薔薇王の葬列 1〜10巻(全17巻)
漫画、菅野文
アニメ化されてましたね。
2クールで全話やってたみたいで、
凄い力入ってるなぁとは思ってたけど
最後まで見れば良かったな。
シェイクスピア
“リチャード三世” “ヘンリー六世” を
原案にした漫画です。
ヨーク家3男リチャードは、
両性具有であることを隠して
ヨーク家に王冠をという思いに囚われて
残酷な運命に翻弄される悲劇です。
シェイクスピアらしい舞台的な
すれ違いや間違いや大仰さや大胆さと
心の中のドロドロのした葛藤や繊細さが
詰め込まれてます。
悲劇だろうなと思ってましたが、
やっぱり悲劇みたいです。
リチャードが森で出会った羊飼いという男は、
戦いが嫌で逃げてきた敵のヘンリー王
お互いに身分を知らないままに
何度も出会い親睦を深める。
ヘンリーはリチャードを男と思ってて
友達として共に暮らしたいと願い、
リチャードはヘンリーには
両性具有であることを明かして
愛されたいと願ってしまう。
もちろん、
リチャードは自分の気持ちに気づかないよう
何度も何度も葛藤しますが、
ヘンリーが無邪気に接するから仕方ない。
しかしヘンリー王は女嫌い。
王妃との間に息子はいますが、
拘束されて王妃に無理矢理された結果という
何とも凄い描写でした。
もうめちゃフラグが立ちまくります。
リチャードは羊飼いヘンリーが
父の仇であるヘンリー王だと気づき、
処刑前に抱かれることを望むが
精神が壊れてるヘンリーは
リチャードを悪魔だと跳ね除ける。
そして、リチャードに倒される
(というか倒されたことになってるだと思う)
ヘンリー。
どうもヘンリーっぽい記憶喪失の人が
出てきますが、彼の正体が明かされることは
あるのかな。
リチャードは何を信じて何を成せばいいのか
混乱したまま、時代の流れに翻弄される。
そしてリチャードを王にしたいバッキンガム。
今までも何度も誘いをかけるが
リチャードは跳ね除けていましたが、
バッキンガムに(悪魔とされる)両性具有で
あることを知られ、
王冠を欲していることも知られ、
繋がることで共謀者としての契約を結ぶ。
というところまでが10巻です。
それ以外の登場人物にも
それぞれ物語があり、
リチャードを想ってる人、慕ってる人、
憎んでる人、嫌悪してる人さまざまで、
色んな想いが絡まってえらいこっちゃに
なってます。
同じ名前の人もいたりして、
それにも意図はあるんだけどややこしい。
面白いですけどね。
どうしようもなく悲劇になる方なる方を選択し
突き進むリチャードが哀れです。
そばで愛して大事にしてくれてるケイツビーに
気づかないでポイポイ良いように使うのが、
よしながふみの大奥の綱吉と吉保に被ります。
灯台下暗しというか、部下は部下という括りで
舞台に上げてすらあげない感じが
見てあげてー!ってなります。
そっちを見なくても愛してくれる人を
みつけちゃったりするんだから、
魅力的な主は厄介です。
さて、これからリチャードの悲劇は
加速度を増していくんだろうな。
悲劇は読むのに体力がいります。
アニメの方、Abemaで一挙放送とかないかな。
2期があるとかなるするだろうけど、
完結してると難しいかな。
私は菅野文先生の絵が好きです。
『凍鉄の花』という土方歳三が主人公の話が
切なくて刹那くて好きでした。
その後に『オトメン(乙男)』で
コメディも描けるのか凄いなぁと思ってたら
凄い人気作家さんになって、
『薔薇王の葬列』で悲劇も描けて、
コメディと悲劇と両方でヒット作がある
作家さんは珍しいと思います。
まぁでも、どっちの作品も
男だから女だからを取っ払いたいというのは
共通の芯の部分だなと思います。
薔薇王を読みながら、
たまにオトメンのキャラが頭をよぎって
私の脳内でシリアスの緩衝材になってくれて
助かりました。