うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

未来視たち  大原まり子  うな

2007年04月30日 | 読書感想
SF短編集。
作者の描く未来史の中から、超能力集団シノハラ・コンツェルンに関する作品だけを収録。

大シノハラの七番目のクローン、シンク少年の憂鬱と覚醒を描く「ストラップレス・ウォーカーズの跳躍」
少女と共に逃走したシンクの生活を描く「シンパシー」
時間虫によって数十年前に落とされた少女を描く「炎の少女たち」
シノハラコンツェルンとコザイファミリーの確執と共闘「グレーテルの焼死」
コンツェルンに追われる心優しき能力者を描いた「アルザスの天使猫」

実に壮大で面白い設定の数々だ。
大超能力者と十三人のクローンによって形成される財閥。
大災害によって破産し消滅した日本。
二つの種族の闘争に巻き込まれる宇宙。
デビュー作からずっと続く彼女の未来史の壮大さにはいつも圧倒される。
と、同時に、まったく意味がわからなかったり、オチがついてないまま終わったり、非常に消化不良な気分にさせられて、せっかくこれだけ魅力的なのにもったいない、といつも思う。

特に今作は、シンク少年が現実と出会い、逃走し、捕まり、力に目覚め、と続いているので、このまま彼の一代記としてうまくまとまるのかと思ったのに、どうにも意味不明なままに終わってしまって、なんか未完成な作品を読まさられたような気がしてならず悔しい。

強力すぎる能力のため、生まれてから一度も人と目を合わせたことがなく、いつも持っているおもちゃの電話を通してして他人の言葉を聞くことができない少女とか、そういう細かい設定は実に美しく面白いのに、なんでこう、ストーリーは意味がわからないんだろう。
最後の方とかでさー、なんかもうちょっと「あー、オチたオチた」と思わせるような仕掛けがあれば、文中の八割が意味不明でもぼくのようなバカは騙されてしまうものなのですから、もっと綺麗にぼくを騙して欲しい。

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