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お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

ベストフレンドはワンちゃん!

2011-05-30 | my Anthology

アメリカで最もセレブな犬は、Boと名づけられたオバマ大統領ファミリーの愛犬(First Dog)。Portuguese Water Dogというちょっと珍しい種類で、故エドワード・ケネディ上院議員からのプレゼントです。

『犬は人間の最良の友(A dog is a man's best friend)』と言われています。アメリカ人もご他聞にもれず、犬が大好き! そして絵本にもじつにいろいろな犬が登場します。

赤ちゃんから幼児まで、幅広い人気を保っている子犬が「スポット(Spot)」です。エリック・ヒル作/画の、ベストセラーにしてロングセラー。オリジナルの『Where's Spot?』は、いたずら子犬のスポットがあちこち探検に出かけてはいなくなるのを、お母さんが「スポット?スポットはどこ?」と根気よく探し回って、「あ、いた!いた!」と捜し出してくれる‥‥というお話。子どもたちは「いないいないばぁ」や「かくれんぼ」などで「(おとなに)見つけてもらう」というカタルシスが大好きですよね? そんな子どもたちに大人気の絵本です。このスポットシリーズの絵本はいわゆる『飛び出す絵本』で、どのページでも、子どもが指で挿絵の箪笥の扉とかバスケットの蓋とかを開いてはスポットを探しだすという趣向。何度読んであげても、毎回「いたぁ!」と叫んで得意そうにお母さんの顔を見ます。

同様にベストセラーでロングセラーのシリーズ絵本の主人公が「クリフォード(Clifford)」です。お家ほど大きいクリフォードと、飼い主の女の子が主人公の物語。ちょっと奇抜な設定なのに、なぜか時代を超えて愛読されている人気シリーズです。オリジナルは1963年に刊行された『Clifford, the Big Red Dog』 以後、50冊以上の絵本が出版されているほか、キャラクターを使った学習教材やグッズも多数発売されて、人気を博しています。2000年にはテレビ番組にもなりました。

クリフォードと同じように、大きな犬と小さな女の子が主人公になった絵本に、日本の奈良美智さん作/画の『The Lonesome Puppy』があります。でも陽気なクリフォードとは違い、奈良さんの子犬は「あまりに体が大きくて誰の目にも入らなくて孤独だった‥‥」という設定で、なんとなく日本的でもあり、また常にひとり孤高をいくアーティストの想いが子犬に重なっている気がする絵本でもあります。

このブログでは紹介する機会がありませんでしたが、古典的な絵本としては『Hurry the Dirty Dog』もおなじみです。また、その名もかわいい子犬を主人公にした『Biscuit (My First I Can Read)』のビスケットシリーズも人気があります。

冒頭にも書きましたが、古来から犬は人間の最良の友。だから人間との暮らしにすっかり溶け込んでいる犬は、逆に人間とは一線を画して暮らしている野生動物たち、例えばクマやオオカミ、アライグマやリス、あるいはウサギやネズミなどが主人公になるお話にはあまり登場しません。

そのかわり、人の暮らしが描かれる物語には、犬自身が主人公にならない時でも、挿絵の中に脇役あるいは家族の一員としてしばしば登場します。とくに子どもたちの遊んでいる場面には、ほとんど常に「犬がいる」と言っても過言ではないほど。そんな「子どもと犬」の様子が、それも”表紙に描かれて”いる例だけをとりあげてみても枚挙にいとまがありません。例えば『A Tree is Nice』では、水をやる女の子の後ろに木のを見上げている犬が描かれていますし、『Now It's Fall』には、紅葉した木の葉を背景に子どもたちと子犬が描かれています。そう!犬がいると断然面白くなるのが外遊び! 落ち葉を散らかして遊ぶ時など、なんたって犬が一緒じゃなきゃあ! ガンピーさんの船遊び『Mr. Gumby's Outing』にも、もちろん犬は仲間に加わっていますし、また、仕事で忙しいお母さんの子育てを手伝ってくれるのも犬です。仕事帰りのハイヒールのまま赤ちゃんを抱っこして、お姉ちゃんの手を引いて歩くお母さんは、しっかり犬のリーシュも引いています。

愛犬のコーギ犬を主人公に絵本を描いているのがタ―シャ・チューダー(Tasha Tuder)。タ―シャの大好きなコーギ犬ばかりが暮らしている村、コーギビルが物語の舞台です。オリジナルの『Corgiville Fair』には、中扉に、実在のモデルとなったコーギ犬が実名入りのスケッチで紹介されています。それぞれに表情が違い、体つきも違う様子がしっかり描き分けられていて、その個性の強さに感心させられます。

というわけですから、『犬 Dog』は赤ちゃんが最初に出会う動物で、ペットで、そして最初におぼえる単語のひとつです。アルファベットを綴るときにも「ドッグのD(D as Dog)」などと言いますから、最初に綴りをおぼえる単語でもあります。『My Big Animal Book

そんなふうに家族同様に暮らす犬たちとの別れはとても悲しいものです。それでも、残念ながら犬は人間ほど長生きしませんので、必ずいつか別れがやってきます。『Dog's Heaven』は、そんな永年の友であった犬を見送った人に、シンシア・ライアントが心をこめて贈ってくれる絵本です。お話だけでなく絵も彼女が描いています。

そんなペットとの『交流と別れ』を、子どもの視点から丹念に描いた絵本に『Always Love You』があります。「毎日毎日、ギュッと抱きしめて、毎日毎日、『ずっとずっと大好きだよ』と言ってあげたから、ボクの犬がいなくなってさみしいけど、でも後悔はしていない‥‥」という男の子の語りかけには、犬とどうつき合うか(犬だけでなく、生きとし生けるもの、やがては別れるべきもの同士がどう付き合うか‥‥)が深く示唆されています。



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ベッドタイムのお気に入り

2011-05-23 | my Anthology

家族旅行の宿泊サービスとして、『お子さんにベッドタイムの読み聞かせをします』というFour Seasons Hotel (Chicago)のコマーシャル

『読み聞かせ』と言えばベッドタイム。お風呂に入って、パジャマになって、歯も磨いたし、さぁ今日は何を読もうかな? ひとりで歩けるようになるや、娘の日課には、ベッドに入る前に本棚に寄って、小さな両手にいっぱい「お気に入り」の絵本を抱えてベッドに入ることが加わりました。「もう一回(読んで)」と言いたくて、まだ回らない舌で一生懸命「もっかい!」「もっかい!」とせがんでいたのが昨日のことのようです。ベッドタイムの絵本には、だんだん眠くなって、時々とろっと目をつむりながら聴いても気持ちのよい絵本を選びたいですね。それには、シンプルで短いテキストで、でも響きのよい繰り返しのフレーズがあったり、ライム(韻)が効いていたりする、「耳に心地よい」絵本が最適です。

そう思って見回すと、なんといっても永遠のベストセラーは『Goodnight Moon』でしょう。英語がわからない頃から、娘もなぜかこの絵本が好きでした。”Goodnight Fox, Goodnight Sox”というようなフレーズは、英語の韻がわからないと響きが楽しめないだろうと思い、私はこの絵本の日本語訳は読んでやったことがありませんでした。もっとも英語がわかっても、文章はほとんど「意味」をなさず、さらに読みようによっては、かなりシュールで幻想的なものです。でも、響きは実にきれいで耳に心地よく、幻想的なイラストと相まったミステリアスなテキストには、眠りを誘う効果があります。実際には、この絵本。イラストにも、テキストにも、さまざまな仕掛けがあって、読み解き、絵解きにはかなりの教養が必要な絵本。昼間の明るい光の下で読むときには、ページごとに変化していくイラストを丹念に見比べたり、テキストの引用の原典を考えたり……と、別の楽しさがあります。

夜の暗さと静けさが気持ちに染み入る絵本は『Owl Babies』です。フクロウのきょうだい3羽が主人公。ふと目覚めると巣の外は真っ暗な夜。それなのに、巣の中にお母さんがいません。さて……。3羽のきょうだいがお留守番の不安をまぎらそうと交わす会話が実に可愛いのですが、とりわけ末っ子のビリーが何を言われても、ただただ「おかあさ~ん "I want mommy"」と呼んでばかりいるいじらしさが子どもたちの共感をさそいます。だんだんつのってくるフクロウ兄弟の不安に、聴き手の子どもも共鳴して心配になってきたところへ、「あ、お母さんがかえってきた!」。この一言で、読み手も聴き手もほっと一安心。「おかあさ~ん」と呼びつつけたビリーが「おかあさんだいすき!"I love mommy"」とうれしそうに言って終わる結末に、幼い読者は自分自身の「おかあさん、だいすき!」を重ねて、心底ほっとして、安心して眠りにつきます。

くりかえし「読んで、読んで」とせがまれた絵本があります。ひとつが『Caps for Sale』です。頭の上にシルクハットを高々と積み上げて「帽子はいらんかねぇ~(Caps for sale!)」と村々を売り歩く帽子屋さんのお話です。娘の絵本にはカセットテープがついていて、耳にやさしいバリトンの朗読を、繰り返しテープがすりきれるくらい聞きました。物語の最後に「帽子はいらんかねぇ~ ”Caps for sale…”」と呼ぶ男の人の声が、ゆっくりと遠ざかっていくのを聴いていると、娘ばかりでなく私まで眠気を誘われたものです。
何度もくりかえして読んだもう一冊は『Tiki Tiki Tembo』。これもテープとセットになった絵本で、やはりテープがすり切れるくらい聴いた絵本です。中国の故事を翻案したと思わせるお話は、ちょうど日本の落語『じゅげむ』のようなストーリー。繰り返し読み上げられる”長い長い男の子の名前”を、耳だけで聞いていると、そのリズムの心地よさに思わず眠りを誘われます。

寝かされるのが嫌いという子もたくさんいますね。だってゲームの途中だもん、まだアイスクリーム食べてないし、お父さんはまだテレビ見てるじゃない……。そんな子どもたちの名残惜しい心境を代弁してくれる絵本が『Bedtime for Francis』。「さぁ、もう寝る時間ですよ」と言われて、あれこれ抵抗を試みるフランシス、部屋で暗がりに目をこらしてはあれこれ空想するフランシス、きっと子どもなら誰しも思いあたることばかりです。

子どもって案外『暗示』にかかりやすいものです。「ねむいねぇ、ねむいねぇ」と言いながら、親も一緒に眠そうにしていると、本当につられて寝てしまいます。そんな暗示効果が狙えそうな絵本の筆頭は、まつたにみよこさんの『もう、ねんね(英語版 “Sleepy Time")』。登場する動物たちの、なんとまぁ眠たそうなこと。見ているだけでつられてあくびが出そうです。「ねんね、ねんね、もうねんね」と繰り返されるフレーズも眠気をさそいます。
もう一冊は「しいっ!しずかに!」と言っては、皆で声をひそめる仕草を繰り返す絵本『The Quiet Book』。いろいろな場面での「しいっ!しずかに!」が出てきますが、もちろん最後はベッドタイム。「おふとんの中でこっそり懐中電灯なんかつけてないで、もう寝なさい!」「しいっ!しずかに!」いかがでしょうか? たまにはお布団の中で懐中電灯をつけてこの絵本を読み、最後の「しいっ!しずかに!」で、灯りを消して寝ることにする、と言う趣向は?

「おやすみなさい」の代わりに「I love you!」と繰り返し言ってあげるのも、ベッドタイムならではの語りかけです。振り返れば一日中叱ってばかりいた……日などには、ベッドタイムには思い切りぎゅっと抱きしめて「大好き!」と言ってあげてください。たとえばトッド・パールのタイトルもずばり『I Love You Book』、あるいは『I like it when...』などは、読むだけで自然に何度も「大好き!」を言える絵本です。

さて、最後の一冊はわたし自身のための絵本。眠れないとき、何を思い浮かべますか? 私は木が大好きなので、いつも木のことを考えます。ごつごつした幹に耳をつけると昔話だってくれそうな年とった樫の木、庭のレモンやオレンジの木、お隣の満開のハナミズキのことや大きなクリスマスツリーのようなもみの木のこと。でも、なにより四季折々いつでもきれいな日本の雑木林がなつかしいなぁ……などなど。『A Tree is Nice』は、そんな私のベッドタイムのお気に入りです。



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わたしとあなた

2011-05-16 | my Anthology

子どもたちがシェアするお菓子の代表はカップケーキ。それだけに作り手はあれこれデザインに工夫を凝らします。写真は、このところウェブで大人気を博しているiPhone Cupcake。食べるのがもったいな~い。 Souce: www.flickr.com

日本では「おとなしい」は時には”褒め言葉”ですし、小さな子どもが「引っ込み思案」や「はにかみや」だと、たいていは”微笑ましい”と受け止められることが多いようです。だから日本人の私たちには、"shy"(シャイ:恥ずかしがり、はにかみや、引っ込み思案等の意味)という単語はあまりネガティブに聞こえません。でもアメリカでの"shy"は、決して褒め言葉ではありません。もしも幼稚園や学校の先生にそう言われたら、それは親として「すこし子どもさんの社会性を心配しなければいけないですよ」という意味でもあるからです。

「アメリカの子育てで『最優先』されることは?」と聞かれたら、誰もが迷うことなく「『社会性』を育てること(Socialization)」と答えます。実際、娘が新入生の最初の父兄会で、担任の先生が開口一番に言われたのは、「最も大切なのことは『社会性』。学校の成績がよくても、これが身につかないと社会に出て成功できません」

さまざまな社会環境で、人間関係を形成し、それを円滑に維持できるパーソナリティやスキルが『社会性』です。つまり「わたしとあなた」との関わりに配慮できること。小さな子どもの世界で言えば、集団の中でもの怖じせずにいられること、友達と積極的にかかわって仲良く遊べること、そのためのコミュニケーションスキルや協調性が身についていること。もっと具体的に言えば、初対面の人に対してもハキハキ受け答えできること、集団のなかでは和を乱さないだけでなく、時にリーダーシップも発揮できること。その上で、ユニークな個性が発揮できれば言うことなし‥‥です。

そうは言っても、言うは易し。これはアメリカ生まれのアメリカ人の子どもにさえ、なかなか難しい課題です。だからでしょうか、アメリカには『社会性』について考えさせる絵本がたくさんあります。

例えば、具体的な子どもの日常生活の場面で『協調性』を教えるとき、最も頻繁に使われるキーワードは"Share"と"Take Turns"でしょう。

"Share"は日本語に直訳すれば”分かちあい”ですが、英語では実にさまざまな場面で用いられます。小さな子の暮らしなら、お菓子を分けあう時はもちろん、おもちゃをみんなで一緒に使う時も、ひとつのベッドで一緒にお昼寝するときもShareです。また、もっと抽象的に「自分の経験や思い出、嬉しかったことや悲しかったことなどを話して聞かせる」こともShareといいます。

でも「Shareすること」は、時にはちょっと「我慢すること」とセットになります。友達とお菓子を食べるのは楽しいけれど、分けたら自分の分は少なくなってしまう……そんな子どもの複雑な心境を、大好きなクッキーの分けあいを題材にユーモラスに描いているのが『The Doorbell Rang』です。分けあう人がだんだん増えて、徐々に取り分が減っていくのを見ながらドキドキしている子どもたち。読み手も一緒にハッと息を飲むほど緊張して、それから「ああ、よかった!」とホッとする最後のオチまで、親子そろって楽しめる絵本です。

分けあいの具体的な実践は、"Take Turns"(順番を守って交代する)です。ひとつだけのおもちゃの貸し借りも、ひとつしかない遊具を使うときも、先生に「Why don't you share?(仲良く交代でね)」と言われたら、やるべきことは”順番に使う(take turns)”こと。でも実際には、子どもは「一番!」が大好きです。あとは順番でもいいけど、交代してもいいけど、でも、やっぱり一番はボク!一番はワタシ!……というわけで、休み時間にはみんながブランコ目指して走ります。そんな”一番のとりっこ”を、これまたユーモラスに諌める絵本が『Me First!』です。ご用心!いつも一番が、一番良いとはかぎりませんよ、というお話。

楽しい時間を共有(Share)するために、遠路はるばる訪ねてきた親戚との思い出を、読者と分かちあう(Share)絵本が『The Relatives Came』です。おうちに入りきれないほどの数の親戚の訪問で、寝室からバスルームから台所まで人でいっぱい。何もかも一緒に分けあって使いました。ひとつのベッドにも寝られるだけの人が寝て、あふれた人でソファーから床までいっぱい。誰かのおなかの上に別の誰かの足が乗ったりしても気にしない。みんなの喜びと興奮と熱気がじかに伝わってくるような絵本です。

元気な間はつい忘れがちですが、実は、生きとし生けるものにとり、一緒に時間を過ごし、思い出を共有し、喜びや悲しみを分けあうことは、”ともに生きている間”にしかできないことです。相手がいなくなったら、もう大好きな気持ちを伝えることもできないし、肩を抱いたり、手を取ったり、見つめ合ったりすることもできません。究極のSharingは『共生=”ともに生きる”』ということなのです。そんな課題を、子どもにもわかりやすく描いている絵本が『I Always Love You』。主人公の、大きな愛犬に手を回して座っている姿が描かれた表紙だけで、メッセージが伝わってくる絵本です。

お友達にも先生にも言いにくいことってありますよね。アイラの内緒ごとは「まだ一人でお泊まりしたことがない」こと。でも学校に上がったら、きっと友達のうちへの”お泊まり(Sleep Over)”に誘われるだろうなぁ……。誘ってほしいけど……お泊まりには行きたいんだけど、でも本当にひとりでお泊まりできるかどうか心配……。そんな逡巡を、実に巧みに読者と分かちあっている絵本が『Ira Sleeps Over』です。実際、子どもの独立心と社会性を養うためにと、小さな時から積極的に友達同士の家に”お泊まり”をさせます。子どもにとって、始めてのお泊まりは嬉しさと不安が交錯する冒険ですから、アイラに共感する子どもはたくさんいるはずです。もっとも、昨今評判の中国式の厳しい子育てを綴った本には、こうしたお泊まりはアメリカ式子育ての悪弊として退けられ、勉強の邪魔だから「お泊まりはさせない」と明記されて話題になりましたが。(ブログ記事:この頃の子育て論争

消極的な”我慢”や"分けっこ"や"順番待ち"ではなく、もっと積極的に「誰かの役にたつ」ことを考えるのも大事な社会性です。ウサギさんが椅子をつくって「どうぞ、おかけください」と出しておいたら、通りかかるみんなが、その椅子を介していろいろなものをshareすることになった『どうぞのいす(The Giving Chair)』と、お母さんのお手伝いがしたい一心で、ちょっとドキドキしながら『はじめてのおつかい(Miki's First Errand)』に行くミキちゃんのお話は、どちらも日本の作品の英語訳です。ぜひ日本語と英語の併読でお楽しみください。

友達の輪に溶けこもうとする時、集団の中で見つけた憧れの人気者が気になって、どこに行くにもついて回ったり、なんでも同じにしないと気がすまなかったり……。悪気はないのだけれど、憧れるあまりに”まねっこ(Copycat)” になってしまう。なんていうことは、小さい頃にはよくあること『Rudy the Copycat』。でも、それは子どもの目にもやっぱりちょっと不自然なものです。そう!やっぱり、わたしはワタシ、ぼくはボク。人とは違うわたしならではの個性に目覚めさせてくれるのも、やはり集団の力です。そのとき大事なことは、人とは違う自分にコンプレックスを感じるのではなくて、逆に、そんな自分を好きになれること。これも言うは易しでなかなか難しいけれど、ぽちゃぽちゃかわいい子ブタの女の子のように、毎日『ワタシだいすき!(I Like Me!)』と言ってほしいものですね。



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アーティストの想い

2011-05-09 | my Anthology

おなじみのキャラクターが迎える「The Eric Carle Museum of Picture Book Art」は、エリック・カール自身が長年住み慣れたマサチューセッツ州にあります。

「ことばのない絵本」でもご紹介したように、私たちが読む『絵本』では、”読み聞かせ”と言うと、なぜか『お話』が先に意識され、『絵』はお話に添えられているものという印象があります。

アーティストとは、他の人のお話にイラストを添えるときも、もちろん素晴らしい絵を描くものですけれども、時にアーティスト自身が自らイメージのわき上がるままに絵を描き、そうして描いた絵がそのままストーリーになっていくようなお話で作られた絵本にも、個性あふれる独特の魅力があります。

Harold and Purple Crayon』は、そんなアーティストの創作過程そのままといった印象の絵本。なかなか寝つけない夜……。小さな男の子ハロルドは、ベッドを抜け出して散歩に出かけました。散歩のお供には、月が出ていなくちゃ……。道はこっちに伸びて行くよ……。ハロルドの想いのまま、絵本は流れるような一筆がきで描かれるストーリーで展開していきます。アーティストが画用紙を前に、ひとリごとを言いながら描いた絵が、そのまま絵本になったかのよう。この絵本は、ベストセラーでロングセラーの絵本の古典『Carrrot Seed』のイラストを描いたクロケット・ジョンソンの作品です。

想像の翼を広げることは、自己を解き放つこと。自分の部屋だけに引きこもっていた男の子ジェレミーが、想像の赴くままに描いた怪獣が、勝手に育ち、やがて彼の小さな世界の殻を破ってくれる……なんてお話『Jeremy Draw a Monster』は、アーティスト、ピーター・マッカーティ自身のメッセージです。わがままな怪獣に手を焼いたあげく、怪獣を外に連れ出した時に、ジェレミーは彼自身が小さな部屋から飛び出したことに気がついたのでした。

「ねぇお話して!」の子どもたちの声に、物語を聞かせるだけでなく、即興でアートまで添えることができるのがアーティストの真骨頂です。世界的なベストセラーとなっている『Little Blue and Little Yellow』の絵本は、その典型。この絵本の元になったのは、電車の中で退屈して騒ぐ孫たちを静かにさせようと、アーティストにして絵本作家のレオ・レオー二が、手持ちの紙をちぎって動かしながら、お話を作って聞かせたのが最初なのだとか。最初、この絵本は絵の具を紙にぽたぽたっとたらしながら、アーティストがひとりごちたお話ではないか……と思っていたのですけれども、それは私の勝手な想像でした。

田舎で暮らし、野生の動物たちや身近にいるペットを主人公に、次々と空想の翼を大きく広げたのはベアトリクス・ポッターです。最初の作品はあの『Peter Rabbit』。続々と生み出された作品は、どれもベストセラーでロングセラーとなりました。時代は異なりますが、自ら選んでバージニアの森に電気も水道も拒んで暮らしたのターシャ・チューダーも、森の動物たちをモデルにたくさんの絵を描きました。彼女の絵本『Corgiville Fair』は、かわいがっていた7匹のコルギー犬がモデル。絵本の中扉には、思わず「同じ犬なのにこんなに個性があるの?」と言いたくなるような7匹の肖像(?)までが描かれて紹介されています。

自由に絵が描けたらいいな、絵で物語まで表現できたらいいな……とは誰もが思うこと。思いつつも、多くの人は「自分には絵は描けない」と信じ込んでいるのだそうです。小さな子どもたちに「絵を描くのは好き?」と尋ねると、ほとんどの子どもは「好き!」と即答します。ところが、小学校に上がるくらいからだんだん返事の声が小さくなっていき、大人になる頃には大部分が「好き」どころか「描けない」と思うようになる……というのが統計的な事実。よく考えたら、おかしな話です。私の友人のアーティストは、「自分の名前が書ける人は誰でも絵が描けますよ」と言い、また実際に、自分には絵は描けないと固く信じていた大人たちをちゃんと”画家”に育てています。参照:Learn to Draw Right

そう考えると、”名前”どころか「・(点)が描ければ十分!」と言って、「絵は描けない」と言い張っていた生徒を伸びやかなアーティストに育てた先生のお話『The Dot』は、まさに絵本作家にしてアーティストのピーター・レイノルズから読者へのメッセージと言うべきでしょう。絵本では、先生からの示唆と励ましによって、女の子は『・(点)』だけを徹底的に描いて徐々にアートに仕上げていきますが、同じ『・(点)』にここまで徹底的にこだわれば、これこそ、まさにアート!と言うべきが、デイビッド・カーターの『One Red Dot』です。絵本として制作されていますが、カテゴリーをとっくにはみだした超絵本とでも言うべき、ポップアート。絵本として出版されているのが不思議なくらいです。

ひとはなぜ絵を描くのか? アーティストはどうやって生まれるのか? アーティスト自身を紹介した絵本もたくさん出版されています。ウォーホールやリヒテンシュタインなどアメリカで活躍したアーティストはもとより、メキシコのエキセントリックなまでに情熱的な画家フリーダをモデルに、絵をもって彼女の人生を語らせ絵本『Frida』も出版されています。

一方、絵本作家を”アーティスト"として位置づけ、また絵本から子どもたちを”アート”へと誘う仕事を始めたのは、自身もベストセラー絵本作家のエリック・カールです。彼が開いた絵本美術館には、子どもたちが自由にいろいろなものを制作できるスタジオもあります。またエリックが編集した『Artist to Artist』と題された本は、絵本作家をアーティストとして改めて紹介するための本です。日本の安野光雅さんも紹介されています。




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母の日に読みたい絵本

2011-05-02 | my Anthology


アメリカでも日本でも『5月の第2日曜日』が母の日(Mother's Day)。今年は5月8日ですね。母の日は世界各国で祝われていますが、実は、国により、起源/由来また日付に違いがあるそうで(参照:wikipedia「母の日の由来」)スペインやポルトガルでは5月最初の日曜ですが、スウェーデンでは5月最後の日曜日。同じ北欧でもノルウェーでは2月の第2日曜日なのだそうです。

母の日の朝、アメリカの家庭では子どもたちがブランチを作ってお母さんのベッドまで運んできます。お母さんはパジャマのまま、ベッドで新聞や本を読んだり、テレビを見たりしながら待っています。こぼさないかしら?などと、内心ではひやひや……。でも、この日ばかりは、絶対に起きていかない!のが鉄則。

大きくなった娘や息子は、お母さんをブランチに誘い出します。評判のお店は早くから予約でいっぱいになり、レストランやカフェは、ミモザ(オレンジジュースで割ったシャンペン)を添えた"母の日スペシャル"で大歓迎します。

消費大国アメリカでは言わずもがな、母の日は『消費の増加する日』のひとつです。花とともに、カードが飛ぶように売れるので、『”母の日”とは”ホールマーク(Hallmark:大手カード会社)の日”』などと揶揄されたこともあるとか。時代は遷っても、カードを贈る伝統は生きていますが、最近ではeメールで送る”電子カード”で写真も声も音楽も画像まで贈れるようになりました。かつては『長距離電話回線が込み合う日』のひとつと言われたものですが、今日ではSkypeなのでしょうか?

さて、今週は母の日に読みたい絵本の特集です。

お留守番の心細さを覚えていますか?「すぐ帰ってくるからね」と言われたのですが、待っていると、その”すぐ”の長いこと! 永遠のように感じられました。そんなお留守番している子どもの心境……暗く静まり返った夜の森の木のほらにある巣の中で、お母さんの帰りを待つフクロウきょうだいを、けなげで可愛い会話だけで描き出しているのが『Owl Babies』です。イラストもお話もすばらしい作品です。このブログで、読者の反響が最も大きかった絵本のひとつでもあります。

お留守番の寂しさ、心細さは、保育園のこどもたちも同じです。お母さんはお仕事だとわかっていても、友達だってたくさんいるんだけれども、でも、時々ちょっと泣きたくなったりもします。そうして誰かが泣き出すと、最初は慰めていた他の子もだんだん悲しくなって一緒になって泣き出してしまう……なんてこともよくあります。そうして最後は皆に伝染して……みんな揃って、あ~ん!あん! あんまり泣いたら、涙の海で、子どもたちはお魚になっちゃった……という、ちょっとシュールな絵本は、日本の作家せなけいこさんの作品で、英訳『Wah, Wah』もあります。でも、大丈夫! 仕事帰りのスーツ姿のお母さんが、しっかり網で救い出して助けてくれます!

お留守番は時にはちょっと寂しいけれど、子どもたちにとって”はたらくお母さん”は、素敵でまぶしい憧れの存在でもあります。そう、ハイヒールはいたママはかっこいい!のです。『Mommy's High Heel Shoes』は、表紙の絵を見るたびに子育て時代が思い起こされて、微笑ましく思う気持ちに、ちょっと苦笑が混じります。赤ちゃんを抱っこしながらお姉ちゃんの手を引き、仕事鞄やハンドバッグと子どもの荷物をまとめてもって、おまけに犬のリーシュまでしっかり引いているお母さんに、思わず「がんばってね!」って声をかけたくなります。

「アメリカ中のお母さんが泣いた」と言われている絵本が『Love You Forever』です。ひとりっ子のお母さんは、彼がまだ赤ちゃんの時にはもちろん、いたずらっ子で手を焼かせたときにも、うるさくて汚し屋のティーンエイジャー時代にも、おとなの男の人になってからも、毎日毎晩、眠っている彼を膝に抱きあげ「ずっとずっと大好きよ(I love you forever)」と囁きかけて育てました。でもある日、年をとったお母さんはもう彼のところに行けなくなってしまった自分に気づいて、その子に電話します。「もう行かれないの。だから今度はあなたが訪ねてきて……」 いまでは自分もお父さんになっている男の子は、お母さんを訪ねます。そうして、いつのまにか小さくなってしまったお母さんを、これまでお母さんが彼にしてくれたように膝に抱き上げて「ずっとずっと大好きだよ(I love you forever)」と囁くのでした。なんの衒いもない、素朴なまでにストレートな、お母さんの愛情に満ち満ちた絵本です。

でも、お母さんとは因果な商売で、いつもいつも「あなたが大好きよ」とやさしく囁いてばかりではいられないのが辛いところです。子どもを可愛いと思うほど、育てる責任も重く感じるもの。その結果、現実は「愛してるわ」どころか、むしろ一日中、子どもを追い回しては「だめ!」「いけません!」「やめなさい!」と叫んでいた……なんてことも。絵本『No, David!』は、そんなお母さんと子どもの毎日を、子どもの視線から描いて大人気。それもそのはず。実はこの絵本は、自身がいたずらっ子だった作家のデイビッドが、"David"と"No"の二つの単語しか綴れない幼い時代に描いた一連の絵が元になった作品。それらの絵を、デイビッドが成長してアーティストになるまで大切にとっておいたお母さんとのコラボレーションの作品でもあります。

やさしいお母さんと毎日楽しく過ごす子どもたちが、おうちを離れて幼稚園や学校に行くことに抵抗があるのは、むしろ自然なことかもしれません。それまでなんでも「そうね、そうね」と受け入れてくれたおかあさんも、学校のことになると妥協せず、甘ったれな子どもたちを驚かせます。学校に行きたくない子を、叱りはしないけれども、やさしいままに毅然として送り出す……『The Kissing Hand』のアライグマお母さんはななかのロールモデルです。それから、そう『Splat, the Cat』のお母さんも、なかなかお見事ですね。

さて最後は、お母さんと子どものいかにも楽しいかかわり---”かくれんぼ”を描いて大人気の絵本です。いたずら子犬のスポットが、あちこちに隠れてはいなくなってしまうのを「あら、スポットはどこかしら?」と言って、お母さんが探してくれるというお話です『Where's Spot?』。子どもは「あれ、どこへ行っちゃったかな?」と探してもらうのが大好きです。「ここかな?」「あっちかな?」「あれ、いないなぁ」などと、わざと時間をかけて探しまわる振りをしてやると、もう嬉しくて嬉しくてくすくす笑いを我慢できないくらい。そんな情景は、幼いときの一時期。かくれんぼが大好きな頃の、親子の楽しい思い出です。子育て真っ最中のお母さんはきっと、「探して、探して」と言われることに、時々うんざりしているととも思いますが、でも、そう言われるうちに大いに楽しんでおいてください。子どもはすぐに大きくなって、かくれんぼの鬼のことなどすっかり忘れて、どこかに行ってしまいますから。

子どもを持つと、母の日は『祝われる日』になってしまいます。でも、そんなお母さんにも、やっぱりお母さんがいます。子育てで忙しいお母さんたち、あなた自身もお母さんの小さな娘だった頃を思い出して、今年の母の日には、お母さんに絵本を贈ってみるのはいかがですか?



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