スクリーンに恋をして&ライヴレポ

エレカシファンです。しばらく更新できず、すみません。

雪に願うこと

2006年06月10日 17時12分03秒 | Weblog
『雪に願うこと』

スタッフ/監督:根岸吉太郎/原作:鳴海章「輓場」(文藝春秋刊)

キャスト/伊勢谷友介/佐藤浩市/小泉今日子/吹石一恵/香川照之/小澤征悦/椎名桔平/津川雅彦/草笛光子/山崎努/

北海道ばんえい競馬~マルニシュウカン(ウンリュウ)/トウカイシンザン(シャドーキング)ほか

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第18回東京国際映画祭

グランプリ・監督賞・最優秀男優賞・観客賞と、映画祭史上初の4冠に輝いた。

帯広出身の作家、鳴海章さんが東京から帰郷した時に感じた
自らの体験を反映して書き上げた小説だそうです。


※『風花』の撮影が終わった相米慎二監督の手元に、一旦渡った原作「輓馬」。
その後、帰らぬ人となった相米監督の意志を継ぎ、
根岸吉太郎監督がメガホンをとった作品です。


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うん。とにかく…馬は、いい…。

馬は、何も語らない。

弁解もしない。

黙って…ひたすら…人の為に走る…そして働く…。

そう。あの優しい瞳で、すべてを見ている。

とにかく、馬はいい…。

by フロッピー

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「優駿」のようにサラブレットの美しさを描いた映画もあるが、
今回のどさんこ(道産子馬)「ばんば」は
とにかく、大きく強くたくましい。

この映画の魅力は、生きていく上で誰もが経験するような挫折感や、
社会の矛盾、家族の絆や、友情や、愛情だったりもするのだが…。

なんといっても、スクリーンに映し出される、
匂いたつような、馬体から立ち昇る熱気!
馬の息づかい、北海道の空気感、自然の持つ暖かさと冷酷さ。

この映像が、伝えたい事の全てを、物語っているのではないだろうか…。


生きる力…。

そんな目に見えない力を馬達や故郷の人々からもらって、
主人公は、再び生きる活力を見い出す。

今回、映画館内の観客は、年輩の方々が多くいらした。

上映中も「そうだったよねえ~」という相槌や、
「いやぁ~。わかるわかるわ~、あたしも年とったら、
ああなっちゃうかもしれないねえ~」
と、いきなり、さめざめと泣き出す方…。

館内は突然昭和の時代にタイムスリップしたかのように
観客みんなが、手放しで、泣いたり、笑ったり、自由に自分の感情を
解き放っていた…。

私も、泣いた…。

ばんば馬が、必死で1トンのソリをひいて坂を上る姿…。

ただ、…ひたむきに…その姿に泣けました…。

主人公の繊細さをフレッシュに演じ切った伊勢谷友介さん
(ハチミツとクローバー、嫌われ松子の一生などにも出演)も好演。

兄役の佐藤浩市さんの存在は、馬とならび、この映画の核。
一人の人間としての道標を骨太に見せつけた。

吹石一恵さんはその真直ぐな瞳で意思の強い女性騎手役を、透明感あふれる存在に仕上げた。

香川照之さんの演技の上手さは、ニクいほど。小澤征悦さんも好演でした。

椎名桔平さん、草笛光子さんの演技の解釈には若干ハテナ?マークが残りました…。
(すみません、えらそうに…^^;)

とにかく…静かな感動をもたらすこの映画、機会がありましたら、ぜひご覧になって下さい!