お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

併読のパワー:どうぞのいす

2010-07-20 | about 英語の絵本

Giving Chair

今日の絵本は、香山美子さんの「どうぞのいす英語版は"Giving Chair")」です。

うさぎさんが素朴でかわいい木の椅子を創りました。うさぎさんは、みんなに座ってもらいたくて、みんなが通る道のわきの木の下に椅子を置いて、「どうぞ」と書いた看板をおいておきました。

いきなり余談ですが、「どうぞ」って、なぜか日本の赤ちゃんが最初に憶える言葉の一つです。娘も娘の友達の赤ちゃんも、回らない舌で「どうじょ、どうじょ」と言っては、何かを持ってきてくれたり、口に入れてくれたりしました。今でも、あの「どうじょ」の声やしぐさ、小さな手の感触と一緒に、耳にも目にも肌にもくっきり鮮やかに残っています。

でも当時は、「どこで憶えたんだろう?」「『食べて』でもなく、『あげる』でもなく、どうして『どうぞ』なのかしら?」「『どうぞ』って日常そんなによく使う言葉だったかしら?」と不思議に思っていました。

さて、うさぎさんの「どうぞの椅子」にもどりましょう。椅子の脇を最初に通りかかったのはロバさんです。「『どうぞ』とはありがたい‥‥」ロバさんは、背中に乗せて運んでいた荷物(ドングリ)を椅子の上に置いて、ちょっと休憩‥‥のつもりが、気持ちよく、ぐっすりお昼寝をしてしまいます。

そうなんです。意外でしょ? 椅子に座るのかな?と思ったら、ロバさんは椅子の上に荷物を置いただけ。自分はその脇でお昼寝です。「どうぞ」と書かれた椅子の上にはドングリが‥‥そう、これが大事な仕掛けで、実は、お話はここから次々と展開していきます。

ロバさんがお昼寝している間に、次々といろいろな動物が通りかかります。そして椅子の上の食べ物を見ると、「『どうぞ』とはありがたい」と喜び、「ではえんりょなく、いただきましょう」とつぶやいて、すっかり食べてしまいます。

そうです。食べちゃうんです! 大変、食べちゃった‥‥子どもは本気で心配します。

さて、誰もが、食べ終わっておなかがいっぱいになると、からっぽになった椅子を見て考えます。からっぽのままにしておいたら、やっぱり「あとのかたに、おきのどく」。そうつぶやくと、代わりに自分が持っている品物を椅子にのせて、立ち去っていきます。

初めて読んであげると、椅子に書かれた「どうぞ」が誤解されて、ロバさんのドングリが食べられてしまう場面で、子ども達はハラハラどきどき‥‥いかにも心配そうにします。でもだんだん読み進むうち、意外な展開に驚き、同時に喜びます。

また何度も繰り返して読み慣れると、「『どうぞ』とはありがたい」でいたずらっぽくニンマリし、「では、えんりょなく、いただきましょう」で嬉しそうに一緒になって笑い、「あとのかたに、おきのどく」のくだりは一緒に暗唱して言うようになったり‥‥。意外な展開を何度も繰り返して楽しむこと請け合いです。決して子ども言葉でない、ちょっとクラシックで印象的な響きのダイアログは、きっと日常会話の中で親子で楽しめるフレーズになります。

さて、最後の落ちがまた愉快です。お昼寝から目覚めて驚くロバ。子どもたちは何の読んでも愉快そうに喜びます。「どんぐりって、くりのあかちゃんだったかしら?」読み手のおとなが心底驚いたように読むと‥‥、時には子どもたちが「ちがうよぉ!」と教えてくれます。

意外な展開につりこまれて、最後までハラハラどきどき読み通せる絵本です。全然お説教くさくなく、教訓的でもなく‥‥でも、全然お説教くさくないのに『感謝』『おかえし』『お互いさま』など、子どもには説明のむずかしいコンセプトを、子どもにも実にわかりやすく伝えることに成功している稀有な絵本。素晴らしいです。




コメント
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