切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

5.11は大津事件のあった日なんだよね。

2017-05-11 00:00:00 | プロフィール
来日したロシア皇太子を警護していた警官が襲ったという前代未聞の事件「大津事件」。「愛国」とか安易に言いたがる輩が増えた今だからこそ、振り返るべき事件だと思います。

ロシア皇太子を襲った津田三蔵個人の「愛国心」の問題もさることながら、死刑を司法にゴリ押ししようとした薩長閥政府とそれに抵抗した司法関係者、また司法の側の支持に回った当時のマスコミっていう構図は今考えると面白いですね。新長州閥(?)政権安倍内閣のマスコミ攻撃とか、森友問題にみられる官僚の政権迎合、いまのマスコミのだらしなさを考えると、昔の明治人はなかなか気骨がありました。「政権の方針に従うべき」と平気で言い放った元NHK会長なんて歴史を知らないただの馬鹿ですよ。でも、こういうのに限って、保守派もどきみたいな話になるのがまったく不思議なんだけど。

で、津田三蔵を取り押さえた車夫二人が時の英雄になり、ロシア革命まではロシアから年金が支給されたとか、日露戦争が始まった途端、この車夫が「国賊」と呼ばれるようになったっていう後日談は「愛国」とか言いたがる人たちのいい加減さを表わしていると思います。もっとも、日露戦争の戦死者があまりに多くて、不満のはけ口をこういう形で晴らす人たちが現れたというのは、ネット時代の今だったらもっと凄いことになったかもしれないなあ~とは思いますが。

また、獄死した津田三蔵には虐待や自殺の俗説もあったんですが、むしろ手厚く慎重に扱われていたという話は吉村昭の『ニコライ遭難』や『史実を歩く』で知りました。不平等条約撤廃を目標にしていた時の政府は、「劣悪な監獄」という欧米からの批判を払しょくすべく、むしろ、逮捕時に負った傷の治療も含め、津田の取り扱いを慎重にしていたという話は、なかなか興味深いところです。

なお、飛行機のない時代なので、皇太子ニコライが船で来日、最初長崎の地に降り、そこで龍の刺青を腕に彫ったとか、芸妓と一夜を共にしたらしい(?)なんて話もこぼれ話として面白い。もし、ロシア皇帝のご落胤とその末裔が日本にいたりすれば、話としては面白いなあ~なんて思いました。イングリッド・バーグマンの『追想』なんて映画もありましたしね。また、大津事件の時の包帯がのちのちDNA鑑定の資料に使われたなんて話もあります。

ということで、とりとめがないんで、この辺で。

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2 コメント

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リンク (fortheday)
2017-05-24 23:11:51
全然読めていないのですが、義経伝説のように西郷隆盛や桐野利秋が語られていた時代なんですね。
京都滞在の部分で、川島甚兵衛経営の西陣織物工場が出てきて、緞帳紹介で聞く川島織物なんだと。
色々なことが知ることができて楽しんで読んでいます。
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コメントありがとうございます。 (切られお富)
2017-05-25 00:13:07
forthedayさま

コメントありがとうございます。

西郷生存説のくだり、興味深いですよね。こういう前提があって、芥川のユーモア小説「西郷隆盛」が生まれたんだと思います。ちなみに芥川の「西郷隆盛」が発表された大正6年は、歌舞伎の「西郷と豚姫」の初演の年だったりします。

http://blog.goo.ne.jp/virginia-woolf/e/a0a67099516b282266d116d2d1f8359d (芥川の「西郷」に関する記事)

あと、川島織物の件、ご指摘をいただいて、「そういえばそうか」と思ってしまったわたしです。ご指摘ありがとうございました。
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