切られお富!

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『おもちゃの三味線―白鸚・勘三郎・芥川比呂志』 関容子 著

2005-06-01 18:15:00 | 超読書日記
歌舞伎に関する著書をたくさん出されている関容子さん。彼女の著作のなかでも地味な一冊なのだけど、現在の幸四郎、吉右衛門の母親、つまり松本白鸚夫人で初代中村吉右衛門の娘・藤間正子さんについて書かれているのがこの本。

初代吉右衛門(播磨屋)の娘で、まさに深窓の令嬢だった正子さんが、七歳のときの初恋の相手で、十三歳年上の後の松本白鸚と結婚するまでの純愛話がなかなかに面白いのですが、なんといっても興味深いのは、初恋を成就させるための仲介役を果したのが播磨屋の楽屋の男衆だということ。男衆ですよ!なんだか、ちょっと時代がかった小説みたいでしょ。平安時代のお姫様の話や近松物あたりの世界というか…。こういう恋愛が成立した時代というのがあったんですね。語りや筆致も円地文子や有吉佐和子の小説を彷彿とさせるし、純粋に読み物としても面白い。

男に生まれていたら大変な役者になったとよくいわれる正子さん。幸四郎・吉右衛門兄弟にいわせると、「親父より母のダメ出しのほうが凄かった」という話。この人の血が松たか子にも流れているってことなんですかね?(もっとも、松たか子が男だったら、染五郎より凄かったとはいいませんが!)

関容子さんの本のなかでは地味な部類にはいる一冊でなかなか入手困難ですが、図書館で借りてでも読む価値ありですよ!!


おもちゃの三味線―白鸚・勘三郎・芥川比呂志

文芸春秋

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