くにたちの声

国立市の市政について、国立市民・納税者の立場から発言していきたいと思います☆ presented by Y.Suzuki

全面勝訴-判決内容の詳細(その2)

2010年12月31日 20時08分19秒 | 国立マンション訴訟
判決内容の詳細、第2弾です。

公務員が違法な行為によって他人に損害を与えた場合、国家賠償法という法律に基づき国や地方公共団体がその公務員に代わって損害を賠償することになっています。したがって、上原前市長の違法行為が原因で生じた損害賠償金は、国立市が肩代わりしたわけです。

ただし、公務員の違法行為に故意または重大な過失があった場合には、国や地方公共団体は、その公務員に対して求償することができます(国家賠償法1条2項)。
私たちは、上原前市長には故意があったという結論に達し、「上原前市長の故意による違法行為が原因で、国立市が損害賠償金を肩代わりしたのであるから、関口博市長は、上原前市長に対して、市が肩代わりしている分を自らの責任で支払うよう請求せよ」という今回の住民訴訟提起に至りました。

本件訴訟の争点(1)では、上原前市長の明和地所に対する故意又は重大な過失による営業活動の妨害行為及び信用毀損行為の有無に焦点が当てられています。
これに対する裁判所の判断は、以下のとおりです。

まず、裁判所は上原前市長の違法行為について、次のような事実を認定しています。

上原前市長は、平成11年7月3日、桐朋学園らを構成員とする三井不動産マンションに関する懇談会出席者に対し、本件建物(明和マンション)の建築計画があることを話した上、「皆さん、このマンション問題も大事ですが、あそこの大学通りにマンションができます。いいんですか皆さん。はっきり申し上げて行政は止められません。」などと述べ、その話を聞いた桐朋学園などの周辺住民らに本件建物の建築反対運動が広がった結果、同年8月8日、桐朋学園らを主な構成員とする市民団体「東京海上跡地から大学通りの環境を考える会」が結成され、その後の明和地所による本件建物の建築計画説明会が大きく紛糾するなどした(以下これらの行為を「本件第1行為」という)。

上原前市長は、当初は、国立市と共に、明和地所に対し、本件建物に対する具体的な指導は行わず、専ら大学通り周辺の景観保全のための自主的な対応を期待する対応をした。しかしながら、上原前市長は、強い意向を示して、国立市をして「国立都市計画中三丁目地区地区計画」(以下本件地区計画という)及び「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(以下本件条例という)の制定という方策に変更させるとともに、平成11年11月24日、本件地区計画原案の公告・縦覧を開始させると、平成12年1月24日、本件地区計画を告示・施行した。さらに、上原前市長は、本件条例を早期に成立させるため、同年1月28日及び同月31日の日程で臨時市議会を招集し、同日、議長及び副議長等が開会しない中、臨時議長が開会した臨時国立市議会において、自ら本件条例案を議案として提出し、本件条例を成立させると、同年2月1日、その送付を受けてこれを公布し施行した(以下これらの行為を「本件第2行為」という)。

上原前市長は、平成13年3月6日及び同月29日の定例国立市議会において、建築基準法に違反しない適法建築物であった本件建物につき、留保を付けずに違反建築物である旨の答弁をした(以下これらの行為を「本件第3行為」という)。

上原前市長は、平成12年12月27日、建築指導事務所長に対し、平成12年の東京高裁決定での本件建物が違反建築物である旨の判断部分を尊重する対応を求め、また、東京都知事に対し、同年7月10日付け文書で、本件建物のうち、高さが20mを超える部分について、電気、ガス及び水道の供給承諾を留保するよう働き掛けるなどした。さらに、本件建物の完成後の平成13年12月20日、明和地所に本件建物の検査済証を交付したことについて、桐朋学園らと共に東京都建築主事に抗議し、国立市としては本件建物が違法建築物であると判断している旨の報道を繰り返させた(以下これらの行為を「本件第4行為」という)。

そして、争点(1)については、次のような判断を下しています。

「上原前市長による本件第1行為から本件第4行為までの一連の行為は、全体的に観察すれば、上原前市長が、建築基準法に違反しない適法建築物である本件建物の建築・販売を阻止することを目的として、桐朋学園らにおいて妨害行為に及ぶことをも期待しながら、明和地所に許されている適法な営業行為すなわち本件建物の建築及び販売等を妨害するものというべきであり、かつ、その態様は普通地方公共団体の長として要請される中立性・公平性を逸脱し(特に本件第1行為及び本件第4行為)、行政の継続性の視点を欠如した急激かつ強引な行政施策の変更であり(特に本件第2行為)、また、異例かつ執拗な目的達成行為であって(特に本件第1行為、本件第3行為及び本件第4行為)、これにより害される私人の権利に対して相応の配慮がされた形跡もうかがわれないのであるから、社会通念上許される限度を逸脱しているというべきである。そうすると、以上の行為については、上原前市長が、明和地所に対して負う職務上の法的義務に違反したものと認められるから、国家賠償法1条1項にいう違法があるというべきである。」(判決27~28頁)

裁判所は以上のように述べて、私たち原告の主張を全面的に認めています

ちなみに、被告側は、本件建物の建築・販売を阻止する目的はなく、本件地区計画及び本件条例が本件土地を含む一帯の土地にある内在的制約を現実化させたもので明和地所を狙い撃ちしたものではない等と主張しましたが、裁判所はこうした被告側の主張を「理由がなく採用することができない」と悉く退けています

さて、争点(1)の核心ともいえる上原前市長の故意又は重大な過失について、判決は次のように述べています。

「上原前市長は、建築基準法に違反しない適法建築物である本件建物の建築・販売を阻止することを目的として、一連の本件違法行為が、普通地方公共団体の長として要請される中立性・公平性を逸脱し、急激かつ強引な行政施策の変更又は異例かつ執拗な目的達成行為であると評価することができる基礎事実を十分に認識しながら、本件違法行為に及んで明和地所の適法な営業活動を妨害したと認められる以上、少なくとも重大な過失があることは明らかというべきであり、この認定に反する被告らの主張は、理由がなく採用することができない。」(判決31頁)

以上のごとく、判決は、上原前市長が、少なくとも重大な過失により明和地所の営業活動を違法に妨害し、かつ信用を毀損したと断じています。
これによって、国立市は、上原前市長に対する、国家賠償法1条2項に規定されている求償権を有することが明確となりました。

国家賠償法
1条1項:国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を与えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
1条2項:前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。




今日はこのくらいにして、紅白歌合戦でも見ましょうか
(続く)



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2 コメント

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さらに続きが・・・ (FXSTS)
2011-01-01 10:30:17
新年おめでとうございます。
早速、読ませていただきました。
解説も付けていただき、大変分かりやすく感謝いたします。
できれば、この正月休み中に全部読んでみたいです。せっかくのお休みにお手数ですが、楽しみにいています。よろしくお願いします。
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承知しました (くにたちの声)
2011-01-01 16:54:41
FXSTSさま

毎回お読みいただきありがとうございます。

ご期待に添えるよう、お屠蘇を飲み過ぎないようにして頑張ります
返信する

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