切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

本日、国立劇場で前進座の「東海道四谷怪談」を観てきました。

2016-05-15 23:59:59 | 私の写メ日記(観劇版)
当日券で観たんですが、結構盛況でしたね。で、今回は「三角屋敷」が出色の出来でした。今まで観たなかでもベストかな。ということで、簡単に感想。

前進座の舞台を初めて観に行ったのは2005年の5月のことだから、考えてみればはや10年以上。
当時は、御大の中村梅之助もまだ元気だし、嵐圭史、瀬川菊之丞、中村梅雀、藤川矢之輔が働き盛りで、この後に若手の河原崎國太郎と嵐広也(現・嵐芳三郎)が続き、特に世話物の掛け合いなんか、歌舞伎座では味わえない妙味があったものでした。

で、瀬川菊之丞、中村梅雀の退座、梅之助の逝去、嵐圭史が今回出演しないとなると、前日の文楽同様、前進座も世代交代が進んでいるなあ~と改めて思ったんですが、今回は退座した瀬川菊之丞が久々の出演(客演)で、これが大当たりでした。

「三角屋敷」の緊張感は、ベテラン藤川矢之輔演じる直助権兵衛の土着っぽい愛嬌、凛とした瀬川菊之丞のたたずまい、若手・忠村臣弥の初々しいお袖の好演で、見応えのある舞台になりました。

藤川矢之輔の直助権兵衛は今回の舞台全幕で傑作でした、特に三角屋敷では、盥から幽霊の手が出てくるくだりの恐がりっぷりの飄逸さ、お袖を口説くときの決まりのカッコよさ、ようやく念願を遂げた直助が上半身裸で障子窓から顔を出すあたりの男くささ、最後の自死のきっぱりとした感じ、すべてがよかったですね。

で、受ける菊之丞の佐藤与茂七は、凛としていて固くなく、かといってキリっとするところはキリっとしていて品があり、沼津の十兵衛なんか観てみたい出来でした。

今回の四谷怪談全般でいうと、國太郎のお岩は、福助や18世勘三郎の騒々しくて、蚊帳を取られるくだりで客席から失笑が漏れるお岩とは対照的。しっとりとして落ち着いたお岩でした。なので、言い方を変えればかなり地味。かといって、怨念が凄まじいかというと、そこももうひとつ迫力不足か。ただ、近年の歌舞伎の四谷怪談の上演全体にいえるのは、お岩があまり怖くないということ。これは、仕掛けの段取りに追われがちだからでしょうか。その点でいえば、歌右衛門は確かに恐いお岩でしたが・・・。ただ、二役目の小仏小平は、コミカルに演じられ過ぎるきらいのあるこの役で、品のあるよい感じでした。

一方、芳三郎の伊右衛門は武士らしい無骨さはあるんですが、歌舞伎キャラきっての色悪・伊右衛門にしては色気が足りない印象。もっとも、ニンにないと言ってしまえばそれまでなんでしょうが・・・。

というようなわけで、とにかく「三角屋敷」には唸らされました。来月は四谷怪談の観劇が2本。併せて楽しみ。岩波文庫、読み返さなきゃ!
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