くにたちの声

国立市の市政について、国立市民・納税者の立場から発言していきたいと思います☆ presented by Y.Suzuki

国立市における債権放棄の議案を嗤う (その1)

2013年12月18日 23時50分14秒 | 国立マンション訴訟
現在開催されている国立市議会第4回定例会において、上原公子元市長に対する債権を放棄する議案が提出され、明日19日の最終日に可決される見通しであるという。

この債権とは、私たち国立市民有志が提起した住民訴訟で私たち原告住民が全面勝訴した結果生じたもので、国立市が上原元市長に対して約3200万円及び遅延損害金を求償する権利のことである。
要するに、住民訴訟で上原元市長の違法行為が認定され、その結果、同元市長に損害賠償責任が生じたわけであるが、同元市長を支持する11名の市議が、同元市長に対する求償権を放棄するという議案を可決しようとしているのである。

このような、住民訴訟制度そのものを空洞化するような行為は、決して許されるべきではない。
また、これは明らかに議会の裁量権の濫用である。

現在の議会構成を考慮すると、この議案は19日に可決される可能性が高いが、その結果、上記債権の放棄は法的に有効となるのであろうか?

結論から言うと、上記議案が可決されたとしても、法的な効力は生じない。
なぜなら、市議会が債権放棄の議決をしただけでは放棄の効力は生ぜず、その効力が生ずるには、市長による執行行為としての放棄の意思表示を要するからである。
このことは、昨年4月20日に下された大東市債権議決放棄事件神戸市債権議決放棄事件の最高裁判決が明確に判示している。

つまり、佐藤一夫市長が、上記債権を放棄する旨の意思表示をしない限り、放棄の効力は生じないということになる。
今さら言うまでもないことであるが、佐藤市長は、2011年の市長選における選挙公報で、「マンション訴訟で前市長が違法行為により市に与えた損失を請求する」と明示しており、上原元市長への求償権行使を選挙公約に掲げている。
したがって、佐藤市長が放棄の意思表示を行う可能性はゼロに等しい。

また、佐藤市長には、この議案が可決された場合、それに対する異議を示すために再議に付す権限が地方自治法176条によって与えられている。
ゆえに、再議に付して再度採決するという選択肢も残されている。もっともこの場合、再可決に必要な票は過半数なので、再び可決されてしまうことになるが、市長が債権放棄に反対であることは、証拠として残る。

いずれにせよ、明日可決される見込みの債権放棄の議決が、法的な効力を生じないことは間違いない。


次に、この議案には、事実に反する記述や矛盾が存在することに触れておきたい。

まず、議案には「2008年3月最高裁決定により確定した損害賠償金及び遅延損害金は、同額を明和地所が国立市に寄付したことにより、国立市側には実質的な損害は生じていない」とあるが、これは事実ではない。
これまでにも同様な言説が、上原元市長を支持する市議らによって、さまざまな場で公表されてきたが、全く事実に反する。

明和地所は、賠償金と同額の寄附をしているものの、この寄附は、あくまで国立市民のための教育・福祉の施策の充実にあててほしいとの趣旨の一般寄附であって、国立市が明和地所に支払った損害賠償金を補填する趣旨でなされたものではない。
この寄附について、第一段階訴訟(住民訴訟)における2010年12月22日の東京地裁判決(確定判決)は次のように判示している。

「本件寄附は、国立市による本件損害賠償金の支払を契機として行われたもので、本件損害賠償金と同額のものではあるが、 明和地所においては、本件損害賠償金に係る債権を放棄してこれを返還することは明示的に拒絶し、国立市における子供たちの教育環境の整備や福祉の施策等に役立ててほしいとの趣旨を明示して拠出されたものであり、 これを収受した国立市においても、本件損害賠償金の返還ではなく一般寄附として取り扱ったものであること、 明和地所は、本件寄附の申出前には、国立市が同社に対して本件損害賠償金に含まれていない前件訴訟の訴訟費用に係る請求をするのであれば、本件損害賠償金相当額から当該請求額を差し引いた額を寄附する旨述べ、結果的に、国立市が前件訴訟の訴訟費用に係る請求を放棄することを事実上の条件として本件寄附の金額が確定したことに照らすと、本件寄附は、本件損害賠償金を実質的に填補する趣旨でされたものとはいえず、これをもって国立市の損害が実質的に填補されたから本件求償権が消滅したと認めることはできない。」(判決36-37頁)

したがって、「明和地所の寄附によって国立市に実質的な損害が生じていない」という論理は成り立たないのである。

さらに、上原元市長の違法行為によって国立市が被った金銭的損害は、市が肩代わりしている約3200万円にとどまらない。
実際に国立市が被った金銭的損害は、合計約1億5000万円にものぼる。
この金額は、市が肩代わりして明和地所に支払った損害賠償金、上原元市長の違法行為を弁護するための弁護士費用、そして本来なら明和地所から市へ納入されるはずの協力金を合計した額である。

上記東京地裁判決は、市が肩代わりしている約3200万円以外にも、上原元市長が国立市に与えた金銭的損害について、次のような金額を認定している。

「国立市は、 前件訴訟に関して、弁護士費用等の裁判費用として3918万904円を公金から支出したほか、 本件建物についての新指導要綱に基づく清掃施設協力金及び公園・緑地整備協力金を7881万2000円と試算していたが、明和地所との間の都市景観形成条例に基づく手続きが未完であったため、指導要綱の事前協議の完了及びその後の手続きである当該事業計画に対する承認ができず、上記協力金の納入手続きが実施できない状況にある。」(判決36頁)

このように裁判所は、上原元市長が国立市に対して、合計約1億5000万円もの金銭的損害を与えたと認めている。
ということは、上原元市長が市の請求にしたがって、約3200万円及び遅延損害金を支払っても、まだ十分な補填をしたことにはならないのである。

(続く)
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国立市における違法市政との闘い-第二段階訴訟東京地裁判決- 詳報その4(完)

2013年12月16日 22時26分29秒 | 住基ネット

最後に、判決は、違法な本件各支出がされたことについて、本件各専決権者に本件各支出を専決させた関口前市長が損害賠償責任を負うか否かについて検討している。

まず、判決は、第一段階訴訟の東京地裁判決でも引用されている最高裁判決を引用して、次のように述べている。
「一般に、普通地方公共団体の長の権限に属する財務会計行為を補助職員が専決により処理した場合は、長は、上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして、当該違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害について損害賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁判所平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁、最高裁判所平成9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁参照)。」(判決33頁)

そのうえで、判決は、関口前市長に上記のような指揮監督上の義務違反があったか否かについて検討するにあたって、次のような事実を認定している。

① 本件各支出がされた平成20年9月より前に発行された国立市の市報においては、住民が国立市役所又はその出先機関に現況届を持参すればこれを国立市が社会保険庁に送付することが繰り返し広報されており、関口前市長は上記各市報の発行前にその内容を確認して決済していたこと。

② 平成19年6月開催の国立市議会の定例会において、国立市議会議員から、本件不接続を継続している状態での住基ネットサポート料の支出等について質問がなされ、関口前市長が住民異動データのバックアップ事務を行っている旨答弁するとともに、市民課長が具体的な金額等について答弁していること。

③ 上記の事実によれば、関口前市長は、本件不接続を継続することによって、本件各費用の支出が必要となり、本件各専決権者が本件各支出を行うことを知っていた、あるいは少なくとも容易に知り得たものと認められること。

④ 東京都知事に対して住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信するため、関口前市長が住基ネットに接続すべき義務を負っていることは住基法上明らかであっただけでなく、同前市長による本件不接続の継続は、住基法に明らかに違反し、同法の目的達成を妨害するものであったところ、平成20年最高裁判決及び平成19年東京高裁判決が出され、その内容が国立市の市報に掲載されていただけでなく、同前市長は、平成20年9月9日付けで東京都知事から地方自治法245条の6に基づく是正の勧告まで受けていたこと。

判決は、以上4点の事実を考慮したうえで、次のように述べている。
「被告(関口前市長:筆者註)は、遅くとも本件各支出がされた平成20年9月29日より前から、本件不接続を継続する旨の判断を是正・撤回して住基ネットに接続することにより、本件各専決権者が本件各支出を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず、被告は、上記指揮監督上の義務を怠って漫然と本件各支出をさせたのであるから、上記で述べた事実関係に照らせば、被告が上記義務を怠ったことについて、故意又は少なくとも過失があったことは明らかというべきである。」(判決34頁)

このように、判決は、関口前市長の指揮監督上の義務違反を明確に認定している。

ここで、関口前市長が損害賠償責任を負うか否かという上記争点について、10月14日付けのこのブログ(国立市における違法市政との闘い-第二段階訴訟東京地裁判決-詳報その2)で紹介した関口前市長側の主張について振り返ってみよう。
上記ブログにおける【被告側主張】の(1)(2)(3)にまとめられているので、ご覧いただきたい。

これらの主張は、まさに荒唐無稽としか言いようがない。

特に、(3)①においては、担当部長や課長が勝手に判断して支出したのであるから、自分はこうした支出を把握できないため、自分に支出を阻止すべき義務を負わせるには無理がある、という無責任極まりない主張をしている。

さらに、(3)②においては、本件各支出を現実に行ったのは飽くまでも担当部長や課長であって、関口前市長自身は、本件各支出の決済手続に全く関与していないのであるから、責任を負うことはないと主張している。
要するに、関口前市長は、部下が勝手に判断して行った支出だから、自分は知らなかった、あるいは、支出の決済手続に全く関与していないのであるから責任はない、という信じ難い責任逃れを繰り返しているのである。
自分の上司がこのような無責任な人物だったら、読者はどう感じるであろうか?
このような上司は、部下から最も嫌われるタイプなのではなかろうか。

当然ながら、関口前市長のいずれの主張も、判決が認定した上記4点の事実により、悉く否定されている。

そして、判決は、「被告は、本件各専決権者が本件支出を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務を怠ったことにより、原告(国立市:筆者註)が被った損害について損害賠償責任を負うものというべきである。」と断じている。
その結果、「被告は、原告に対し、不法行為に基づき、本件郵送費等相当額の損害賠償金39万8040円及びこれに対する不法行為後の日(本件各支出がされた後の日)である平成21年7月1日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものと言うべきである」と判示している。

以上が、今回の判決の詳細である。

極めて妥当な判決であるといえよう。

なお、専決権者の責任に関する問題等、まだ論じなければならないことが残っているが、これらについては、また後日このブログで扱うこととし、ひとまずここで筆をおくことにしたい。


*この東京地裁判決が下された後、被告の関口前市長が控訴したため、控訴審が東京高裁に係属していたが、本日(12月16日)結審し、来年2月12日に判決が言い渡される予定である。
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