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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

<訃報> 中村雀右衛門

2012-04-02 19:30:00 | かぶき讃(トピックス)
~吉本隆明の訃報記事に続いて、<時間開き過ぎ>訃報記事、第二弾!~

しばらく舞台から遠ざかっていた人なので、一応覚悟はしていましたが・・・。ご冥福をお祈りいたします。

2000年代の大歌舞伎を支えた名優たち、中村富十郎、中村芝翫、そして中村雀右衛門。

それぞれに素晴らしい舞台が多く、個人的にも思い出はいろいろありますが、中村歌右衛門亡き後の東京の歌舞伎界は「芝翫・雀右衛門時代」だったと後世では語り継がれるのではないでしょうか。

さて、雀右衛門といえば、個人的には「将門」の滝夜叉姫、「籠釣瓶」の八橋、「助六」の揚巻、そして「金閣寺」の雪姫あたりかな~。

とにかく、艶っぽい顔立ち(メイク)と可愛らしい所作。歌右衛門が「運命の女」、梅幸が「肝っ玉母さん」的だとすると、雀右衛門はとにかく可愛いかった!しかも、その芸風が最晩年まで続いたわけで、これって驚異的なことだと思います。(近い事例だと、文楽の人形遣い吉田文五郎の「酒屋」のお園が最晩年まで可愛かったといいますが・・・。)

先日のNHK「にっぽんの芸能」の追悼番組で評論家の渡辺保さんが、歌右衛門、梅幸と雀右衛門の間にはハッキリとした一線があって、雀右衛門は「女形は綺麗でないといけない」という考えを貫き通した女形だったという意味のことを言っていたけど、わたしは思わず膝を打ちましたね。玉三郎なんか典型ですけど、確かに今の女形の流れの元に雀右衛門の在り方があったことは否定できない!

思い出の舞台でいうと、先述の歌舞伎座で観た「将門」の幽玄な雰囲気、国立劇場での「女暫」の舞台番中村富十郎との愉快な花道!そして、そして、何より忘れがたいのは今の坂田藤十郎が「中村鴈治郎」の名前で演じた最後の舞台、千穐楽の「河庄」の小春!

「河庄」を演じた月の雀右衛門は急病で休演していて、わたしが最初に舞台を観た日は翫雀が小春を代演してたんだけど、楽日近くになって雀右衛門が舞台復帰!わたしは千穐楽の日、仕事を早く切り上げて再び幕見で観ました!これが本当に素晴らしい舞台だった!

「鴈治郎」最後の「河庄」だからという役者陣の熱い熱気、小春って役は動きのある芝居をする役じゃないわけで、存在感だけで魅せる役だけど、まさに雀右衛門が全身を使って表わした小春の哀しみ!全体がひとつに溶け合うような素晴らしい舞台でした!

そんなわけで、個人的にも思い出の尽きない名優。歌右衛門に間に合わなかった世代のわたしにとっては最高の女形でした。

しかし、福助→歌右衛門、芝雀→雀右衛門の新歌舞伎座時代がそのうち来るんでしょうね~。二人には更なる精進を望みますが・・・。


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