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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『遭難、』  本谷有希子 著

2007-05-22 06:37:44 | 超読書日記
CDのジャケ買いならぬ、本の装丁買いってところで、表紙が気に入ったのと、「鶴屋南北賞受賞」という文字に惹かれて、ついつい買って、読んでみました。(この本は、戯曲です、念のため。)

設定は、学校の職員室に自殺未遂した生徒の母親が怒鳴り込んでくるところから始まり、最初の台詞が、

「ウンコしなさいよ、ここで」

なんだけど、そんなに酷い下ネタばかりでもないので、一応、ご安心を!

三人の女教師とひとりの男性教師、そして生徒の母親という人物構成で、わたしの印象としては、この濃密で猥雑な女性中心の展開が、昔の女子高的人間関係だなあって、思ってしまいましたね。

作者は、あとがきで「性格の悪い女の人が書きたいな!」と思って書いたと言っていますが、わたしの印象も、「悪」を描いているというより、仲間内で性格の悪い女を書いているという感じで、どす黒い悪を描いているという印象は受けなかった。(この点、安岡章太郎の「悪い仲間」という小説が、それほどの"悪"でもなく、たんなるちょっとした"不良"程度であるというのに似ている。)

このあたりは、歌舞伎のどす黒い悪を愛しているわたしには物足りなかったんだけど、鶴屋南北賞の選評では「『自分さがし』の風潮への痛烈な批判」という言い方もされている。

確かに、一読すれば、女性の過剰な自己愛が過剰な言葉の羅列によって描かれているんだけど、「『自分さがし』の風潮への痛烈な批判」というよりは、『自分さがし』という精神の渾沌を楽しんでいるという印象をわたしは持った。

ただ、以前野田秀樹の芝居について書いたように、いまの芝居って、何で言葉をたくさん使い、役者が汗をかいて喋りまくらないと、表現が出来ないんだろうかとは、正直思う。

・『野田版鼠小僧』について(以前書いた記事)

そろそろ、言葉を節約し、間とかアクションを通じて状況を語るような演劇に出会いたいなあなんて思っているのはわたしだけでしょうか?

近頃のわたしが、物言わぬ文楽の人形やバレエに惹かれるのは、こういうところにあるのかもしれませんけど・・・。

まあ、いずれにしても、過剰なクリエイター・本谷有希子には興味を持ったので、一度芝居を観てみたいと思います。舞台を見たら印象が変わるかもしれないので。

PS;ところで、共に劇作家としても有名だった三島由紀夫と安部公房の対談で、三島由紀夫が精神分析を皮肉り、「無意識というものは、おれには絶対にない」って言っていたのを思い出します。わたしも、「トラウマ」とか言い出すのは大嫌いだし、ましてや、守護霊なんていうのはね~。でも、多いんですよね、こういうこと言いたい女のひとって。

遭難、

講談社

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