと、「こいつら馬鹿だなぁ、あははは」と笑い転げるのと、どちらを選ぶかは「あなた次第」である。たまには本格ミステリーもいいと思いますよ。

ついでに言うと、私は本を読む事にした。ヘッドフォンでクラシックを聞きながら、古典を読む。いいですねぇ。

ついでにいよいよ生涯の念願である「テレビ離れ」にチャレンジしたいと思っているわけだ。いまや機は熟したのである。「時は今 天が下知る 五月かな」の不退転の心境で臨みたい。まずはテレビをつけないことから始めるとしよう。

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