切られお富!

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ドストエフスキー再読。

2009-10-29 23:59:59 | 超読書日記
ここ二ヶ月くらい、お金がなかったので本読んでました。長いのがいいなあ~と思って、ドストエフスキーを再読。というわけで、ノート代わりの雑感をいくつか…。

まず、本の感想に入る前に、全体の感想。

ドスト氏の小説の最大の特徴は会話ですよね。それも、耳元で田中真紀子が喋ってるくらいの、猛烈な勢いの大演説。

この大演説に飲まれて、構成が破綻したりもしますが、その勢いにやられて一気に読んでしまう。

でも、構成力やバランスを重んじる読者にはあまり好まれないでしょうねえ~(たとえば、ナボコフみたいなひと。因みに、わたしも本当は「構成美」重視派だったりしますが…。)。

というわけで、個別の作品の感想、いってみましょう!

①『カラマーゾフの兄弟』(全5冊)

買ったっきり読んでいなかった亀井郁夫の新訳で読みました。

学生時代に3回くらい読んでるはずですが、見事に忘れていて、わたしってバカだなあ~と反省することしきり。

さて、結論からいうと、この本やっぱり面白かったなあ~。たぶん、ドスト氏はかなり構成を計算して書いたんじゃないのかな?構成力のない人ががんばって構成したという印象を持ちました。

でも、最後の少年たちのくだりは、取って付けたようで、わたしには拍子抜け。でも、本当はこの後も第二部が続くはずだったんだから、「つなぎ」の意味があったのかもしれませんね~。

因みに、カラマーゾフ・ファミリーでは、わたしは長男と父親が魅力的だと思いました(意外ですか?)。

次男の無神論者イワンはわたしには全然魅力的ではない。いくら頭がよくたって、もうちょっと行動的じゃないとね。

それと、アリョーシャには人間的な魅力が感じられません。逆に言うと、だから「危険人物」なのかも。じっさい、ドスト氏の構想では、彼は第二部でテロリストになる予定だったとか?

法廷シーンは、裁判員制度を採用している日本で再読されるべき箇所ですね。

それと、月並みだけど、長男の最後の大晩餐会(?)は最高の愛のシーンだと思います。

一生に一回は読む価値あり、か。

②『罪と罰』(全3冊)

これまた学生時代に何度か読んでいるんだけど、今度の再読で、だいぶ感想が変わったな~。

結論からいうと、随分芝居がかった小説だと思いました。それと、ラスコーリニコフとソーニャがわたしには全然面白くない!なんだか、全然納得がいかないし、人間じゃなくて人形みたいだと思いますね。(ヴァージニア・ウルフなら、「藁人形」と表現するんでしょうね~。)

この小説で好感が持てるのは、ラスコーリニコフの妹とお母さん、そして、ラスコーリニコフの友だちのラズミーヒン。

それと、ラスコーリニコフの刑務所生活のくだりが、「こんなに短かったっけ」と思ってしまった。

で、結局、この小説って、「なぜ人を殺してはいけないか」というテーマの小説ではないですよね。

最後まで、ラスコーリニコフは老婆を殺したことを後悔してない。後悔したように書いてない。

まあ、簡単に反省してたら、トルストイみたいな方向になっちゃうんだろうけどね。

なお、わたしが今回読んだのは江川卓訳です。

③『白痴』(全2冊)

じつは初めて読みました。というのも、黒澤明の映画『白痴』の印象があまりに悪かったからで、とても読む気がしなかった。

でも、読み終わって思うのは、「黒澤明は偉かった!」ってこと。よく、この小説を映画化しようなんて思ったなと。おまけに、舞台を日本に移し変えてまでですよ!?

で、小説自体の率直な感想ですが、とにかく、すさまじくバランスの壊れた作品だ、というのがわたしの感想。

だって、最初の一日、朝の列車シーンから最後の夜の乱痴気騒ぎまで、なんと400ページですよ!いくらなんでも、何か壊れてますよ、このバランスは!

もちろん、最後の乱痴気騒ぎの強烈なシーン!ナターシャが札束を暖炉に投げ入れる熱狂は、この作家にし書けないものですが、もう少し、洗練された構成にできなかったものか?でも、この野蛮さは、映画でいうと、相米慎二監督の『ションベン・ライダー』の超長廻しに通じるものがあるとはおもいますけど。

なお、この小説を「世界最高の恋愛小説」だと主張する人が何人かいますが、少なくともわたしはそう思いません。たぶん、そう主張する人は年配の男性だと思いますね。だって、この小説の女性像って全然納得いかないですからね~。というか、ドスト氏の描く女性って、わたしには全然説得力ないですけどね~。

なんか、最後の主要人物4人の激突場面のために延々と読まされた小説って印象だったな、わたしは!

④『悪霊』(全2冊)

問題作ですね。でも、正直言って、新潮文庫版の最後に出てくるスタヴローギンの告白を読んでそう思ったというところですが…。

わたしは、この小説、基本線は世代間闘争の話だと思いました。

ピュートル、ステパン親子が象徴的だけど、ステパン親父の最後なんか、滅茶苦茶ウザイんですよね~。

狂っていると思っていたスタヴローギンが全部正気から、退屈からやっていた犯罪…。

個人的には、正気だっていう点で、この小説に感心したな。

ね、イワン王子!

⑤『死の家の記録』

たぶん、今回あげた5冊で一番わたし好みの一冊ですね。

ヘンリー・ミラーの『北回帰線』はかなりこの小説を意識してるんじゃないのかな?

今ではありふれた題材になってしまっているけど、刑務所について書かれた本のなかで、いまもってベストといえる作品だと思います。

壮絶な風呂場のシーン。厳粛なクリスマス。受刑者の芝居…。

印象的なシーンがたくさん出てきます。

そして、最後の出獄…。

ただし、この本が好きだというわたしは、あまりよいドスト氏読者じゃないかもしれませんね~。



                 ★   ★   ★

以上、滅茶苦茶簡単ですが、感想でした!


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