わたしは生来「文系アタマ」で、理科系の本は読まない代わりに歴史が好きですが、たまたま読んだ『対談 昭和史発掘』松本清張著(文春新書)に、番外編として収録されていた「『お鯉』事件」という文章を面白く読みました。というのも、この文章にでてくる「お鯉」さんという女性は、近代以降最高の美男役者といわれる十五代目市村羽左衛門の元妻で、後に総理大臣・桂太郎の愛妾になった女性だというのです。戦前までの政界、花柳界、歌舞伎界の様子がよくわかるルポルタージュ。興味のある方はいかがですか?
この新書は、文庫にもなった松本清張の『昭和史発掘』というシリーズの番外編で、対談と文庫にもれた2編で構成されています。
で、この2編が滅茶苦茶渋いのですが、両方とも面白い!
ひとつは戦前の政界に影響力を持った占い師(?)の話で、もう一編が「お鯉さん」の話。
今回は「お鯉さん」の話に絞りますが、美人で気風がよくて全盛だった芸者さんが美男役者・市村羽左衛門の奥さんになった経緯も面白いし、まだ少年だった六代目尾上菊五郎も彼女の膝で眠ったことがあるという・・・。
戦前・戦後くらいまでの政界は外交上の接待の場でも花柳界を利用し、政治家のなかには花柳界出身の奥さんを持ったひとも結構いるということですね~。
(因みに、今をときめく(?)麻生太郎の御爺さん吉田茂も、晩年には新橋芸者だった「こりんさん」という女性を内縁の妻に迎えている。なお、『仁義なき戦い』で知られる脚本家・笠原和夫は「こりんさん」に取材であったことがあるそうですが・・・。詳細は『昭和の劇』という本を参照あれ!)
さて、この「お鯉さん」。歌舞伎界のしきたりや羽左衛門の女性関係に嫌気がさして離婚、芸者に戻ったそうですが、人気衰えず、陸軍の大物・山県有朋の口利きで桂太郎の愛妾になります。
で、日露戦争終結の際の有名な日比谷焼討事件で、ときの総理大臣・桂太郎の身辺も狙われるわけですが、その標的に「お鯉さん」のお屋敷も狙われたという話はなかなか興味深い。というか、当時の庶民は政治家の「お妾さん」のこともよく知っていたということなんでしょうねぇ~。
その後の桂太郎の急死と事業失敗などの困窮。「お鯉さん」は平沼騏一郎(衆議院議員・平沼赳夫の義理の父親で総理大臣経験者)の策謀に載せられてとんでもない事件に連座することになるのですが・・・。
まあ、詳細はこの新書をお読みください。
また、文楽ファンにも御馴染みの一冊、岩波文庫にもなっている『素人浄瑠璃講釈』の著者・杉山茂丸(夢野久作の父親で右翼の親玉)も、「お鯉さん」の後援者のひとりだったそうですね~。
しかし、感心するのは松本清張の調査能力ですね~。実に細かく調べているし、オヤジ的な冷めた視線で事件を追っているところも凄い。
同じく「お鯉さん」について扱っている本に、森まゆみ著『明治快女伝―わたしはわたしよ 』という本もあるのですが、コチラは「快女」に重点がかかっていて、松本清張が取り上げた「事件」については取り上げていない。
このあたりに、「偶像化」を拒否する松本清張の作家姿勢があるように思います。
というわけで、ご興味のある方はどうぞ、面白いですよ。
因みに、「お鯉さん」の容姿を見たいという方はコチラをどうぞ。
きりっとした江戸っ子らしい女性だったんだろうなあ~。
この新書は、文庫にもなった松本清張の『昭和史発掘』というシリーズの番外編で、対談と文庫にもれた2編で構成されています。
で、この2編が滅茶苦茶渋いのですが、両方とも面白い!
ひとつは戦前の政界に影響力を持った占い師(?)の話で、もう一編が「お鯉さん」の話。
今回は「お鯉さん」の話に絞りますが、美人で気風がよくて全盛だった芸者さんが美男役者・市村羽左衛門の奥さんになった経緯も面白いし、まだ少年だった六代目尾上菊五郎も彼女の膝で眠ったことがあるという・・・。
戦前・戦後くらいまでの政界は外交上の接待の場でも花柳界を利用し、政治家のなかには花柳界出身の奥さんを持ったひとも結構いるということですね~。
(因みに、今をときめく(?)麻生太郎の御爺さん吉田茂も、晩年には新橋芸者だった「こりんさん」という女性を内縁の妻に迎えている。なお、『仁義なき戦い』で知られる脚本家・笠原和夫は「こりんさん」に取材であったことがあるそうですが・・・。詳細は『昭和の劇』という本を参照あれ!)
さて、この「お鯉さん」。歌舞伎界のしきたりや羽左衛門の女性関係に嫌気がさして離婚、芸者に戻ったそうですが、人気衰えず、陸軍の大物・山県有朋の口利きで桂太郎の愛妾になります。
で、日露戦争終結の際の有名な日比谷焼討事件で、ときの総理大臣・桂太郎の身辺も狙われるわけですが、その標的に「お鯉さん」のお屋敷も狙われたという話はなかなか興味深い。というか、当時の庶民は政治家の「お妾さん」のこともよく知っていたということなんでしょうねぇ~。
その後の桂太郎の急死と事業失敗などの困窮。「お鯉さん」は平沼騏一郎(衆議院議員・平沼赳夫の義理の父親で総理大臣経験者)の策謀に載せられてとんでもない事件に連座することになるのですが・・・。
まあ、詳細はこの新書をお読みください。
また、文楽ファンにも御馴染みの一冊、岩波文庫にもなっている『素人浄瑠璃講釈』の著者・杉山茂丸(夢野久作の父親で右翼の親玉)も、「お鯉さん」の後援者のひとりだったそうですね~。
しかし、感心するのは松本清張の調査能力ですね~。実に細かく調べているし、オヤジ的な冷めた視線で事件を追っているところも凄い。
同じく「お鯉さん」について扱っている本に、森まゆみ著『明治快女伝―わたしはわたしよ 』という本もあるのですが、コチラは「快女」に重点がかかっていて、松本清張が取り上げた「事件」については取り上げていない。
このあたりに、「偶像化」を拒否する松本清張の作家姿勢があるように思います。
というわけで、ご興味のある方はどうぞ、面白いですよ。
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昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫笠原 和夫,スガ 秀実,荒井 晴彦太田出版このアイテムの詳細を見る |
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