うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

しずるさんと底なし密室たち  上遠野浩平  うな

2006年06月28日 | 読書感想
ラノベミステリー短編集。シリーズ第二弾
一話目。
ある日河原で発見されたミイラ死体。死者が生きているのが最後に確認されたのは、なんとわずか六時間前。彼はどうしてミイラになったのか?
二話目。
ブームとなっているカードゲーム。その起源には、一家惨殺という無惨な事件が絡んでいた。
三話目。
ある商店街でもよおされた、ありふれた仮装イベント。そこで、一人の男が死体で発見された。ところが、死の直前、男は同時刻に複数の場所で目撃されていたというのだ。
四話目。
ある日、空から落ちてきたのは、凍りついた一つの死体。
どうやって、かれは凍ったまま空を飛んでいたのか? なぜ落ちてきたのだろうか?

このシリーズの基本設定、すなわち不治の病におかされ、病院から一歩も出ることの出来ない、探偵役の美少女。彼女の見舞いにたびたびやって来る助手役の少女、という設定は、面白いと思う。アームチェアディティクティブをする必然がある。また、あくまで少女たちの戯れであり、事件を解いてどうしようというわけでもないのもいい。
が、肝心の謎解きや推理に関しては、うーん、物足りないというか、せっかくの謎に比して、暴かれる真相というのが、実にどうでもいい。
いや、ミステリーというのは、不可解事件という幻想が、論理によって現実に突き落とされる、失墜の物語であるとは思う。ゆえに、事件が不可解であればあるほど幻想の高みは増し、論理が冷徹であればあるほど、失墜は激しく、その落差こそがカタルシスになっているのだと思う。
だから、この作者の描く不思議な事件は、なかなかいいとは思う。思うのだが、どうしても物足りない、せっかくの事件がもったいないと思うのは、なにも短編だから、というばかりではあるまい。
まあ、この作者自身、風呂敷を広げるのは得意だし好きだが、それを畳むのは性じゃないんだろう。

それはそれとして、この本では、二話目がよかった。
架空のカードゲームを創造し、それをプレイしながら由来を探っていく、その形式がなかなか良かった。事件を解いたことが、なんの意味もなさないオチもいい。
そして三話目四話目は、無理が過ぎるんじゃないかと思った。

まあ、本格ミステリーではなく、あくまでラノベミステリーであるという分をわきまえた範囲では、悪い作品じゃない。百合分はどうでもいい感じだが、好きな人は好きなんだから、あって困るものでもあるまい。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿