Wah Wah
子どもって時々泣きますよね。だから、子どもが大勢いる保育園などでは、しょっちゅう誰かが泣いています。けんかしたり、転んだり、外目にもはっきりした理由があることもありますが、でも、なんだか訳わからないまま泣いちゃう子もいます。ストレスが昂じたり、疲れたり、眠かったり、また単純におなかがすいただけでも泣くことがありますから、わかっちゃいるけど‥‥困りもの。
子どもが泣くと、親も周囲もなんとか泣きやませようとします。もちろん泣かなきゃならないような事態がおきていてかわいそう‥‥と慰め、宥めることもありますが、それだけではなく、大人には多分に「周囲に迷惑だから‥‥」というような遠慮ばかりが先立つこともしばしば。泣く子はいい子じゃないという、なんとなくのイメージもあります。だから、よく泣く子の親は心中複雑です。
でも考えてみると、大声を出して泣くって、それなりにカタルシスがあって、ストレス解消!になったりしませんか。大人でも、あまりにストレスがたまったり疲れすぎたりしたときは、訳もなく泣きたいような気分になることがあるもの。こういう気分は運動すればたいてい解消しますが、でも運動なんかしてまぎらわすのではなく、いっそ思いっきり声を出してワアワア泣いたら気持ちいいだろうなと思うこと、ありますよね?
せなけいこさんの絵本「あーん、あん(英語版 ”Wah Wah")」は、実際にほんとに徹底的に泣いちゃう子どもたちのお話。ほとんど全編みんなが大泣きに泣いてる絵本です。
保育園で「あーん、あん」と泣きだしちゃったら、だんだんもっと泣けてきて、とまらなくなって‥‥もっともっと「あーん、あん」と泣いちゃった僕。そしたら、僕の友達にも伝染して、ひとり、またひとり、またひとり‥‥、皆つられて「あーん、あん」と泣きだしてしまいます。遂にはみんなそろって「あーん、あん」。
みんなで「あーん、あん」と泣き続けたら、あらあら、涙がたまって海になって、あ、みんな、お魚になっちゃった‥‥。
この、ちょっとシュールな展開!うまい!さすが!です。人肌のぬくもりのあるあったかい涙の海を泳ぐお魚たちが象徴しているのは、大泣きの挙句の、一種恍惚とした、一方どこかさっぱりしたカタルシスの気分。その感じが、すごくよく出ているんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?
そうして、そう、やっぱり最後にはお母さんが登場して、網でお魚になった子どもをすくいあげてくれます。
保育園や幼稚園に通う子どもたちは、たいていこのお話が好きです。うちの子も大好きでした。自分が毎朝の登園時にぐずって泣いていた当時、家では何度もこの絵本を「読んで、読んで」とせがんでいましたが、読んでもらうときにはけろっとしているのが、いつも、なんとも可笑しかったものです。
お母さんから離れて一人で行動できるようになったかな‥‥という時期のお子さんにピッたりの絵本です。