国立市の代表監査委員を務める高橋雅幸氏は、即刻辞任すべきであると思います。
高橋氏は、私たち国立市民有志が行ったふたつの住民監査請求に対して、ともに私たちの請求を門前払いするような理不尽な監査を実施した監査委員です。
すなわち、私たちが2009年2月に実施した「上原公子元市長らに対する求償権行使を国立市長に求める住民監査請求」に対しては、私たちの請求を正面から受け止めず、「求償の対象者および範囲について検討せよ」などという全く的外れな監査結果を出しています。
詳細については、
2009年5月18日付け本ブログをご覧下さい。
さらに、私たちが2009年9月に実施した「住基ネット切断に伴う違法支出の差し止めと違法支出相当額の補填を国立市長に求める住民監査請求」に対して、高橋氏は、「これら支出は、住基ネットを一時中断している状況において、住民の福祉を図ることを基本とする地方公共団体としての使命を最低限果たすために必要な支出であり、当然に支出されるべきものであるので、財務会計行為に限定される住民監査請求の結果としては、その支出を差し止め、違法支出相当額の補填を求めることは適当でないと判断せざるを得ない」という見解を示し、私たちの請求を認めませんでした。
そのうえ、驚くべきことに「住基ネットを一時中断している行為を是正すれば、これらの費用を支出する必要はなくなるのであり、請求人らは、この先行行為を違法行為と断じているのであるから、地方自治法第75条第1項に規定する事務の執行に関する直接請求によりこの行為の差し止めを請求すべきであり、地方自治法第242条第1項に規定 する住民監査請求により支出の差し止めを請求するのは本末転倒である」と述べて、自らの責任を回避しようとしています。
つまり、私たちに向かって「住民監査請求ではなくて直接請求せよ」と、たらい回しにしているのです。
住民訴訟を提起する権利は、地方公共団体の構成員でもある住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種なのであって、この権利の前提となる住民監査請求により違法支出の差し止めを請求することを「本末転倒」と主張する高橋委員は、監査委員としての見識を疑われても仕方がないのではないでしょうか。
詳細については、
2009年11月29日付け本ブログをご覧下さい。
以上のように、高橋氏は、私たち住民からの監査請求を2度にわたって門前払いにしました。
その結果、私たち住民がそれを不服として提起した2件の住民訴訟では、私たち原告住民側がともに勝訴しています。
その後、2011年5月に、2件の勝訴判決は確定しました。
この時点で、高橋氏は、代表監査委員を辞任すべきだったと思います。
高橋氏が2件の住民監査請求を門前払いにしたにもかかわらず、その後における2件の住民訴訟において裁判所は、私たち住民側の請求をほぼ全面的に認容したわけですから、当然、高橋氏は、門前払いにした責任を取るべきでしょう。
総務省などの統計によれば、住民訴訟において原告住民側が勝訴する確率は10%前後で推移しています。
原告住民の勝訴率がかなり低いのは、自治体側が公金をふんだんに使って一流の弁護士を多数雇い、職員も動員できるのに対して、原告側は手弁当で訴訟を行わなければならず、立証責任も原告側に課されるという事情によります。
私たちの場合も、カネも組織もなかったため、まさに手弁当でした。
こうした低い確率を考慮すれば、私たちが住民訴訟で2連勝したということは、かなり希有なことに違いありません。
したがって、自らの任期中に自らが出した2件の監査結果をともに覆す住民訴訟判決が下されたことに対して、高橋監査委員は、自らの不運を嘆いているかもしれません。
でも、それは間違っています。
私たち原告住民が勝訴したのは、過去2代の国立市長が違法行為を犯すという前代未聞の不祥事があったからこそです。
高橋氏は、関口博前市長に監査委員就任を打診された際に、こうした違法行為について認識していたはずです。
また、こうした違法行為に係る住民監査請求が実施されることも、住民訴訟が提起されることも予見できたはずです。
そのうえで、高橋氏は監査委員就任を受諾したのです。
ゆえに、高橋氏は、私たちの住民監査請求を門前払いにした責任をとるべきなのです。
速やかに辞任すべきです。
昨年、著名な行政法学者である中央大学の阿部泰隆先生が、『自治研究』という学術雑誌に発表された「住民監査請求・住民訴訟制度改正の提案」と題する論文に興味深い内容が含まれています(『自治研究』第87巻第5号、9頁参照)。
阿部先生は、この論文のなかで、
「現行制度では、監査委員は、真面目に監査せず、むしろ、首長の防波堤、弾避けで給料をもらっている。いい加減な監査のツケが自分に戻ってくるしくみが必要である」と述べています。
現行の住民監査制度が機能不全に陥っているという指摘は、これまでに多くの研究者によってなされています。
これには、監査委員は首長に任命されるため、住民監査請求がなされた場合、首長側に不利になるような監査結果を出しにくいという事情が絡んでいます。
そこで、阿部先生は、次のような改正案を提示されています。
「監査委員の判断が杜撰で、裁判所でその判断が違法とされたときは、監査委員は、その年俸の三倍の範囲内で、当該地方公共団体にその損害を返納しなければならない。当該住民訴訟を提起した住民は、当該監査委員を被告として、返納を求める訴訟を提起することができる。」
こうした改正案が実現すれば、首長にベッタリ盲従するような監査結果は出なくなるでしょうね。
(続く)