在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

イタリア映画の紹介 Cuori Puri ピュア・ハート di Roberto di Paolis

2017-09-29 09:47:35 | 何故か突然イタリア映画
Cuori Puri ピュア・ハート
監督 ロベルト・デ・パオリス

ピュアな二つのハートが結びついたときに、少女が必死でついた嘘




今年のイタリアのゴールデングローブの上映会が始まった。
先週からで、毎週1本、来年の5月半ばまで続く。

先週は、仕事の都合で途中からしか見れなかった。
今日も、超ハードスケジュールの仕事の疲れで時間に間に合わず、着いた時には始まっていたが、幸い最初のわずか1分程度が欠けただけだった。

114分の長編。
若干長すぎる感はあり、カットできるところがいくつかあるように思うが(上映後のインタヴューでも一つの意見として出た)退屈はしない。

宗教が題材になっている。
同じく宗教を題材にした、昨年の「La ragazza del mondo あっちの世界の少女」(勝手に付けたタイトルです〜)を思い出した。

父親のいない母子家庭に育ったアニェーゼ、ローマの郊外、一角の空き地にジプシーバラック小屋を建て住んでいるような地域に暮らしている。
母親は熱心なカトリック教徒で、18歳になった娘に携帯も持たせないし、子供を自分の監視下に置きたいタイプで、かなり過保護。アニェーゼも、熱心に教会学校に通い、18歳になったとはいえ、母親と一緒に寝たり、母親のあやつり人形のようなところがある。

そのアニェーゼに、惹かれる青年が現れた。
でも、普通の恋の仕方を知らない。
婚前交渉はご法度、どうやって歯止めをかけたらいいかがわからない。

小さなショッピングセンターの駐車場、すぐ隣にジプシーの住むバラック小屋があり、彼らが駐車場に入り込まないように監視をしている。
根は真面目で優しいが、友人に誘われ恐喝でちょっとした小金を稼ぐこともある。
両親は家賃滞納で家を追い出されるし、親子共々、貧しさからなかなか抜け出せない。

青年ステファノもアニェーゼに惹かれ、二人は付き合い出す。
が、アニェーゼは、夜は出られない、と言い、昼間だけの健全な付き合い。
キスをするのがやっと。とたもかわいい。
初めて男性と付き合うアニェーゼ、心の中の葛藤に、何度か付き合いをやめようとも決心する。

しかし、惹かれ合う二人がついに関係を持つことになった。

無断外泊、そして婚前交渉。

ステファノがまだ寝ている明け方に彼の家を出て、とぼとぼと歩いているところ、女性警官の乗っているパトカーが通りかかった。
どうかしたの?大丈夫?と声をかける女性警官。

監督曰く、4年前、厳しいカトリックの家庭に育ち、婚前交渉を持った少女が、ジプシーに犯されたとの嘘の証言をして、怒ったイタリア人がジプシーと衝突した、という事件があったのを題材とした、とのこと。

抑圧され、鳥かごの中で育った少女が必死でついた嘘。

しかし、抑圧されているのは少女だけではなく、母親もである。
おそらく結婚せず妊娠し、つまり、キリスト教の教えに背いたその罪の償いを、娘に押し付け、ボランティア活動をすることによりごまかし、精神的に歪んでいるのが見て取れる。

最後は、どちらかというとハッピーエンド風に終わるのにほっとし、全体の重たさを抑えていた。



それにして、年頃の青年、本当なら襲いかかりたいところ(笑)だろうに、必死で堪えている感じがとてもカワイイ。
ピュア・ハートCuori Puriのタイトルが複数なのに納得する。
(日本語では単数と複数の違いがわからず、こういうときに残念)

上映後のインタヴューには監督と主役の二人が出席。
アニェーゼ役の少女は本物の方がうんとかわいいし、ステファノ役の少年もかっこいい。役ではかなり大人びて見えたが。(同意見多数、笑)
二人揃って、演技がめちゃくちゃ上手い。
これから良い役者に成長するだろう。

デ・パオリス監督の処女作。みんなにこれからも期待。


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