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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『 国際シンポジウム溝口健二―没後50年「MIZOGUCHI2006」の記録 』

2007-06-02 23:59:59 | 超読書日記
映画監督・溝口健二について書かれた本はだいたい目を通しているわたしだけど、この本は率直さという意味で最良の部類かなって、わたしは思う。(アマゾンの書評ではボロクソに批判している人がいるけれど・・・。)で、わたしが評価している率直さって何かというと、蓮實氏の「田中絹代がなかなか受け入れられなかった」という発言!いや~、わたしもそうなんですよね、じつは!

わたしにとって、よさがわかるのに時間がかかった映画監督というと、ジャン・ルノワール、ロベルト・ロッセリーニ、溝口健二なんだけど、ある日突然、その素晴らしさに開眼して、今では個人的に特別な監督ということになっている。

ルノワールの場合は「チャールストン」と「どん底」、ロッセリーニは「アモーレ」と「ドイツ零年」で、溝口の場合は「残菊物語」と「噂の女」がきっかけになった。

で、田中絹代の話に戻ると、わたしが戦後の溝口作品にもうひとつのめりこめなかったのは、主演が田中絹代のものが多かったせい。「西鶴一代女」はいい映画だったけど、それでも田中絹代は、戦前の溝口作品の山田五十鈴や戦後の京マチ子、香川京子、若尾文子に比べて、全然綺麗じゃないし、色気がないし、なんだか抹香臭い感じすらしてしまう。

どうも、溝口と田中の関係を追及しようとした新藤兼人のドキュメンタリー映画が悪い作用をもたらしているような気がするのだけど、わたしの好きな溝口作品では、田中絹代は脇役なんですよね~。

あの蓮實氏のみならず、山根貞男氏までが田中絹代に複雑な感情を抱いていると知って、正直、「みんなそうだったのか」って思ってしまいましたね~。

そんなわけで、永年の疑問を解決させてくれたという意味で、面白い本でした。

因みに、ゲストの井口奈巳という女性監督が好きな溝口作品に「噂の女」をあげていたのが嬉しかったとのと、戦前の作品では「折鶴お千」がわたしは大好きなので、珍しくこの作品が取り上げられていたのにもちょっと感動しましたね。

それと、ビクトル・エリセのファンの方もどうぞご一読を!(ゲストで発言しているので!)

国際シンポジウム溝口健二―没後50年「MIZOGUCHI2006」の記録

朝日新聞社出版局

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溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954

角川エンタテインメント

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