フィールドワーク通信

広島を拠点にフィールドワーク。カンボジア、インドネシア、市民まちづくり

アジアのオープンスペース論1219

2006-03-05 16:28:08 | フィリピン通信
 バギオからマニラへ移動の日。午前中はバギオのまちなかへ出た。バギオはアメリカ人建築家・都市計画家バーナムの計画した都市である。都市の中心に位置するバーナムパークがその真骨頂である。20世紀初頭の都市計画というと、制度設計ではなく、いまだ都市のヴィジュアルを計画し、それを強大な権力をもとに実行していくというスタイルが一般的であった。ニューヨークにゾーニング法ができるのが、確か1920年代だったはずで、それまでは制度によって都市を計画するということがおこなわれたことがなかったのである。

 アメリカのシカゴでも試みられた同心円状の街路計画をもつプランである。公園の中心には、人工湖が設けられスワン号が何十艘と浮かんでいる。この公園は、市民の生活に完全に根付いているのである。

 アジアのオープンスペース論というのは、なかなか楽しいテーマだなあ、と思いながらバーナムパークを歩いた。例えばこうである。日本の同じ程度の規模の公園とアメリカの同じ程度の規模の公園を選んできて、そこで行われているアクティビティを観察調査によって集めてきて分析するだけでも、なんか出そうである。同じ公園の規模でも、その都市の規模や機能、その都市の中でのその公園の位置づけ、公園の配置計画などの違いによって、利用形態の違いがでてくるだろうが、一番面白そうなのは、アジアと西洋(ここではアメリカ)のアクティビティの違いである。オープンスペースの使い方がへたくそだといわれる日本とフィリピンとの比較も興味深い。

 夜の8時にマニラについた。到着地はクバオであったが、そこからカロオカンに移ろうとしたため、ややこしいことになって時間をロスしてしまったが、まあ、無事についた。ホテルは、最初と同じラ・コロナである。再訪をフロントの人々は喜んでくれたし、なぜかだいぶ宿泊料金が値引きされた。韓国料理を食べに行き、キムチやビビンバを食べたが、違う味であった。違う味であったが、ビビンバはそれなりにおいしかった。

 今朝、バギオのSMショッピングセンターを歩いているときに、急激な疲れを感じた。もうだいぶ疲れがたまってきているようだ。明日はゆっくりしようと宣言して、みなと別れた。

 最近、アジアのフィールド体験をもとに建築計画を立て直す作業をしたいと思うようになった。データ主義や数理主義ではなく、感覚的・体験的で身体的な建築計画論があってもいいのではないだろうかと思ったのである。

 アジアをフィールドに調査をしようとすると、1次資料となるような文献はなく、地域の地図自体もあるかどうかあやしい状況に出くわす。その場所や地域から立ち上がってくるものを感じながら、その場所そのものから論を立てていかなければならないわけである。これまでのアジア研究の蓄積を省みながら、その場所や地域から立ち上がる建築計画のありようを模索してみたいと思っている。

 日本の建築計画は、日本独自の展開をしているわけで、それはDKの開発のプロセスを見ればよくわかる。当時の住宅事情、住宅問題をもとに対処療法的に技術が開発されている。その立ち上がりのプロセスは非常に貴重であるが、DKにしろ施設建築の計画技術にしろ、定式化してしまうと、その立ち上がりの部分は見捨てられてしまう。

 しかしアジアのフィールドの場合、地域や民族が多様なだけに、定式化した技術では対応しきれない。その地域の空間構成や建築構法、建築生産システムに則した技術の開発が必要とされるのである。

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